東大阪大柏原vs至学館

初出場校対決

　東大阪大柏原と至学館。春夏通じて初出場校同士に対戦は、立ち上がり両チームとも地に足がついていない状態だった。
１回に四死球やミスなどで１点ずつを取り合う。お互い、足を絡めて動きまくったうえでの得点。

そんな状況の中、試合を立て直した男がいた。東大阪大柏原の２年生エース・福山純平である。
最速１４４キロを誇る福山。１回、いきなり１４０キロ台を連発した。でも、ストライクが入らない。投球の際に力みまくっていたからだ。
それが同点に追い付いてもらった２回以降、福山の投球内容がガラッと変わった。無駄な力が取れ、１３０キロ台中盤の直球と鋭い変化球を中心に至学館打線を打ち取っていく。

田中秀昌監督も｢心と軸がぶれなかった｣と褒め讃えるほどだった。
東大阪大柏原打線は３回、ホームスチールで勝ち越しに成功。５回には至学館の投手陣を攻めて一挙５点を奪い、福山はさらに楽になった。
終わってみれば福山は４安打13奪三振。２回以降は三塁を踏ませぬピッチングで完投し２回戦進出を決めた。
｢最初は緊張していたが、２回以降はほぐれてきた。100点に近いピッチングです。気持ち良かった｣と笑みを浮かべた福山。
４番石川慎吾主将を中心に打線が注目されるチームだが、この福山という投手にも今後注目していきたい。

　一方、中盤に突き放され完敗と言える内容だった至学館。
痛かったのは、最少失点で継投する得意の勝ちパターンに持ち込めなかったことだろう。
愛知大会では、６人登録された投手陣が自ら投げる順番を決めていたという。リリーフ役の岩田遼は｢甲子園では一応自分達で決めて(麻王義之)監督に伝えますが、決めるのは監督｣という方針に変えたと試合前に話していた。
この日岩田がマウンドに上がった時、点差はすでに５点。さらにいきなりタイムリーを浴びて差は広がる。打線が福山の前に沈黙した状況で、この点差はあまりにも大きかった。

しかし全国最多１８８校の愛知大会を勝ち抜いた誇りは次のチームに受け継がれることだろう。愛知を制したプライドを持って、次のチームをスタートさせてほしい。

(文＝松倉雄太)