筋肉痛とうまくつきあおう
第8回 筋肉痛とうまくつきあおう2010年11月15日
筋肉痛への対処法
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
だんだん気温が低くなってくると、身体のコンディションをよい状態に維持するためには入念なウォームアップ、クールダウンが必要となってきますね。夏場と同じような準備では、十分によい動きが出来なかったという経験はありませんか。今回は皆さんが普段経験することの多い筋肉痛について考えてみたいと思います。
野球の練習やトレーニングをすると、筋肉にはそのたびに大きな負荷がかかります。曲げ伸ばしを繰り返すことで、筋肉を構成する筋線維やその周辺の組織に細かなキズができてしまうのです。
人間の身体はこれを修復しようとしますが、そのときにいろんな化学物質が関わるため、神経を刺激したり、炎症を引き起こしたりして痛みを感じると言われています。以前は体内にたまった乳酸が筋肉痛の原因と考えられていましたが、乳酸はエネルギー源として体内で再利用できるため、今では乳酸だけが「悪者」ということではなさそうです。
また運動の動作によっても、筋肉痛になりやすいもの、なりにくいものがあります。腕を曲げて重いものを引き寄せる動作(コンセントリック収縮)と、腕を伸ばしながら負荷に対抗する動作(エキセントリック収縮)では、腕を伸ばしながら対抗する動作のほうがより筋肉痛になりやすいのです。たとえば綱引きでいえば、引き寄せる側よりも引っ張られまいと踏ん張って腕を伸ばしている側の人たちのほうが、筋肉痛が起きやすいということです。筋肉痛は身体を動かしている限り、程度の差こそあれどうしても起こってしまいます。ただし十分なウォームアップやクールダウンは筋肉痛の軽減に役立ちます(第5回コラム「ウォームアップとストレッチ」参照)。
筋肉痛への対応としては「筋肉を伸ばして痛いかどうか」ということが判断の目安となります。クールダウンでストレッチを行ったときにひどい痛みを感じる場合は、ムリに伸ばすことはやめて氷などで患部を十分に冷やします(アイシング)。伸ばして痛い状態は筋線維にダメージを受けている可能性が高いと考えられるからです。筋肉痛の程度がひどくなってくるといわゆる「肉離れ」といわれる状態になります。ストレッチをしてひどい痛みを感じたらその動作は行わないようにしましょう。
反対に筋肉を伸ばすと適度なストレッチ感が心地よいと感じられるようであれば、そのままストレッチを続けましょう。筋線維を伸ばして血行を良くすることが筋肉痛軽減への近道です。さらに帰宅後はシャワーで済まさずにお風呂に入りましょう。しっかりと湯船につかって体全体の血行をよくし、入浴後に疲労した部分をストレッチしたり、軽くほぐしたりすると、筋肉痛の軽減だけではなく、疲労回復効果も期待できます。
さらにバランスの良い食生活を心掛けることも筋肉痛対策には必要です。特にビタミンB群は代謝を良くし、疲労回復に効果があるといわれています。またタンパク質は20種類のアミノ酸から構成されていますが、その中のBCAAと呼ばれる必須アミノ酸は筋肉内で直接エネルギー源として使われるため、運動後にBCAAを補給すると筋肉痛の軽減に役立つといわれています。
運動を行う限り筋肉痛はつきもの。そのメカニズムや対処法を理解して上手につきあうようにしてくださいね。
(文=西村 典子)
次回、第9回公開は11月30日を予定しております。
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