試合レポート

日本文理vs村上桜ヶ丘

2013.07.26

逆転に次ぐ逆転!シーソーゲームを制した日本文理、2年ぶりの栄冠!

 24日に予定されていた試合は雨のため中止。1日空けたこの日は、朝方降っていた雨が昼前に上がり、予定通り13時に試合開始となった。

 先攻の日本文理は、これまでトップバッターに起用し続けてきたスーパールーキー・星(1年)を外し、竹石(2年)を起用するなど、村上桜ヶ丘先発の椎野(3年)対策とも言える打順を組む。初回椎野は、その竹石を遊ゴロに仕留めると、続く2番・渡辺龍(2年)、3番・飯塚(2年)から連続三振を奪う上々の立ち上がりを見せる。その裏、村上桜ヶ丘は日本文理先発のエース・飯塚を攻め、二死満塁のチャンスを作る。
 ここで6番・波多野(3年)が四球を選び、1点を先制する。続く二回にも3番・長谷川の右前打で1点を追加。リードを2点に広げ、飯塚はこの回でマウンドを降りる。三回にも代わった大谷内(3年)を攻め、二死一、二塁のチャンスを作る。9番・秋山が左前打を放つが、二塁ランナーが本塁憤死。三回までに7安打を放つもなかなか大量得点につなげられない。
 三回まで日本文理打線をパーフェクトに抑えていた椎野だったが、四回、二回り目の日本文理打線が襲いかかる。先頭打者の竹石が左前打で出塁するとすかさずスチール。続く渡辺龍のバントが内野安打になり無死一、三塁。その後一死二、三塁となり、迎える打者は4番・小黒(3年)。小黒は左中間へ運び、二者が生還。さらに中継が乱れる間に小黒も還り、一気に逆転する。

 逆転を許した村上桜ヶ丘だったが、五回裏に椎野の犠飛で同点、六回裏には1番・須戸(3年)の二塁打を足がかりに、2番・倉島(3年)の犠飛で逆転に成功する。四回以降、立ち直ったかのように見えた椎野を、七回表、再び日本文理打線が襲う。二死二塁から、9番・池田(2年)がライト線を破る三塁打を放ち同点、続く竹石の二ゴロエラーで逆転。さらに渡辺龍の内野安打と途中から一塁の守備に付いている飯塚のライト線へのタイムリーで2点を追加。7対4とリードを広げる。ここで、村上桜ヶ丘は椎野を諦め、右横手の星野(3年)をマウンドへ送り、後続を断つ。反撃したい村上桜ヶ丘は八回裏、4番・野澤の投ゴロの間に1点を返し、2点差で最終回を迎える。ランナーを出しながらも粘り強いピッチングを見せた日本文理2番手の大谷内は、最終回もエラーによる出塁を許しただけで、最後の打者代打・斎藤秀(3年)を遊ゴロに打ち取り、試合終了。7対5で日本文理が2年ぶりに優勝を果たした。


エキサイティングプレイヤー

長谷川智也(3年・投手兼一塁手)、星野大和(3年・投手)

 個人的な話になるが、「村上桜ヶ丘」という高校の野球を初めて見たのは2011年夏の準々決勝だった。対戦相手はこの日と同じ日本文理。4番に高橋(現巨人)、投手陣は当時2年の波多野(現東北福祉大)、田村(現アルビレックスBC)を擁する日本文理が圧倒的有利という下馬評。お恥ずかしいことながら、私も下調べをあまりせずに観戦した。ところが、である。村上桜ヶ丘は、日本文理先発・田村の乱調につけ込み3点を先制。その裏、5点を取られ逆転されるが、二回に4点を奪い再逆転に成功。中盤は膠着するも、その後も点を奪い合い、最終的に日本文理が9対10でサヨナラ勝利を収めた。(2011年07月24日

 この試合のスコアブックの片隅に雑感として次のようなメモが残してあった。
「星野→1年生ながら試合を作る。内角をつく強気なピッチング。課題はスタミナ」
「長谷川→1年生とは思えないバッティング。速球に振り負けない。右に左、広角に打ち分けられる。投手はこれから」
「チーム→1年生に力を持った選手多数。2年後楽しみ」
 この試合、長谷川は先発するも1/3回で5失点KOされるも5番打者として3安打5打点の活躍。その長谷川をリリーフした星野は、中盤日本文理の強力打線をテンポのいい投球で抑えこみ4 2/3回を3失点の力投を見せた。今大会で4番を打った野澤も9番打者としてスタメン出場していたが、残念ながら記憶に残らず…(4打数0安打)。

 前段が長くなってしまったがその彼らが、順調に成長。しかもプロ注目のエースの椎野をはじめ、核弾頭・須戸、勝負強い河内ら松田監督の厳しい練習に耐え、レギュラーポジションを獲得した同期とともにようやく掴んだ決勝の舞台だった。

 長谷川はこの日も打撃でチームを牽引。タイムリーを含む3安打を右左広角に打ち分けた。今大会で見せたその打棒は、県内高校野球監督や、解説者をもうならせるほど。投手としてはこの日登板がなかったものの、今大会は13イニングを投げ自責点0とエース・椎野を影で支えた。

 一方複雑な感情でマウンドに上ったのは星野だろう。逆転を許し、失意のままマウンドを降りた椎野の後を継いでマウンドへ。右横手から120キロ台中盤の速球、スライダー、シュートなどをテンポよく投げ込み後続を断つと、八回、九回も“らしく”抑えた。大差のコールドの場面から、ビハインドのシーン、今日のようにピンチの場面でもマウンドに上り、飄々(ひょうひょう)と投げられる便利屋。だがそれは、監督からの信頼されているとうこと。だからこそ星野自身も今日の試合はエース・椎野が完投することを望んでいたのではないかと思う。こと日本文理戦に関して、自分が登板する展開は、チームにとってあまり良い状況ではない可能性が高いと…。

 残念ながら、2年前と同じく日本文理に敗れた。だが、舞台は準々決勝から決勝へのステップアップした。これは間違いなく彼らの成長の証。今後メンバーがどのような道を歩むのか、でもどんな道を選んでもここでの経験は必ず生きてくる。個人的には、上のレベルで野球を続けてほしいと望んでいる。

(文:編集部)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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