高松北vs高松東
高松北先発・佐々木亮馬(3年)
混戦、乱戦。春の初戦の難しさ
春季大会の初戦は難しい。多くの学校が練習試合を数試合はこなしているとはいえ、実戦経験が浅いままの公式戦では、攻守共に思わぬことが起こる可能性があるからだ。現在開催中のセンバツに乱戦が多いのも、そのことが多分に関連していると言えよう。
その例に違わず、この一戦も混戦、乱戦のゲームとなる。「そんなに楽に勝てるとは思っていなかった」と勝ったシード校の高松北・多田愼監督も語ったように、試合の流れは2時間18分の間、春の風のようにどっちつかずのまま。負けた高松東にも8回無死満塁の場面を筆頭に追いつける、逆転できるチャンスは大いにあった。
それでも高松北が踏ん張れたのは先制、中押し、ダメ押しと相手のミスを確実に得点に結びつけた攻撃があり、くわえて左腕・佐々木亮馬(3年)が要所で旧チームからマウンドを踏んでいる経験値を発揮したから。
特に佐々木については常時130キロ台後半をマークする本格右腕・浦一輝(3年)が2月に受けた肩甲骨裏の脂肪除去手術明けで本調子でない中、1人で159球を投げて、完投勝利した点は賞賛に値する。
とはいえ、当事者たちにとってはこれ以上の論評は不要だろう。試合後「1回戦は勝ったけど、このままで満足するのか?」秦康博コーチ(前・高松高校監督)が選手たちの前で話した言葉を、メモ帳とペン片手に聴く高松北の選手たち。その真剣な表情を見れば、彼らが最も混戦、乱戦の意味を理解していることが一目で分かるからだ。
夏のシード権獲得となるベスト4までには尽誠学園、大手前高松、シード校の三本松を破った香川高専高松など強敵が居並ぶBゾーン。その中で高松北が何を学び、何を残すかは全て「自分たち次第」である。
(文=寺下友徳)