試合レポート

横浜隼人vs横浜

2012.05.11

横浜隼人vs横浜 | 高校野球ドットコム

2安打・島田(横浜隼人)

「逆転の横浜隼人」が初優勝

今大会勢いに乗る横浜隼人が、昨秋の王者・横浜をまたも逆転で下し、悲願の初優勝を遂げた。
これで県大会7試合中6試合が逆転。4回戦から慶應義塾横浜商大高東海大相模横浜と、私立の実力校を連破。価値ある初優勝となった。

意外と思える代打だった。
5回表、横浜隼人は0対1とリードされている場面で、先頭の清水拓哉が二塁打で出塁。続く打者は8番の相原貴俊。準決勝ではフル出場を果たしたキャッチャーである。ここで、水谷哲也監督は相原に代えて、代打に2年生の島田英二を送った。
サインはバントだったが、四球を選び、無死1、2塁に。その後、荒井晃樹のタイムリーが飛び出し、同点に追いついた。

『バントであれば、相原のままでもよかったのではないか?』
試合後にそんな疑問をぶつけてみると、「中盤から打ち合いになる。打ち合いに持ちこむのが、今年のうちの戦い。バッティングがいい島田を、はやめに使いました。それに島田は湘南クラブ(ボーイズリーグ)で全国大会準優勝のキャッチャー。“持っている”やつですから」と水谷監督は笑った。

この春、指揮官は相原と島田の二人を使い分けてきた。守備型の相原、攻撃型の島田という分け方だ。4回戦の慶應義塾戦では島田が先発し、途中から相原がマスクをかぶっている。

5回から代わった島田は、7回の先頭打者でヒットを放つと、8回には1死1塁からチャンスを広げる、レフト前ヒット。そのあと、左澤優のタイムリーで同点、小高章稔のセカンドゴロが併殺崩れ、さらにショート長谷川寛之の悪送球が重なり、逆転に成功した。水谷監督の起用が見事にはまったといえる。


横浜隼人vs横浜 | 高校野球ドットコム

優勝した横浜隼人ナイン

今年の横浜隼人は、継投で試合を作る。点を取られるのは覚悟している。ならば、自分のチームも得点が必要。バントが予想される場面でも、積極的に打つ。この試合では、2点ビハインドの7回表、島田が出塁したあとの左澤の打席だ。「送って、まずは1点差にして…」とも考えられる場面で、水谷監督は左澤に打たせた。その期待に応えて、左澤がライト線への二塁打。高田風舞の押し出し四球で、1点差となった。

「左澤は打てる選手。野球は、得点が多いほうが勝つスポーツですから、あの場面では打て。ファーストストライクから積極的に振れば、何かが起きます。逆にいえば、振らなければ何も起こりません」と話した指揮官。
8回裏は、1死から清水、島田、左澤が三連打。島田、左澤のヒットは初球(ファーストストライク)だった。ベンチからは「早く打て!」という声も聞こえてきた。攻撃的な積極策が、実を結んだ。

ただ、試合を通じて、ミスがなかったわけではない。守備のミスは毎試合のように生まれ、無駄なフォアボールもいくつかある。それでも負けなかった。
「ミスが出ても勝てたというのが、今大会の一番の収穫です。こうなると、ミスを恐れずにプレーができる。これまでは、ミスが出て負けていたんです。だからミスをしてはいけない…と、余計に硬くなってしまうんです」と振り返った水谷監督。

もちろん、ミスが出ないことにこしたことがない。だからこそ、このままの戦いでは、厳しい夏の神奈川大会を勝ち抜けるとは考えていない。
「ミスがなくなれば、もっといい野球ができる。これからは、そこを伝えていきます」と次へ向けて気を引き締めた。

一方、準優勝に終わった横浜は、エースの柳裕也が右肩の違和感により登板を回避。田原啓吾相馬和磨でよくつないだが、最後は守りのミスが失点につながった。
今大会の収穫は、背番号3・田原の成長といっていいだろう。準決勝に続き、決勝でも変化球をコーナーに集める丁寧なピッチングで試合をつくった。「柳だけでは夏は勝てない」と渡辺元智監督。柳をサポートする存在として、田原にめどが立ったのは大きい。
野手は選抜大会でスタメンを務めていた青木がケガでベンチを外れた。その代わりに入った2年生の長谷川が、攻守で存在感を見せた。また、新1年生の高濱祐仁浅間大基も起用されており、秋に比べれば選手層が上がっている。
「いい1年生が入ってきたので、油断できない。いい刺激になっています」とサードの高橋亮謙。これからメンバー争い、レギュラー争いが熾烈になっていきそうだ。

両校は5月19日から埼玉県で行われる関東大会に出場。横浜は1回戦で東海大高輪台と、横浜隼人は2回戦からの登場で下妻二前橋商の勝者と対戦する。

(文・写真=大利 実)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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