大垣西vs岐阜第一
エース・大藏彰人(大垣西)
雨中の一戦で大垣西・大藏が快投 東海大会見えてきた
最後のバッターを抑えると、大垣西のエース・大藏彰人が吠えた。雨が降ったり止んだり、ときには大雨もあった中、ぬかるんだマウンドで延長12回を投げ抜き強豪・岐阜第一を打破した。184センチの長身からのボールには角度があり、オーバースローできれいに投げ下ろして、ストレートとスライダーで空振りも奪える。球速は140キロに及ばなくとも、ボールにスピードとキレがあり、前の試合で完封、この試合でも延長12回完投となれば、いよいよ「県下屈指の右腕」という言葉が似つかわしく思えてきた。
大垣西にとって、強打者・平塚圭のタイムリー二塁打などによる2得点&完封で終わってもよい試合だったが、9回裏に追い付かれた。一死から、大藏がこの試合で初めてのフォアボールを与えたのが発端。連打で満塁となり、遊撃ゴロを野手が後逸(打球と走者が重なったため)して、試合が振り出しに戻った。大藏は「勝ちを意識したわけではなく、手元が狂ったというか…。僕、帽子を触るクセがあるんですが、雨が降っていたため、それで手先が濡れてしまったのが原因かも」と、9回の失点を振り返るが、同点で食い止め、粘ったのはさすがだった。
4回表には雨で1時間ほどの中断を挟んだが、大蔵はそれに左右されず、むしろ中断明けからエンジン全開に。福島秀一監督も「緩急とか、ピッチングのイメージを持って投げられるようになってきた。その結果130キロの球でも速く見せられる。もともと制球力や安定性はあるしね」とエースの成長が心強い様子だ。大藏はこの日の投球を「立ち上がりが悪かったので60点」と自己採点する一方、「打者のタイプごとの攻め方など、福島先生から教わった事がノートに書いてあるんです。それを再確認して次の相手に挑みたい」と次戦での好投を誓った。
1年生エース・越川浩嗣(岐阜第一)
12回表の大垣西の勝ち越しは、相手のバッテリーエラーによるもの。「雨でグラウンド・コンディションが悪いこともあって、こういうゲームはワイルドピッチやパスボールで試合が決まるものだ」と試合中、部員に話していた福島監督だが、その予言通りになった。「ウチの大藏だって低目のスライダーが武器だから、そうなる(ボールが逸れる)危険性はあるのだし」と、どちらに転んでもおかしくない雨中の一戦を振り返りつつ、「(東海大会進出まで)あと2つ(2勝)」と力を込めた闘将。長年、公立の普通科高校を鍛えてきたベテラン監督は、04年に大垣西へ異動してからも、東海大会へ駒を進めた実績がある(06年秋)。この先の戦い方も熟知されているだろうし、チームの手応えも確かな様子だ。
敗れた岐阜第一は、悪天候の中、リリーフした1年生エース・越川浩嗣が奮投した。エラー絡みによる失点もあったが、回を追うごとに調子を上げ、力強いストレートで打者を詰まらせた。岐阜第一は2年生部員が8人だけという事情もあり、スタメンのうち7人が1年生。3番~5番を張る中川奨孔、國枝剛至、明野樹生など打力の高い選手はいるが、この日は相手エースの前に沈黙した。
片島一廣監督は「大蔵君が好投手だという噂もあって意識し過ぎたのか、普段どおりにやれば打てるのに、ボール球を振ったりするシーンもあった。ヒットが出ずつながりを欠いた。9回裏はよく追いついたが、もう一本が出なかった」と悔しそうだ。
2年連続の秋季東海大会出場は逃したが、1年生主体の若い戦力で、将来性はある。そのメンバー構成は、昨秋東海大会に進出した現3年生メンバーの下級生時とも、重なりそうだ。主将・登田謙治郎を中心に2年生メンバーが奮起すれば厚みも増すし、2枚の投手陣(越川、この日先発の神田力斗)がさらに成長すれば、安定して上位を狙えそうだ。
(文=尾関 雄一朗)