関西vs九州国際大付
送りバントを考える【3】
やはり、高校野球は難しい。
大会屈指の好カードは関西が3-2のサヨナラ勝ちで九州国際大付を下した。
前評判どうりの好ゲームだったが、送りバントの作戦がポイントなった試合だった。
まず、試合をざっと振り返る。
4回表、九州国際大付が1死満塁からの押し出しで1点を先制。即座に関西は渡辺の本塁打で同点に追いついた。以後も、一進一退の攻防が続いたが、8回裏、関西は1死・二塁から4番・右翼前へ適時打を放ち1点を勝ち越し。9回表、九州国際大付は先頭の三好が三塁強襲の二塁打で出塁すると、1死後、5番・龍の適時二塁打で振り出しに戻した。12回裏、関西は先頭の小倉が四球で出塁すると、犠打で二進、死球と捕逸で1死・1、3塁とすると、4番・渡辺のセカンドゴロの間に、三走・小倉が一瞬早くホームにタッチ、サヨナラとなった。
関西の2得点は犠打できっちり送った後の適時打で、効果的な得点の捕り方であったと言えるだろう。送りバントは間違いではなかった。ましてや、この試合のように、関西・水原、九州国際大付・三好の両投手が好投を見せていた展開では、得点圏に走者を進めて1点を取りに行く野球を徹底する方が勝利に近づくというものである。
若生監督と江浦監督が執った采配に合点がいくというものである。
ただ、ひとつだけ考えたいのは、投手戦になった要因である。確かに、両投手は好投を見せたが、送りバントで1点を取りに行くという戦い方がお互いの攻めを狭くしていたのではないかということである。
ポイントは4回表、九州国際大付の攻撃である。
先頭の安藤が死球で出塁、続く3番・三好が左翼前安打でつないで、無死1、2塁で高城を迎えた場面。ここで、若生監督が選んだのは、送りバントだった。高城はきっちり送りバントを決め、1死2、3塁の局面を作った。その後、連続四死球で1点を先制した。
先制したから、作戦は間違いではなかったのか。そこに疑問符を投げかけたい。関西・江浦監督はいう。
「とにかく、この試合は得点差をつけられてしまうと厳しいなというのは思っていました。4回の表、高城君が送りバントをしてきたときは少し助かりました。あそこで、大きいのを打たれてしまうと、苦しくなっていたと思いますから」。
高城は第1打席で右翼線を破る二塁打を放っている。若生監督から「水原の外の球を逆方向に打っていこう」という狙いをきっちり遂行してのものだった。高城には良いイメージがあり、水原には嫌なイメージが残っていたはずだ。そこで、送りバント。守備の負担を助けた攻撃ではなかったか。関西の捕手・関貴に聞いた。
「九州国際大付は、三好以外は絶対にバントがあると思っていました。だから、高城の送りバントは想定内でした。高城には1打席目には打たれていたし、バントの方が良かった」。
いわば、この回、九州国際大付には1点が入ったのではなく、1点しか入らなかったのだ。
あの場面で高城が打つ保証はどこにもないが、ただ、1点を争う展開に持ち込んでいったのは関西ではなく、九州国際大付の作戦だった。
その後、試合は膠着状態で進み、1点を取る・守る展開となり両者は送りバントを選択した。こうなると、守備面にミスがあった側に勝機は薄れてしまう。2失策に捕逸があるなど、守備にミスが多かった九州国際大付が最後に涙を飲んだ。
(文=氏原英明)