Interview

日光に現れた中学軟式の144キロ右腕・小川哲平(落合中)が作新学院に進学する理由【後編】

2022.03.18

 2021年の中学軟式野球界の中心の1人だった日光市立落合中の小川 哲平投手。4月からは作新学院(栃木)へ入学するスーパー中学生は、阪神のドラフト1位・森木 大智投手(高知高出身)を追いかけて成長してきたが、今回は中学3年間の歩みを振り返りたい。

先輩相手のノーヒットノーランの偉業

日光に現れた中学軟式の144キロ右腕・小川哲平(落合中)が作新学院に進学する理由【後編】 | 高校野球ドットコム
小川哲平(落合中)

 小学6年生の時点で120キロを計測する能力を持っていた小川は、レッドコードトレーニングを経て、1年生秋に出場した県内の新人戦で134キロまで到達。入学してわずか半年で14キロのスピードアップに成長したことに「嬉しかったですね」と当時のことを誇らしげに振り返る。

 しかし目標は2年生までに145キロ、3年生で150キロと、小川にとっては道半ば。小川は自ら課した課題に向かって、ひたむきに取り組み続けると、2年生の時に選抜チーム・ALL栃木に選出されることになる。

「選んでいただいたことは光栄でしたし、人数が少ないなりに、毎日やってきたことへのご褒美、結果だったと思います」。ALL栃木は、第23回関東・東北・北信越 少年(中学)新人軟式野球大会で、見事優勝。チームのみならず、小川にとっても嬉しい結果だが、この大会で、再び小川は自信を深めていく。

「3年生主体の千葉の選抜チームと対戦した際、ノーヒットノーランをすることができました。味方の好プレーに助けられながらですが、その経験を得られたことは大きかったと思います」

 同時に、この試合で144キロを計測。1年生の秋が134キロだったことを考えれば、1年で10キロアップできたことは、より自信を深められるところだが、「目標の145キロには届いていなかったので、『まだなんだ』と思いました」と慢心はしなかったという。

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現状に満足することなくプロ入りへ

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小川哲平(落合中)

 小川はその後、再びALL栃木のメンバーに召集され、今度は静岡県で開催された文部科学大臣杯第12回全日本少年春季軟式野球大会日本生命トーナメントに出場。日本一の栄冠を目指して、右腕を振り続けた。

 チームは順調に勝ち上がっていき、決勝戦では星稜中(石川)と対決。この試合で先発を託された小川だが、中盤の3失点で相手にリードを許し、そのまま敗戦を喫した。結果だけ見てしまうと、悔しい内容に思えるが、小川のなかでは違う手ごたえがあった。

「これまでは自分の立てた目標をクリアできずに、真っすぐに自信を持てていませんでした。全国大会のような大舞台も経験したことがなかったので。でも決勝戦、6回裏は真っすぐで三者連続三振を取ることができた時に、『全国でも真っすぐは通用するんだ』と確証を持つことができました」

 真っすぐに手ごたえを感じた小川。今後に向けて「変化球が多かったので、もっと真っすぐ中心に弱気にならずに投げていきたい」と自信を持った真っすぐで勝負していきたいことを誓った。

 そんな小川が進学先に選んだのが、地元・栃木の名門校である作新学院だった。

「地元の栃木で優勝したい」という理由を第一声に話した後、続けて、野球以外の面での指導に心惹かれたことを明かした。

「自分のなかでは周りから応援されるような選手になりたい、ということも目標でした。落合中での3年間も意識して過ごしてきましたが、そうしたところもしっかりされている印象を受けたので、進学することを決めました」

 中学生であることを忘れてしまいそうな、野球に対する考え方・見方に感心され続けてしまったが、最後の1年間だけ指導にあたってきた顧問の柳 智文先生は、「持って生まれたものは確かに大きいんですけど、それ以上に良き兄貴肌ではないですが、過信せずに真摯に取り組める。それで優しいところは凄いところだと思います」と人としての一面も光るものがあると、話した。

 将来はプロ野球選手だという小川。実力のみならず、人柄もスカウトに見られることを考えれば、小川はどちらもしっかり兼ね備えているといっていいだろう。あとは公式戦の場で3年間どれだけアピールする機会をつかむことができるのか。

「現状に満足することなくやっていきたいです」

 日光市に全校生徒162人の小さな中学校から生まれた向上心に飢えた怪物の物語は、高校へ移っていく。

(記事:田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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