タイトネスチェックでベストパフォーマンスを
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
本格的な野球シーズンを迎え、各地で地方大会が行われていることと思います。オフシーズンを中心に行ってきたトレーニングが体力アップを後押しし、それが技術レベルの向上、さらには試合で良いパフォーマンスを発揮することにつながることを期待しています。さて今回は新学期が始まり、少しずつ身体の疲労がたまってきたときにみられる腰痛についてお話をしたいと思います。
疲労と筋肉の関係性
ジャックナイフ・エクササイズでハムストリングスの柔軟性を高めよう
【疲労がたまると筋肉の柔軟性が低下する】
日々のコンディショニングとしてチーム全体でストレッチをしているところも多いと思いますが、筋肉を使ってプレーしているとどうしてもプレー後は筋肉痛が起こったり、柔軟性が低下したりします。それを翌日に持ち越さないようにしたいところですが、練習量が増えたり、試合が続いてしまうと疲労回復が追いつかなくなり、身体の硬さや動きづらさを感じるようになるかもしれません。
こうしたサインをまず自分自身が見逃さないようにウォームアップの時などにチェックをするようにしましょう。疲労がたまって筋肉の柔軟性が低下すると腰痛などのリスクはどうしても高まります。
全体でのアップで身体が十分に温まらないと感じるときは、少しランニング量を増やしたり、時間をかけてストレッチをするといったことを行いましょう。
【自分で出来るタイトネス(硬さ)チェック】
ストレッチは単に筋肉を伸ばすだけではなく、自分のコンディションを知るよい方法です。太もも周辺部を中心にチェックしてみましょう。またストレッチをするときに腰背部に強く痛みが出るようであれば、痛みの出ない範囲にとどめるようにしたり、ムリにストレッチやプレーを続けないようにしましょう。
●太もも後面(ハムストリングス)のチェック
座った状態で足を伸ばした長座の姿勢をとります。そこからゆっくりと身体を前に倒していきましょう。いつもと同じところまで手が届くかをチェックします。いつもよりも硬いと感じるときは踵を保持して屈伸を繰り返すジャックナイフ・エクササイズを行うと、ハムストリングスの柔軟性改善に役立ちます。
●太もも前面(大腿四頭筋)のチェック
うつ伏せになった状態で膝を曲げ、手で足首を保持しながら踵がお尻につくかどうかをチェックします。もし踵がお尻につかない場合は、踵とお尻の距離を鏡を使って目測で確認したり、他の選手に手などで距離を測ってもらいましょう。ストレッチを行う前に仰向け・膝立ての状態でお尻を浮かせるヒップリフト・エクササイズを行ってから再度伸ばしてみると太ももの前面はより伸びやすくなります。
●足首とふくらはぎのチェック
両膝をそろえてその場でしゃがみ込み、踵が浮かない状態をキープできるかチェックします。足首の硬さが顕著になると膝や腰などへの負担が増えて腰痛を引き起こすことがあります。もともと足首が硬くて踵が浮いてしまう…という選手は、入浴時にお風呂で正座をして足の甲部を伸ばし、関節の動きを改善することなどがオススメです。
腰椎の椎間板ヘルニアとは
前屈・後屈によっても腰痛のヒントがえられる。痛みが強くなる場合はムリをして行わないこと
【腰椎分離症はジュニア時代に起こりやすい】
高校に進学したときから腰痛に悩まされている選手もいると思います。腰椎分離症は痛みがあるのにムリをしながらプレーを続けた結果、腰椎部分に亀裂が入ったり、疲労骨折を起こしたりした状態で突発的に起こるケガというよりは、だんだん痛みが増してくるケガと言えるでしょう。
初期段階であれば骨折した腰椎が骨癒合するまで、コルセットなどを用いて安静にすることが推奨されますが、疲労骨折を起こしてから時間が経過している場合は治療とリハビリテーション、筋力強化などで競技復帰を目指します。腰椎分離症では身体を前に倒す前屈よりも、身体を後ろに反らせる後屈のときにより痛みが顕著に現れるという特徴があります。太ももの前面部(大腿四頭筋や腸腰筋)の柔軟性を高めると後屈しやすくなり、腰椎への負担も軽減されることが期待できます。
【腰椎の椎間板ヘルニアとは】
腰椎分離症と並んでよく知られている腰痛に腰椎の椎間板ヘルニア(ヘルニアとは何かが飛び出すこと。椎間板が外に飛び出した状態)があげられます。これは腰椎と腰椎の間にある椎間板が何らかの原因で正しい位置から後方にズレてしまい、後ろにある神経を刺激したり、圧迫したりといったことで痛みが起こります。
同じ動作を繰り返し行うことで腰椎に大きな物理的ストレスがかかって起こりますが、腰椎分離症を発症して後にその影響で椎間板ヘルニアを発症するケースもあります。腰椎の椎間板ヘルニアでは後屈よりも前屈時に痛みが強くなる傾向が見られるため、特に太もも後面部(ハムストリングス)や臀部を中心に柔軟性を高め、腰椎への負担を軽減させるようにしましょう。
小・中学生から高校生にかけて成長期にある身体は骨の成長が著しく、骨と筋肉の成長には時間的なズレが生じるため、筋肉はつねに骨に引っ張られて緊張した状態をつくりやすくなります。これに加えて疲労によってさらに筋肉の柔軟性が低下すると、身体は思うように動かず、腰背部をはじめとしてさまざまなケガをしやすくなります。こうした身体の変化を常に自分でモニタリングし、股関節部分や足関節などの動きをよくして身体のゆるみをつくり、腰椎への負担を軽減させることが大切です。
次回コラム公開は4月30日を予定しております。
(文=西村 典子)