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伝統の日大山形と酒田南に対し東海大山形、鶴岡東も奮闘して混戦【山形・2018年度版】

2018.03.05

野球後進県からの進歩

伝統の日大山形と酒田南に対し東海大山形、鶴岡東も奮闘して混戦【山形・2018年度版】 | 高校野球ドットコム
山形県で一時代を築いた日大山形

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 東海大山形が2度目の甲子園出場を果たした1985(昭和60)年の夏、優勝候補のPL学園に7対29という記録的なスコアで敗退したということがあった。このことは県議会でも取り上げられて全国に報じられた。隣接する新潟県に並んで、かつて高校野球の全国大会でのワースト記録を争っていたのが山形県である。県議会で「県内の高校野球を強くするにはどうしたらいいか」ということが大事な議題になったということである。
 この件だけでも、山形県が野球後進県といわれても誰も文句が言えなかったという現実ともいえる。

 それでも、東海大山形は翌年も春夏甲子園に出場し、夏は京都商(現京都学園)に負けたとはいえ0対1というスコアで健闘。さらに翌年は待望の初勝利を挙げ、2回戦も勝って汚名を返上した。県議会の成果も何らかの形であったということがいえそうだ。それから、30年の歳月の間に山形県の高校野球は格段の進歩を遂げている。
 歴史的には、その当事者となった東海大山形に対して、県内の対抗としては老舗の日大山形が存在していた。元々は、山形県の高校野球の先駆的な立場としては戦前の山形中(現山形東)を除くと日大山形が筆頭格である。甲子園の歴史ということでいえば、日本復帰以前の沖縄代表の首里に初勝利を献上したことでも話題になった。ちなみに、この時点で山形県勢は甲子園では未勝利だった。だから、実は未勝利県同士の戦いというわけだ。

 結局、山形県勢の甲子園初勝利はさらに遅れたが、実現したのは日大山形だった。その10年後の春で、熊谷 篤彦投手の踏ん張りで鳥取県の鳥取境を下した。その年は夏にも甲子園初勝利を果たす。こうして山形県というと日大山形という時代が続いていく。そして、それに対抗してきたのが、比較的県外の選手を早くから集めて強化していた鶴商学園(現鶴岡東)で、東海大山形と3勢力で争うという形だった。

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酒田南と羽黒の覇権争い

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プロ野球選手も輩出している酒田南

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 それから時代が流れて、今では山形県の高校野球関係者にとっては、常に全国でどう勝っていくのかということを見据えられるくらいになっている。その基本的なステップとなったのは、04年春に県勢初のベスト8に進出した東海大山形だった。さらに、翌年の春にはさらに一つ上を行ってベスト4に進出した羽黒の活躍も大きい。
 しかし、その間に県勢として着実に甲子園に出場し、全国で対等に戦いプロ野球選手も輩出していったのが酒田南だった。

 酒田南は大阪の強豪校上宮と同じ系列の宗派ということもあり、野球部強化にあたって上宮に相談。その結果として、上宮出身で中央大でも活躍した西原 忠善監督(現神奈川県武相監督)が就任。酒田南は監督ばかりではなく、選手そのものも関西から送り込んでもらうことによってチームの底上げを果たした。
 初出場の97年には、ほとんどが山形県の出身だったが、2度目の甲子園となった99年のレギュラーはバッテリー以外は全員大阪出身だった。思い切った1年生の起用などもファンを驚かせた。以降4年間は山形県の甲子園出場は酒田南が独占する。
 こうして、酒田南の圧倒的な強さは山形県の他の学校の刺激を与えていくようになっていく。

 この時代、もっとも酒田南に抵抗を示したのが羽黒だった。やはり、他県出身者を受け入れて強化していくというシステムをとっていた。まさに、酒田南に追いつけ追い越せということで、強化をし始めてからは強烈に酒田南を意識。酒田南が関西出身の生徒が多いのに対して、羽黒は神奈川で少年野球を指導していた竹内 一郎監督の関係で神奈川、千葉などの出身者が多いのが特徴となっていった。
 加えて、ブラジルからの留学生も含めて積極的に受け入れるようになり成果を発揮してきた。03年夏に悲願の甲子園初出場を果たすと、竹内監督から横田 謙人監督に引き継がれ、アメリカ仕込みの横田監督はさらに国際色を増していった。羽黒は05年春には勝つべくして勝つという堂々とした戦いぶりでベスト4へ進出して、「強い山形」を完全に全国の高校野球ファンに印象付けた。

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新勢力の登場による混戦模様

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上位を狙える存在の1つである九里学園

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 この2強に対して、実績では県の高校野球を支えてきた日大山形も復活。対抗勢力として翌06年夏は開星仙台育英今治西と常連校を下してベスト8に進出。さらに、13年夏には日大三作新学院明徳義塾と全国制覇の実績のある強豪校を相次いで下しながらのベスト4。この山形勢の躍進で、全国的に地域差がなくなってきたということが認識されていったことにもなる。日大山形は県大会3位ながら東北地区大会では優勝候補だった仙台育英を下すなどで4強入りを果たし18年春には36年ぶり4回目となる出場を果たして古くからのファンを喜ばせた。

 また、10年には21世紀枠代表として選出された山形中央が、夏は自力で初出場を果たして気を吐いた。山形中央はその後も13年春と14年夏に出場、県外生も含めた戦力強化の私学勢が上位を占めていく中で、体育コースも設置している公立普通科校として健闘を示している。こうした状況が続いているが、17年秋季県大会では酒田南が優勝し、東海大山形が準優勝、日大山形が3位となった。ベスト4にはもう1校山形城北が残った。8強には、山形中央鶴岡東などの常連に並んで山形学院酒田光陵というところも顔を出している。

 こうして日大山形酒田南東海大山形鶴岡東の4校に加えて山形中央羽黒、さらには山形城北米沢中央上山明新館に加えて九里学園山本学園といった新しい私学も上位を窺える存在となってきている。伝統校では山形南や山形商なども健闘しているという構図となっている。

(文:手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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