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関東大会に出場する4校の現在の戦力は?春季埼玉県大会を総括!【前編】

2019.05.17

 浦和学院花咲徳栄が決勝でぶつかり浦和学院が勝つ。これがここ数年春季大会の定番であったが、今年は違った。

 昨秋同様に花咲徳栄浦和学院が早期敗退し、最終的には昨秋に続き春日部共栄が15年ぶりの優勝を飾ったが、これは波乱含みの今期を物語っていると言っていいであろう。今大会上位に残ったチームを中心とし、夏を踏まえつつ振り返っていきたい。

脱・村田が課題の春日部共栄と収穫の春となった浦和実

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春日部共栄 エース・村田賢一

 まず、優勝した春日部共栄は、センバツの大敗ショックもあったか序盤こそ打線が低調であったが、その分エース村田賢一(3年)が踏ん張った。

 すると徐々に打線も復調し準決勝、決勝では3本のホームランが飛び出すなど、本来チームの看板である打線が大会終盤になり活発になり始めたのは、関東大会や今後へ向け大きい。ただし、課題がないわけではない。とにかく、投手陣だ。

 準決勝、決勝こそ他の投手が登板したが、ベスト8までは今大会もエース村田に頼りきりで、村田が結局すべてを投げ切ってしまった。唯一準決勝で武藤瑛徳(3年)が好投したのは救いだが、果たして彼に夏の大会序盤を任すことができるかというと未知数であり、その他の投手は結果を残せなかった。

 実際、村田が登板しない時は、村田が4番を打っていることもあり、平尾柊翔(2年)か森飛翼(3年)が外れる。打線の迫力がなくなることもあるが、いずれにせよ、村田におんぶに抱っこでは夏の大会は乗り切れない。

 一刻も早く村田以降の2番手投手を見出すことが今後への課題となるであろう。

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豆田泰志(浦和実)

 一方、準優勝に終わった浦和実業だが、彼らのほうが、実りの多い春であったと言えるかもしれない。

 豆田泰志(2年)、三田隼輔(3年)の二枚看板を擁し既に投手力は充実している浦和実業の課題は攻撃力であった。

 今大会も決勝まで打線は爆発せず、それでも持ち味である試合巧者ぶりを発揮し少ないチャンスを確実に物に勝ち上がってきた。だが、決勝ではエース村田以外からとはいえ、二けた安打を放つなど、徐々に打線につながりが出てきたことは収穫であろう。

 投手陣も、元々インコースへの制球力とボールの伸びが売りであった豆田が、昨秋から確実にレベルアップし、ボールの力は確実に増している。問題は、エース三田であろう。

 昨秋と比べるとまだ本来の投球とは言えない。豆田はまだ2年生であり、彼にチームの全てを託すのはやや酷だ。それだけに関東大会もそうだが、夏に向けどれだけエースが本来の調子を取り戻すかが今後の鍵となるであろう。

 何よりも春初めて決勝へ進出し関東を経験できる財産を夏にどう生かすかは彼らの今後にかかっている。

[page_break:経験者を中心にまとまりある山村学園、県内屈指の投手陣を誇った東農大三]

経験者を中心にまとまりある山村学園、県内屈指の投手陣を誇った東農大三

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和田朋也(山村学園)

 絶対的なエース和田朋也(3年)を擁する3位の山村学園は、同じく絶対エース村田を擁する春日部共栄と似ている部分もあるが、山村学園は1年生の小泉裕貴、左腕・河部直樹(3年)、右の伊織丈一郎(3年)と和田以外の投手をなるべく使い今大会を勝ち上がった。

 特に負ければノーシードという初戦の秀明英光戦で彼ら3投手のみで厳しい試合を勝ち上がれたことは、夏やその後のことを考えても財産になるであろう。

 打線は旧チームと比べるとやや迫力不足だが、昨夏の経験者である横田修大(3年)や櫻澤一哉(3年)を中心に、主砲・橋本大樹(3年)、小林匠(3年)などまとまりはある。

 いずれにせよ、1年夏から投げてきた和田もラストイヤーとなり期する所はあるはずだ。山村学園は攻撃面でバント過多になる傾向があるだけに、とにかくその癖を夏までに脱却することができれば、上位進出も見えてくるであろう。

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飯島一徹(東農大三)

 今大会4位に終わったが、飯島一徹(3年)、井口真之介(3年)と埼玉で今大会NO.1の投手陣を有する東農大三は、今年混戦の埼玉を象徴する存在である。昨秋決勝進出したことで、今大会をAシードで迎えたのだが、最激戦ブロックに入りその真価が問われた。

 初戦の大宮東戦で大宮東の執拗な粘りに遭い0対0が続いたが、終盤突き放し3対0で何とか物にすると、続く市立川越戦も5対3で接戦を制する。

 そして迎えたベスト8の花咲徳栄戦が今大会のハイライトとなった。今大会NO.1右腕である飯島が、昨夏の甲子園組4人を擁し打線は既に全国区である花咲徳栄に対し、真っ向からぶつかる。飯島は昨秋の時点で145kmは計測されていたが、一冬を越しさらにスケールアップした。

 アベレージで140km、MAX145kmを計測し球質も良く、しかもツーシーム系も多投し的を絞らせない。さらに、スライダー、スプリットのキレも良く、何よりバランスの良いフォームから投げ下ろすので、四球も少なく相手として非常に厄介だ。

 それでもそこは強打の花咲徳栄、飯島から8安打(内4本は長打)で5点を奪うのだが、この日は東農大三打線が奮起した。相手の4失策にも助けられたが、花咲徳栄を上回る11安打を放ち7点を奪う大金星を挙げた。

 そんな東農大三だが、気になる点が2点ある。まず一つ目は攻撃面でやや動き過ぎ、満塁などでスクイズやエンドランを仕掛けることも多いが成功率が上がらない点だ。自分達の野球を頑なに遂行するのは結構なことだが、これでは相手が嫌がる野球にならない。

 関東大会へ向けて早急に精度を上げる必要がある。もう一点は投手力がメインのチームであるにもかかわらず内野守備に安定感がないことだ。

 準決勝、3位決定戦でモチベーションを保つのが難しい状況であったが、それを差し引いても3位決定戦での5失策は多過ぎる。外野守備はそれなりに高いレベルにあるだけに、夏、手遅れになる前に早急に手を打ちたい所であろう。

前編はここまで。後編では早期敗退したチームの中から夏に番狂わせを起こす可能性を秘めた逸材たちを一緒に紹介していく。

文=南 英博

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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