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今日から始める疲労回復マネジメント

2017.11.15

今日から始める疲労回復マネジメント | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 いよいよ本格的なオフシーズンの時期に近づきました。日没も早くなり、夕方から部活を行う時にはあっという間に暗くなってしまうことを実感することも多いと思います。練習時間が短くなりやすいこの時期ですが、グランド外でもできる練習などを工夫して上手に時間を使いたいですね。今回は野球の練習後に行うクールダウンや疲労回復のためにできることについてお話をしたいと思います。

短い練習時間だからクールダウンは不要?

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いつもと同じようにストレッチをして違和感がないかを確認する

 照明施設のないグランドであれば、ボールがハッキリと認識できる時間は限られていますので、練習前後に行うウォームアップやクールダウンは全体ではなく個人で行うチームも少なくないでしょう。練習前であればケガをしないよう身体をよく温めてウォームアップを念入りにすることも多いと思いますが、練習後はパッと着替えて下校してしまうといったことが習慣になっているところもあります。

 クールダウンと呼ばれる練習後の軽い運動は練習後に行うことが良いのですが、スケジュール的に難しい場合は帰宅してから自宅で行うことも可能です。ただしクールダウンを行わないまま過ごすことを日常的にしてしまうと、疲労の回復が遅くなったり、少しずつ疲労が蓄積されていったりして、翌日以降も「何となく疲れている」「身体が重だるい」といった自覚症状が現れるようになります。またこれが積み重なると知らず知らずのうちに体調に異変をきたすオーバートレーニング症候群におちいることもあるので注意が必要です。練習時間は短くとも、その間に高負荷のトレーニングや技術練習を行っているので、練習後にはクールダウンを行うことを心がけましょう。

帰宅してから気づいた痛みへの対応

 まずは普段と同じようにストレッチを行ってみて、いつもと身体の硬さはどうか、動かしてみて痛みや違和感を感じるところはないかをセルフチェックします。練習中は集中しているのであまり気にならなくても、練習後や帰宅後にやっぱり痛みや違和感を感じるということはよくあることです。気になる部位が見つかったら「痛み」「腫れ」「触って熱い」といった炎症症状があるかどうかを確認しましょう。こうした症状が見られた場合はビニール袋に氷や氷水などを入れて患部を冷やす=アイシングをするようにします。

 アイシングの時間は部位によっても異なりますが、およそ10分〜15分をめどとし、痛みの感覚や冷たいという感覚がなくなってからプラス5分程度行いましょう。ただし疲労などによって筋肉の柔軟性が低下し、痛みが出ている場合(たとえば慢性腰痛など)は、動作がスムーズに行えるようにストレッチを行ったり、患部を温めたりして動きをよくするようにしてみましょう。痛みが強くなるような動作(腰を反らせると痛い等)は、控えるようにします。

[page_break:入浴は絶好のコンディショニングタイム]

入浴は絶好のコンディショニングタイム

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帰宅してから行うコンディショニングが疲労回復に役立つ

 気温が下がってきているこの時期は汗を流すためのシャワーだけではなく、湯船につかって入浴する選手も増えてきていると思います。セルフコンディショニングの観点からいえば、入浴は絶好のコンディショニングタイムです。湯船につかって身体全体を温めることは血行を良くし、筋肉をはじめ体内にたまっている疲労物質の分解・代謝をうながします。

 また「足首が硬い」と悩んでいる選手は、湯船の中で数十秒ほど正座をするようにすると、浮力によって適度に荷重が軽減され、足の前面部が伸ばされるストレッチができますし、肩に不安のある選手は湯船につかってお湯の中で肘を曲げ、「前へならえ」の状態にしてうちわを仰ぐように左右に手を動かすと、水の抵抗によって肩の深部にある筋肉(腱板:ローテーターカフ、通称インナーマッスル)を刺激し、トレーニングをすることができます。この他にもゴムボールやリストグリップを使えば、お風呂に入りながら握力を鍛えることもできまし、ボーッとリラックスして過ごす時間も心身のリフレッシュにつながります。入浴時間をコンディショニングタイムとして活用してみましょう。

疲労回復に欠かせないパワーディナー

 運動後の身体はエネルギー源を消費しているため、これらを補うような食事にする必要があります。エネルギーを生み出すもととなる炭水化物や脂質だけではなく、筋肉のもととなるタンパク質、身体の調整機能を司どるビタミンやミネラルなどバランスの良い食事をとることが理想的です。ケガをしているときには炎症症状を抑える効果が期待できる魚類なども選んでみると良いでしょう。

 また麺類や丼物のみの一品で済ませてしまうと、不足する栄養素が多くなってしまいますので、こうした一品ものにサラダや小鉢など副菜を一つ付け加えるだけでもかなり栄養バランスは改善されます。筋肉痛がかなりある場合は、筋線維の修復に必須アミノ酸であるBCAAをとるようにすると、翌日の疲労感が軽減されやすくなります。肉や魚だけではなく卵や豆腐、納豆など手軽に食べられるものも合わせてとるようにすると疲労回復効果が期待できます。

 疲れが蓄積されていくと身体のキレがなくなってきたり、ケガをしやすい状態になってしまったりします。今日の疲労を翌日に持ち越さないためにも、普段から自分でできることを実践していきましょう。

【今日から始める疲労回復マネジメント】
●照明施設のないグランドではボールを認識できる時間は短い
●練習後のクールダウンは帰宅後でも構わないので必ず行う
●練習中に気づかなかった痛みにはアイシングで対応する
●入浴は必ず湯船につかって身体全体を温めよう
●湯船の中でもできる簡単なエクササイズやストレッチを取り入れよう
●練習後の食事はエネルギー源を補給すると同時に身体づくりのためのタンパク質もとろう

(文=西村 典子

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注目記事
2017年秋季大会特設ページ 〜選抜への道〜

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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