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発汗量の多い季節は鉄分をしっかりとろう

2017.07.15

発汗量の多い季節は鉄分をしっかりとろう | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 夏の地方大会もいよいよ後半戦に突入してきました。リーグ戦とは違い、トーナメント大会は一発勝負になるため、勝ち上がっていくとどうしても試合が連戦になってしまいます。またこの時期は暑さによる発汗量も増えますので、脱水症状や熱中症などにも注意が必要です。今回は運動中にたくさん汗をかくことによって、水分や塩分とともにミネラルの一つである鉄分が不足することとその影響、補給方法について考えてみたいと思います。

発汗で失われるのは水分・塩分だけではない

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夏の暑い時期は発汗によって鉄分も失われることを知っておこう

 汗をなめてみると少し塩辛い味がしますが、これは水分とともにミネラル分の一つであるナトリウムが含まれているため。このため激しい運動を行うときには水分とともに塩分補給が必要であるということが言われています。最近は塩分の重要性をかなり強調されることが多くなっていますが、あまりにも塩辛いものばかりを取り過ぎると塩分過多になってしまいますので、試合や練習が長時間にわたる場合や大量に汗をかいたときに少し塩分を含むものをとるようにするとよいでしょう。

 また鉄分についても激しい運動を行うとより多く消費し、汗によって体外に排出されることがわかっています。運動が長時間にわたると、全身の血流量が増えて身体の末端まで酸素や栄養素を届けるために赤血球の働きが欠かせませんが、赤血球の材料となる鉄分の必要量も増加するからです。さらに汗にも微量の鉄分が含まれますが、大量に汗をかくことで鉄分の排出量も増えることになります。鉄分不足は女性アスリートによく見られますが、男性アスリートにとっても必要不可欠な栄養素であることは間違いありません。

疲れがなかなか抜けないのは鉄分不足かも?

 鉄分不足といってまず思い出すのは貧血かもしれません。貧血とは血液に含まれるヘモグロビン濃度の低下によって起こりますが、鉄分はヘモグロビンを運搬する赤血球の材料となるもので、不足すると鉄欠乏性貧血を起こします。立ちくらみなどが代表的な症状ですが、この他にも集中力が続かない、スタミナ不足を感じる、いくら休みをとっても疲れがとれない、意欲・モチベーションの低下などが見られます。試合や練習での疲労がなかなか抜けないときは、鉄欠乏性貧血による可能性があることも知っておきましょう。貧血は食事によって改善することが可能です。疲労回復効果とともに夏バテ対策、スタミナ回復を意識した鉄分摂取を心がけましょう。

[page_break:アスリートとして十分な鉄分をとっていますか?]

アスリートとして十分な鉄分をとっていますか?

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鉄製のフライパンやお鍋などで調理したものにも微量の鉄分が含まれる

 普段の食事習慣で十分に鉄分を取れているでしょうか?チェックしてみましょう。

□ 卵を1日1個食べる
□ 赤身の肉、魚を食べる
□ 豆、豆製品(豆腐、納豆、油揚げなど)を食べる
□ 緑黄色野菜を1日3回食べる
□ 種実(アーモンド、ピーナッツ)を食べる
□ 1週間に1回レバーを食べる
□ 果物(特に柑橘類)を食べる
(参考ページ:「発汗量が増える時期の食事」クレーマージャパン オフィシャルサイトより引用)
http://www.cramer.co.jp/1606-2/

 鉄分には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」という2種類があり、赤身肉やレバー、卵など動物性食品に含まれる鉄分がヘム鉄、ほうれん草や豆製品、穀物など植物性食品に含まれる鉄分が非ヘム鉄です。ヘム鉄の方が非ヘム鉄と比較して身体への吸収がよく、より効果的に鉄分を補給することができると言われています。レバーは苦手な選手が多かったり、日常的にレバーを食べるのがむずかしかったり、といった点を考慮するとまずは赤身の肉・魚をしっかりとるようにし、鉄分の吸収率を上げるビタミンCを含む野菜や果物などと一緒にとるようにするとよいですね。

 一方、鉄分の吸収を阻害すると言われているのがタンニンを含むものです。タンニンはコーヒー、紅茶、緑茶などに含まれ、鉄分と結合して鉄分を溶けにくくしてしまう=鉄分の吸収率を下げてしまうと言われています。食事時にお茶を準備することも多いと思いますが、鉄分をとるという点から考えると緑茶よりも麦茶やウーロン茶、ミネラルウォーターの方が適しているといえるでしょう。

 連戦や長時間の練習によって体力的な疲労もたまってくる頃だと思いますが、汗をたくさんかく時期は水分・塩分補給とともに鉄分についても意識してとるように心がけましょう。

【発汗量の多い季節は鉄分をしっかりとろう】
●発汗では水分とともにミネラル分の一つである鉄分も排出される
●激しい運動や長時間にわたる運動は血流量を増加させるため、鉄分の消費が増える
●貧血は立ちくらみだけではなく、疲労感が抜けない、集中力が続かないといったことも起こる
●普段の食生活で鉄分をしっかり取っているかチェックしよう
●鉄分には動物性由来の「ヘム鉄」、植物性由来の「非ヘム鉄」がある
●鉄分とともにビタミンCを含む食材を一緒にとって吸収率をアップさせよう

(文=西村 典子

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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