Column

夏場の集中力

2011.07.30

第25回 夏場の集中力2011年07月30日

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

「節電の夏」といわれて過ごす今年の夏ですが、暑い時期、皆さん元気に過ごしていますか? 白熱した地方大会を勝ち抜いた代表校チームはいよいよ甲子園大会が始まりますね。残念ながら地方大会で敗退した学校は新チームが結成され、次の大会に向けて練習を開始していることと思います。今回は暑い時期に練習や試合を行うときに、集中力を保つために意識したいことについてお話をしたいと思います。

ところで「集中力を切らすな」とか「集中しよう」と言われたり、声をかけあったりしたことがあると思いますが、集中力ってどうやって高めるものなのでしょう? 集中力という言葉が安易に使われているケースが多く、実際どうやって獲得すればいいのかはよくわからないという選手も多いと思います。集中力とは「さまざまな物事の中にあっても、一つのことに意識を集中させる能力のこと」のことを言います。野球のグランドで言われる集中力とは「目の前のボール、一つのプレーに意識を集中させること」と言えるでしょう。

しかし夏場では様々な要因がこの集中力を妨げます。環境的な要因としては天候、高温、時には強風など自然環境のよるもの、個人的な要因としては、暑さによる体力低下、体調不良(熱中症の傾向など)、前日からの睡眠不足や栄養不足といった身体のコンディションに関するものや、不安やストレスなどメンタル面でのコンディションに関するものがあげられます。こういった集中力を妨げる要素が大きければ大きいほど、集中力は下がりやすく、プレーのミスや突発的なケガなどを誘発します。また集中力の欠如は不必要なケガを誘発しやすいことに加えて、体調不良などの自覚症状の訴えが遅れることにもつながります。暑い中、プレーを続けているうちに熱中症などで倒れてしまうといったことにもなりかねないため、指導者は特に注意が必要になります。集中力の欠如をもたらす要因を一つずつ解決していくことが、集中力を高めるキーポイントになります。


環境的な要因の改善としては、その変化に対応出来るよう日頃から準備をしておくことが大切です。冷暖房のついた環境に慣れてしまい、現代人は環境温度の変化にも弱いともいわれています。グランドでは当然冷房も扇風機も使えませんので、暑熱馴化(しょねつじゅんか)といって暑い環境に身体を慣らしていくことが求められます。
具体的には暑い環境下で練習する場合、十分に水分補給を行いながら少しずつ時間をかけて暑さに慣らしていくこと、特に練習後などにクーラーのきいたところで涼みすぎないように工夫することなどが上げられます。

また運動後に牛乳(もしくはタンパク質を含んだ食品)を取ると、アルブミンというタンパク質が血液内に増え、血流が促進されて汗をかきやすくなる、皮膚からの熱放散をしやすくなるといった効果が期待出来るそうです。
さらに強風も集中力を阻害する大きな要因です。風が強い日などはフライ捕球など守備練習を多めに行い、日頃から強風に対する準備を行っておくようにしたいものです。

個人的な要因の改善としては、自分で解決できるものは積極的に取り組むようにしましょう。睡眠不足にならないために身体を休めることも練習の一つと考えて行うこと、体調があまり優れないと感じたらムリをしないことなどです。栄養不足については、栄養そのものが不足するのではなく、バランスの悪い食生活や夏ばてによる食事の偏りなどで体力面が低下していると考えられますので、夏でも食欲の出るような食事を工夫して取るようにしましょう。不安やストレスといったメンタル面については、悩ませているものが自分で解決できるものなのか、そうではないのかを把握し、自分で解決できないものであれば誰かに相談するなどして早めに対応しましょう。

グランドで声をかけることにも一工夫を。ただ単に「集中しよう」というのではなく、「次の打者を打ち取ることに集中しよう」「この一球のプレーに集中しよう」とより具体的に指示をすることで、集中力は格段に高まります。試合でピンチの時などは、タイムを取ってプレーの確認を行いますよね。あの要領で選手同士が声をかけあい、プレーの確認を行うことが一つのプレーへの集中力を高めることにつながります。練習の時であれば、練習の目的が何かをはっきりさせることや「これが出来たらOK」というゴールを設定することが集中力UPにつながります。

「集中しよう」という掛け声とともに、明確な目標、ゴール設定、集中できる体力面、環境面のサポートをぜひ実践してみてくださいね!

【夏場の集中力を高めるために】
●環境的な要因(天候、高温、強風等)を把握し、事前に準備をしておく
●あらかじめ暑熱馴化を行う。運動後の牛乳も効果が期待出来る
●睡眠不足、栄養不足にならないよう工夫する
●不安やストレスは早めに解決を。誰かに相談することも必要
●「集中しよう」の声はなるべく具体的に
●明確な目標やゴールを設定して練習に取り組もう

(文=西村 典子

次回、第26回公開は08月15日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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