弥富vs刈谷工
弥富・大久保
弥富184センチ右腕大久保が成長証明
弥富のエース大久保和哉(2年)が3失点で完投し、ベスト16進出を決めた。
184センチ・77キロの体格から重いボールを投げ込み、相手打線に本来のバッティングをさせなかった。2年生ながら夏も背番号1をつけていた弥富の大久保が、貫禄十分のピッチングを披露。特に3回まではヒットを許さず、自陣に流れを呼び込んだ。殊勲の右腕は「初回から球は走っていたが、後半は力が入って球が浮いてしまった」と振り返った。ストレートの最速は133キロだが球が重く、ドーンとくる。ピッチングにはどこか老成感も漂っている。
これまでの苦い経験が、大型エースの血肉となっているようだ。大久保は春の県大会では9回までリードしながら土壇場で失点して勝ち越しを許し、夏の大会では初回にいきなり4失点した。だがこの日は、球威が落ちてきた試合後半にも粘り、リードを守り切った。
田中宏毅監督は「夏よりは良くなりました。試合前にトイレで会ったとき『立ち上がりに注意しろよ』と言ったんですが、今日はよく気をつけてくれた。去年から経験を積んでいる分、踏ん張れるようになったのかもしれません」と、大久保の投球に及第点を与えた。
打線は5回表を除いて毎回ランナーを出し、送りバントは8つを数えた。バント成功率の高さも練習の証だろう。初回に敵失で先制すると、3回表には大久保が自らのバットでタイムリーを放った。6回表には相手のバッテリーエラーと1番前岨勝巳(1年)のタイムリー二塁打で加点した。6番金城賢人(1年)や7番浅野辰彰(2年)ら下位打線も当たっていた。
次戦は強豪・愛工大名電との対戦だ。田中監督は「堂上直倫君(当時2年・現中日)が名電さんでプレーしていた数年前に、秋の県大会で一度勝たせていただいた記憶がありますが、今回はさすがに厳しいですよ。いい勉強になれば」と話すが、真意ではないだろう。中学時代は軟式野球部で県総合体育大会3位に輝くなど、トーナメントを勝ち抜いた経験もある大久保は「バックを信じて打たせて取ります」と力を込めた。
刈谷工は5回に8番丸山遼(2年)が反撃ののろしとなるタイムリーヒットを放ち、終盤にもランナーを出して追い上げたが、あと1点が届かなかった。投手陣は山口貴之(2年)、坂田健輔(2年)のリレーで大量失点は防いだものの、相手ペースで試合が進んでしまった。
(文=尾関雄一朗)