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尚志館、センバツへ! 大隅から初の快挙

2013.01.25

尚志館、センバツへ! 大隅から初の快挙 | 高校野球ドットコム

センバツ出場を決めガッツポーズの尚志館ナイン

尚志館、センバツへ! 大隅から初の快挙

第85回記念選抜高校野球大会の出場校を決める選考委員会で鹿児島からは尚志館が選出され、大隅半島から初の甲子園出場校が誕生した。

尚志館は昨秋の鹿児島県大会準優勝九州大会でベスト4入りを果たし、選出が有力視されていた。選考を待つ志布志市の同校では、午後3時45分過ぎに校長室に連絡が入り、本田康伸校長が「ありがとうございます」を何度も繰り返し、出場の「吉報」を受け取った。体育館に集合したナインに報告が入ると、ナインは帽子を飛ばして歓声を挙げ、駆けつけた在校生や職員、保護者らとともに喜びを分かち合った。鮎川隆憲監督は「ずっと悲願だった『大隅から甲子園』が実現して良かった」と喜びを語った。

新原晃太主将(2年)は「大隅、鹿児島、そして九州の代表である自覚を持って、まず1勝を目指す」と意気込んでいた。


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帽子を飛ばして歓声を挙げる尚志館ナイン

鹿児島高校野球史に「風穴」開けた快挙

尚志館のセンバツ初出場が果たす意味は、とてつもなく大きい。1925年に鹿児島一中(現鶴丸)が初めての甲子園の代表校として出場して以来88年間、鹿児島の代表校は鹿児島実樟南鹿児島商の鹿児島市内の「御三家」を中心とする薩摩半島の学校が独占していた。その歴史に「風穴を開けた」(鮎川隆憲監督)歴史的な一日のドキュメントをつづる。

緊迫の校長室
午後3時過ぎ、志布志市にある同校の校長室には約30人の報道陣らが詰め掛けていた。学校創立42年目で「これほどの報道陣がうちの学校に来たことはない」と本田康伸校長。「吉報」を待つ校長室は緊迫感が漂っていた。
21世紀枠や北海道、東北の代表校が決まっていく中、なかなか吉報が届かず本田校長は「不整脈を起こしそうでした」と苦笑する。午後3時45分過ぎ、待望の出場校決定の連絡が入ると、安どの表情を浮かべながら何度も「ありがとうございました」を繰り返して、出場決定の喜びをかみしめていた。出場36校中、最後に決まった代表校だった。本田校長は「うちの部員は地元・志布志だけでなく、大隅地区4市5町全てから来ている。『オール大隅』で応援していただけたらありがたい」と話していた。

歓喜の体育館
野球部員26人はその頃、体育館で待機していた。まだ学校に残っていた一般生や職員、保護者らと、吉報を待っていた。
「緊張して黙っているのもいたし、しゃべって緊張を和らげようとしている部員もいた」とエース吉國拓哉(2年)。落ち着かない雰囲気を引き締めようと全員で、試合前にルーティーンでやる肩のストレッチを始めた頃、「第一報」がOBからもたらされた。
「皆さんの努力が大きな花を咲かせました」
本田校長から正式に出場決定が告げられると、部員らは帽子を飛ばして歓喜を爆発させ、部員、在校生、教職員、保護者、入り乱れて喜びを分かち合った。
初めて大隅から甲子園が実現し「最高の気分です」と新原晃太主将。「選ばれるかどうか不安な部分も大きかった」と吉國。昨秋の九州大会でセンバツ当確ラインの4強入りしながら、準決勝で済々黌(熊本)にコールド負けで出場を不安視する声もあっただけに、喜びもひとしおだった。同時に「甲子園で勝つためにはまだまだ力不足。今度は大竹君に勝てるように、あと1カ月あまり、しっかり練習したい」と九州大会で屈辱を味わったライバルの名前を挙げて気持ちを引き締めた。
 鮎川監督は、何度も胴上げされながら「悲願」が「実現」した喜びをかみしめた。04年に鹿屋中央、06年に鹿屋が、夏の決勝に進んであと一歩で果たせなかった「大隅から甲子園」の夢。「その一番手はうちが!」の意気込みで取り組んできたことがかなった。「夢は一つかなった。今度は勝つことを目指して頑張りたい」と力を込めた。

「勇気が沸いた」
周囲の反響も紹介しよう。
87年から99年までチームを率いた新雄二さんは「64年間の人生の中でこういうことが本当にあるんだと感動しました。今まであと一歩で果たせなかったことを後輩たちが果たしてくれました」と感無量の様子だった。
県高野連の佃省三理事長は「歴史の重みを感じた」と言う。これまで幾多の大隅の球児たちが挑んで果たせなかったこれまでの日々に思いを馳せ「このことが他の鹿児島の球児たちにも相乗効果をもたらしてくれる」と期待した。
「プラスしかもたらさないですよ」と鹿屋の山内昭人監督は「ライバル」の甲子園出場を喜んだ。日頃から同じ地域で切磋琢磨しており、鹿屋の部員にとっても小中学時代のチームメートの快挙が刺激にならないはずはない。「大隅地区が、南薩地区みたいに盛り上がってくれば鹿児島が面白くなる」。垂水の石塚真也監督は、昨秋の県大会は部員不足で南大隅串良商と合同チームを組んで県大会に出場した。尚志館の快進撃の一方で、「過疎・少子化」の厳しい現実にさらされているが「同じ大隅から出たことがうれしい。信じて頑張っていれば可能性はあると教わった」と希望を見出していた。

「勇気が沸いた」
奄美の前園昌一郎監督は言う。前任の出水工時代から何度も練習試合をしたことがあり尚志館は「身近なチーム」だった。「地理的なハンディーを持っている点では奄美も同じ。ハンディーがあっても、頑張ればできる」ことが勇気を与えてくれた。

古仁屋の前和樹監督は前任が岩川で、同じ大隅地区だった。ネットで速報を確認すると思わず「やった!」と声を挙げた。「今の尚志館も3年生が少ない中で頑張ってきた。今のうちのチームも実情は同じ。うちの部員たちも今度は『大島から甲子園』の気持ちでその気になってやってもらえたら」と期待していた。

【高校野球ドットコム編集部】
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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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