Column

共に新ユニフォームで作った新しい歴史と伝統を築いた明治神宮大会決勝

2019.11.22

 今年で50回目の記念大会となった明治神宮野球大会。第4回大会から設けられた高校の部は、秋季地区大会の優勝校が集結するようになって20年近くになる。近年では、翌春のセンバツ大会の前哨戦という位置付けもすっかり定着してきた。

アゲインのリフレッシュユニフォーム

共に新ユニフォームで作った新しい歴史と伝統を築いた明治神宮大会決勝 | 高校野球ドットコム
健大高崎のユニフォームの変化

 今大会は東海地区代表の中京大中京と関東地区代表の高崎健康福祉大高崎(通称健大高崎)との伝統校と新鋭校との決勝となった。実はこの両校、どちらも今年になって、ユニフォームのデザインを変更したという共通項もあった。しかも、共に前ユニフォームのデザインに戻したというものであり、アゲインのリフレッシュユニフォームでどちらが新しい歴史を築いていくのかというところも興味深い戦いだった。
 試合は、初回に先制した中京大中京が、一時はリードを許すものの、序盤ですぐに取り返して逆転し4対3で勝利。令和最初の明治神宮大会王者となった。

 健大高崎の青栁博文監督は、「スコア以上に力の差を感じる内容だった」と完敗を認めた。
 夏7回春4回の全国制覇数と甲子園通算勝利数は日本一を誇る中京大中京である。ところが、意外にも明治神宮大会は出場3回目での初優勝となった。チームを率いる高橋源一郎監督は、就任10年目での全国優勝を果たしたことになったのだが、就任当初は甲子園出場からも少し遠ざかっていたということもあり、「ここまでの10年は長かった」と感慨深げに振り返った。

 今大会は、前評判も高かったのだが、投打のバランスも良く、攻守に質の高さを見せての優勝だった。最速148キロの高橋宏斗投手の存在が目立つが、伝統の守備力は非常にレベルが高い。人工芝で強い打球が飛び交う中で、相手の守りには失策を誘発する打球があったが、中京大中京はほとんど守りで崩れることがなかったのも勝因といっていいであろう。

[page_break: 原点に戻る]

原点に戻る

共に新ユニフォームで作った新しい歴史と伝統を築いた明治神宮大会決勝 | 高校野球ドットコム
中京大中京のユニフォームの変化

 2009年夏に堂林翔太投手(広島)らを擁して全国制覇を果たしているが、その時の筆記体で「Chukyo」と表記されていた胸文字のユニフォームは一新されている。というよりも、この夏に再変更したユニフォームは実はかつて中京が黄金時代を形成していた昭和の時代のスタイルに近い。

 立て襟で白地に力強いブロック体で「CHUKYO」の文字に、かつての3連覇を示す紺地に白の3本線のストッキングに戻したと言ってもいい。もっとも、肩口の校章は、現在の梅の花弁の上に五大陸の地球をデザインした「C」マークを載せたものになっていた。このユニフォームに変更したのは今年の夏からだった。

 「令和時代になって、昭和時代の‟強い中京”を再現させよう」
そんな意図もあったという。
 ただ夏は、センバツ優勝校の東邦が序盤で敗退したこともあって、大会中盤からは本命視されながら、準決勝でに敗れてしまった。その負けをバネにして、新チームがスタートした時から、印出太一主将を中心として、「ボクたちは、力のないチームではない。だから目標は、県大会優勝や東海大会優勝ではなく、明治神宮大会優勝で秋の日本一になろう」と大きな目標を掲げた。

 そして、まさに有言実行。その言葉通りに、秋の日本一に輝いた。高橋監督も、「選手たちの頑張りは素晴らしい。よくやったと思います。ただ、センバツへ向けてはもう一度頭を整理して、冬の間にどんな点を補強していくのがいいのか、春の戦いへ向けてもう一度準備していきたいと思う」と、次の目標へ向けていく意識もはっきりと述べていた。

 実は、夏の負けをバネにしていったということで言えば健大高崎も同じである。この夏の健大高崎はライバル前橋育英と共に2強としてシード校だったが、初戦で高崎商科大に敗退。その敗戦を一つの切っ掛けに、「原点に戻ろう」という意識確認もあって、青のタテジマはそのままだが、胸文字が「健大高崎」と漢字表記だったものから、初出場した当初の「KENDAI」に戻したということである。

 こうして、令和最初の明治神宮大会は、昭和の強豪校と平成の躍進校が、共にユニフォームデザインの以前のスタイルに戻したという形で決勝を戦い、中京大中京が制した。

「古いOBの方やオールドファン、古くから応援してくれている人たちにとっては、このユニフォームには愛着とプライドもあると思います。その期待に応えることができてよかった」
 そう思いを語る高橋監督。自身の現役時代には主将として筆記体ユニフォームでニュー中京として初めて甲子園に出場してセンバツ準優勝を果たしている。そして監督として初めて挑むセンバツとなる来春。幾多の先輩たちが築いた歴史を背負うユニフォームでさらなる新たな伝統を作り上げていく覚悟である。

記事=手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.08

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.07

【鹿児島】神村学園は昨秋4強の鶴丸と初戦で対戦<NHK旗組み合わせ>

2024.05.07

【山陰】益田東と米子松蔭、鳥取城北が石見智翠館と対戦<春季大会組み合わせ>

2024.05.07

【熊本】九州学院が文徳を破って22年ぶり3回目の優勝<RKK旗>

2024.05.07

【北海道】函館大有斗、武修館などが初戦を突破<春季全道大会支部予選>

2024.05.08

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.06

【2024年夏 全国地方大会シード校一覧】現在27地区が決定!

2024.05.02

春の神奈川準決勝・東海大相模vs.横浜の黄金カード実現! 戦力徹底分析、試合展開大胆予想!

2024.05.02

【茨城】常総学院、鹿島学園、水戸一、つくば秀英が4強入り<春季県大会>

2024.05.02

激戦必至の春季千葉準決勝!関東大会出場をかけた2試合の見所を徹底紹介!

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.21

【兵庫】須磨翔風がコールドで8強入り<春季県大会>