試合レポート

鳴門vs高知

2012.05.06

鳴門vs高知 | 高校野球ドットコム

初回に連打を浴び、守備タイムを取る高知内野陣

得点差=センバツ「経験値」の差

「7対0」。
高知3番・堀尾茅(3年)が右飛に討ち取られ、試合終了の挨拶に並んだ両チーム。その先にあるレクザムスタジアムのスコアボードは、昨年10月30日・オロナミンC球場での秋季四国大会決勝戦と結果は同じも、内容が全く異なる得点差を刻んでいた。

しかもスコアボードの得点は9回まで埋まっていない。秋のサヨナラ勝ちから7回コールド勝ち。同じセンバツを経験しているにもかかわらず勝者・鳴門と敗者・高知との間には約半年で決定的な差が生まれてしまったのである。では、なぜこのような事態が生まれてしまったのか?

高知の側から見れば敗戦は想定内だったかもしれない。島田達二監督は「センバツベスト8で勝ち方を把握している」鳴門をリスペクトしているからこそ、あえて春先から投手も兼務し経験が絶対的に不足している和田恋(2年)の先発連投にチャレンジ。

「もっと捕手が彼のよさを引き出してほしかった」課題は残ったとはいえ、「弱いチームとわかって、練習に取り組んでいく」新チーム発足時の確認事項を今一度思い出す上では、むしろ悪くないコールド負けだったとも言えるだろう。

ただ、高知については気になった点もある。、鳴門先発・小林直人(3年)から8安打を放ち、4四球を貰いながら2併殺を喫するなど0点に終わった攻撃に象徴されるように、彼らの中で試合中、敗戦を受け入れ難いと思う選手と、敗戦を容易に受け入れてしまっている選手の色分けが明らかに見られたことである。指揮官は「序盤の大量失点で相手にもどっしり守られてしまった」と流れの部分を強調したが、センバツで横浜(神奈川)の前に全く歯が立たなかった彼らが、同様の状況に追い込まれたときに同じ流れに終わってしまったこともまた然り。夏にこの敗戦を活かすためには、まずはこの敗戦をどう分析するかにかかっている。


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2回裏鳴門・2死1塁から4番の杉本が大会第3号2ラン

対する鳴門。表面上は文句の付けようがない快勝だったにもかかわらず、「3回表に小林が四球を出したところからバタバタしてしまった。綱渡りの勝利です」と、森脇稔監督は全く満足するそぶりを見せなかった。

その一方で「(6回裏・7点目の適時打三塁打を放った3番)大和平(3年)が3ボールから打ったのは、相手が敬遠気味に投げてきたので『外に逃げるボールが来たら打て』とベンチから指示を出したから。彼はラッキーボーイになってくれています」と相手心理を読みきった策を明かしてくれた指揮官。そこにはセンバツベスト8と全国制覇の頂が見える位置まで進んだからこそ得た飢餓感と自信がうかがえる。

現状に満足していないのは選手も同様である。2回表・高校通算7本目となる2ランを左翼スタンドに運んだ主将・杉本京太(3年)は「みんな落ち着いているのに、僕だけ落ち着いていません」と苦笑いしつつも、ホームランに至った経緯を極めて冷静に分析した。

「相手投手の変化球が甘かったので、真ん中高めのカーブを狙いました。それとセンバツでは足を上げて打てなかった(3試合で11打数2安打)反省から、ノーステップに変えて全体的にコンパクトに振るようにしたこともよかったと思います」。

センバツ3試合ではスタメン唯一のノーヒットに終わりながら、チャレンジマッチ以降の3試合で11打数6安打1本塁打4打点と暴れまわっている2番・島田寿希斗(3年)もこう語る。

「甲子園でのプレシャーが大きかったので、それ以降は慌てることもなくなりました。センバツ後はバスターとか色々考えながら打ってきましたが、ミートポイントに顔を近づける自分のチェックポイントをつかんで、逆方向を意識しながら打ってきた辺りから調子が上がってきている感じです」。これぞセンバツで得た「経験値」を活かす行動だ。

経験値の高い側がさらなる経験値を上げ、低い側がいまだ敗戦のショックから吹っ切れず。となれば、この得点差は偶然でなく、むしろ必然であったのかもしれない。

(文=寺下友徳)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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