Column

弱者が強者に勝つための打撃法「発想の転換」

2015.09.10

遠藤友彦の人間力!

 たくさんのチーム指導をしていると氣づくことがあります。弱者が強者と同じことをしていると「絶対に追いつけない」と思います。

 ある程度の技術は必要だと思いますが、強豪チームと同じことをしても勝つ確率は高くなりません。例えば、強豪チームに速球投手、大砲打者がいたとします。同じように速い球を投げる、遠くに飛ばすという考え方になりがちです。

「合わせ力」を高める

スイングスピードは一切無視して、合わせ力(ミート力)を高める(写真はイメージ)

 新チームの秋大会を観戦し負けたチームがミーティングで、「速球投手に振り負けた。これからの練習でたくさん振ってスイングスピードを上げよう」と話していました。

 確かに鈍いスイングよりも鋭いスイングであった方が良いと思いますが、打撃はスイングスピードを考え過ぎると上半身で力んだ振り方になり、結果的に速球に振り遅れるようになります。

 身体能力の高い選手と同じ方向性を目指せば、追い抜くことは難しいのです。私の考え方に「スイングスピードは一切無視して、合わせ力(ミート力)を高める」というものがあります。

 スイングが遅くても、的確に合わせられれば飛んでいきます。相手の球が速ければ速いほど反発も高まります。剛には剛ではなく、剛には柔で良いのです。

 合わせ方の方法をひとつ、私の経験から教えましょう。

 私が社会人現役時代、周囲には野球エリートばかりでした。敵チームもそうですが、味方も有名な大学・高校の選手がいます。身体も大きければスイングスピードも見たことのない速さです。

 無名の公立高校からノンプロに入り、「同じことをしても生きていけない」と痛感しました。自分なりの何かを作り上げる・・エリートはしないことを自分なりに確立して成績を残していくことを決断しました。

 結局、周囲を見渡せば、鳴り物入りで入部してきた選手は結果を残せなく引退し、雑草軍団の一角である私が16年間プレーして大きな成果を上げたのです。16年間で通算打率3割4分1厘は飛び抜けた数字です。都市対抗全国大会での成績は5割をこえているのですから自分でも驚きます。

 周囲のエリートは技術練習を繰り返し、自分の感覚で打ちます。もちろんそれで打てる投手もいますが、社会人野球の一線級になればそうもいきません。感覚任せ、その日の調子に頼るような反応勝負では限界があります。

 私には強烈な反射神経や鋭いスイングは期待できなかったために、最初から工夫の道に走りました。技術練習も最低限身につけましたが、「本番で打てるため」の工夫を徹底的に考えて身につけたのです。スイングスピードが速くても、球に当たらなければ何もなりません。合わせ力を向上させる・・

 もし投げてくる球が分かっていれば・・

 大抵の打者は、自分の打てる球を待ちます。ストレートにタイミングを合わせて変化球に対応していくのが圧倒的に多いのです。


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[page_break:何を自分の強みとするか?]

何を自分の強みとするか?

何を自分の強みとするか?(写真はイメージ)

 私は真逆に【相手目線】で投げてきそうな球を待ちました。ポジションが捕手ということもあり、相手目線はお手のものです。16年間で何千も打席数があるのに、四死球が少ないのも私の成績の特徴です。狙い球を絞り、物の見事に早いカウントで仕留めていたのです。

 早いカウントでは、投手は氣を緩ませながら投げることもあります。対戦相手の私は実績も乏しいので油断してくれます。舐めてきているなと思えば、アバウトに速球勝負してくるし、打ち込んで相手バッテリーに慎重さが出てくれば、変化球の入り方が多くなります。

 相手の心を読むことで、私の狙い球を当てる確率は飛躍的に上がりました。凡人であった自分が独自の戦い方を確立し、最終的には弱者が強者を倒してきたのです。

 私の勝因は、周囲と(エリートと)同じ道を歩まなかったことです。ここが重要なポイントです。最初の道を間違えなかったことで、勝機が出てきました。普通の考え方で同じような練習や感覚でやれば、確実に早く引退していたことでしょう。

 速球投手を打てなくて「スイングスピードを・・」と言っている力量下位のチームに言います。「同じことを目指しても勝機はない。自分たちのスタイルを作り上げ、違う土俵で勝負できるようになればいい」とレクチャーします。

 私がプレーしていた頃、敵チームにちょっと変わった選手がいました。彼もそのチームの中では雑草選手のひとりでしたが、現役生活は長くて活躍しました。彼の打ち方は綺麗とはいえませんでしたが、徹底して逆方向に打ち返す打者でした。

 インコースでもどこでも逆方向に打ち返す・・

 当時の社会人は金属全盛期で本塁打を量産する打者が多くいましたが、彼はまったく真逆の「逆方向に単打」が基本だったのです。インコースを逆方向に打つテクニックは、もはや職人です。地味ですがチームとしてはなくてはならない存在で、私が所属したNTTも彼から煮え湯を何度も飲まされました。

 戦うスタイルはそれぞれでいいのです。チームであれば、野球は9回終わって1点多く取って勝てればいいのです。

 自分はどの道で勝負するのか・・

 ひとつ言えることは強者と同じような方向性ではダメということです。強者がしない真逆なことを自分の武器(強み)として勝負したほうが可能性も出てきます。

 新チームでスタートしている今、自分のチームはどのような方向性を持って時間を使っていくのか。選手個人としても、何を強みとして特徴ある選手になっていくのか。ここを誤ると、来夏も同じような結末で終わります。

 大胆な発想転換をして、今までにない方向で自分を作り上げていきましょう。まずはその方向を決めることです!

(文=遠藤 友彦


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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