中京大中京が夏秋共に県制覇!愛知県高校野球の2020年3大ニュース
今年は、新型コロナウイルスの感染拡大防止ということで、春のセンバツ大会、春季地区予選~県大会、さらには夏の選手権大会などの大会が軒並み中止となった。
そうした新型コロナウイルスの感染拡大に関してのニュースは避けられないというのは今年の現実である。それらのことを前提としての愛知県3大ニュース選定となった。
新型コロナ拡大防止で活動自粛の中、知多翔洋などが中心となって、「愛知県高校野球選手会」ミーティングをオンラインで実施
Zoomでのミーティングの様子 ※写真提供=豊野高校野球部
新型コロナの影響で2月下旬に政府から休校要請が出され、さらに4月になって緊急事態宣言が発せられるにあたり、ほとんどの部活動が停止・自粛となった。そんな中で、県内では知多翔洋がホスト校となり音頭を取って豊野、岩津、富田、軟式の緑の5校野球部で、「今、自分たちに何が出来るのか」ということをテーマに選手たちがオンラインを通じて話し合った。
これは常々選手たちに対して、「何のために高校野球をやっているのか」ということをテーマとして考えさせているという知多翔洋の伊藤 仁監督の発案によって、練習試合などでも交流のある学校に声をかけて実現したものだった。
「もしかしたら、突拍子もない意見も出てきてしまうのではないかと心配もあったけれども、みんな極めて前向きな意見を出してくれて、これまで以上に高校野球に対する取り組みの意識が高くなってきて、さらに姿勢が違ってきたのではないかと感じた」
と、その成果はあったと感じていた。
ともすれば勝利至上主義で、勝った負けたという結果だけにその評価が偏ってしまいがちな高校野球。もちろん、勝負事であり、勝利を目指していくという姿勢は不可欠なものではあるが、それ以前に部活動の一つとして教育の一環という立ち位置の中で、選手たちが社会などを見つめながらも高校生という立場で自分たちで考えていくことに意義があった。
今の状況下で何が出来るのかということを自分たちの言葉で他校の選手たちと話し合える機会を作ったということに価値があったのだ。
インターハイの中止がいち早く発表され、高校野球の夏の大会がまだどうなるのかわからないということで、「なぜ、高校野球だけは特別なんだ」ということもネットなどでも意見されていた時期でもあった。そんなタイミングの中で話し合われたことも、「なぜ高校野球をやっていくのか」ということを考える意味にもなっていただけに、その効果は大きかった。
コロナで夏の選手権大会が中止となっていった中で、愛知県高野連が一早く代替え大会の開催を公表
中京大中京・高橋宏斗
5月20日に日本高校野球連盟から夏の選手権大会の開催中止発表がされた。その一方で、各都道府県で独自の大会を開催することは構わないという通達も出されていたが、それを受けたかのように愛知県高校野球連盟は一早く独自大会の開催を発表した。とともに、加盟各校にも早々に、「愛知県では独自大会を開催します」という通達を出した。
そのことで、各校は甲子園を目指す大会がなくなったことに落胆しつつも、すぐに切り替えることが出来た。3年生にとっては高校野球に区切りをつけられる大会が開催出来たことに対しても各校の指導者たちは感謝の気持ちを表した。
東京都なども早くから独自大会の開催の意向を発していたが、全国各地の県(道府)高校野球連盟は、それぞれの事情もあり、開催を躊躇したり、決断しかねているところもあった。そうした中で、愛知県の素早い反応と、具体的な開催案の提出は評価された。
今回のコロナ禍では、日本全国の行政機関でもその対応と決断のスピードが評価されていた中で、愛知県高野連のスピード感と対応力は、逡巡していた他の高野連の背中を押す要素にもなっていったはずだ。多くの地区で、参考材料ということにもなった。
大会そのものも全国でも早いタイミングで開幕し7月の最初の土曜日から、土日に開催。今年の7月は週末に訪れた梅雨前線の停滞などで中止も相次ぎ、大会日程がずれ込みながらも、最終的には大会終了が1週間後ろ倒しになってしまったものの、打ち切ることなく無事終了。
さらには、日本高野連が開催したセンバツ代表校に与えられていた甲子園交流試合にも中京大中京は独自大会でも優勝して、出場することが出来た。目標としていた公式戦無敗を達成した。
「こうした(コロナ禍という厳しい)環境の中で、それでもやれることを、どうしたら実現出来るのかということを考慮しながら前を向いて実現させていこう」
そんな姿勢を貫けたことも、高校野球を見守る多くの人たちに勇気を与えた。
一般観客も入れての開催となった中での秋季県大会、中京大中京が2年連続優勝を果たす
中京大中京・畔柳 亨丞
夏の独自大会を実現成功させた県高野連は、秋季県大会も全国に先駆けて有観客開催とした。原則としては、県大会からで2000人を目安としてスタンドの許容キャパシティの半分までという条件での入場可能とした。そうした対応に保護者や関係者はもちろん、多くの高校野球ファンも喜んだ。
こうして開催された愛知県大会。各校ともに必ずしも夏休みの練習が十分ではないという状況下ではあったが、例年通り5地区の1位校を第1シードとして組み合わせ抽選が行われた。前評判では名古屋地区1位の享栄が高かったが、準々決勝で東邦が下して、そのまま決勝進出。その東邦を中京大中京が下して2年連続優勝となった。
準決勝では中京大中京と至学館、東邦と中部大春日丘という好カードとなり、会場となった[stadium]小牧市民球場[/stadium]は多くの人が訪れて外野も開放するといういつもの光景に近い形で行われた。試合も熱戦となったが、クラスターの発生などの事故やトラブルもなく、今後への大きな指針にもなったといっていいであろう。
この成功が、来季への糧になっていくことを願ってやまない。
(記事=手束 仁)