高橋 周平選手 (東海大甲府)

寸評

来年のドラフトで早くも上位候補とリストアップされているのが東海大甲府の高橋周平だ。 日本ハムの山田ＧＭは「来年の上位候補ですよ」と絶賛。他球団のスカウトも「上位候補」と口を揃えている。 筆者の高橋に対する評価はスカウト同様、上位指名候補である。 彼を見たのは今年の関東大会・日大三戦であった。一目見て「来年のドラフト上位候補に入る選手だな」と感じた。 180センチ83センチの体躯の良さ、存在感、バランスの良さ、打撃技術の高さ、スイングスピードの速さはずば抜けていた。この後、オリックスにドラフト１位指名された後藤 駿太を見たが、後藤と比較しても、上だと感じた。おそらく来年にはさらなる注目度を浴びるはず。ぜひこの機会に高橋 周平はどんな選手であるかを覚えてもらいたい。 (打撃) この選手が前評判通りの選手だということは一球で分かった。 日大三の山崎が投じた高めの速球を思い切り振りぬき、痛烈なファール。その打球の速さが尋常じゃなかった。そして2-1から4球目。高めの直球を振りぬき、ライト前へ痛烈なヒット。そして二打席目。今度は吉永から低めの直球を振りぬき、センターへ痛烈な打球。打球が速すぎてセンターの平岩が追いつけず、あっという間にフェンス前へ転がった。あっさりと二塁打。4打数2安打だったが、彼のポテンシャルの高さは十分に堪能した。 　打撃フォームを振り返るとスクエアスタンスで立ち、グリップを高めに置いて、背筋を伸ばして構えている。 投手の足が着地したところから始動を仕掛けていき、足を回しこむように上げていき、インステップしていく。 彼のトップの動作は独特で、一旦、グリップを引き上げてから振り出していくスタイル。上から強く叩く意識がされており、捉えた打球は火を噴くような打球を放つ。また踏み込みが強く、足元をしっかりぶれずに振り抜くことができている。 スイングの速さ、打球の速さは2年生の段階では群を抜いている。既に高校通算27本塁打を放っているが、彼は長距離打者ではなく、外野の間を抜くことを身上とした、中距離打者タイプ。打撃フォーム自体が上から強く叩いて、射抜くようなスイングなので、長距離打者に見られるような打球を運ぶスイングではない。そのため打球の弾道はそれほど高くならず、鋭いライナーを飛ばしていく選手だ。 まとめると打撃フォームに全く粗さというのがなく、高めのボールに対してもヘッドが下がらず、肘を畳んで振り抜くことができているし、低めのボールに対してはうまく膝を使って振り抜くことができている。打てるポイントが広い選手なのだ。 ただこの選手、あまり考えて打つ選手ではなく、来た球を反応する天才肌タイプ。その所作は打席の動きを見ていただければ分かると思う。この選手は打席の間でも結構動く選手で、バッターボックスの白線を平気で踏む。あまり物事を深く考える選手ではないように見えるのだ。あまり考えていないように見えるが、打つことだけにはちゃっかりしており、自分の狙い球じゃない球は平然と見逃す。そして打てる球だと思ったら、フルスイング。そんな選手だ。 気になったのは縦の変化球の対応。チェンジアップを思い切り空振りしており、空振り三振に倒れた。ただ彼の打撃技術を見る限り、全く対応できないと思わない。来た球に対応するため何でもかんでも打ちにいくことが問題なのだ。狙い球を絞り、しっかりとボールに対応できれば、高校レベルの投手は造作なく打ち崩すことができる選手だろう。 (守備) 180センチの大型であるが、打球に対する反応は良く、前の打球を捌くことはできており、結構動ける選手だ。元々サードなので、上のレベルではサードのコンバートも有り得るが、まずはショートの守備を究めていってもらいたい。そして地肩はかなり強く、来年の高校生ではトップクラス。守備力も高く、攻守ともにまとまっている。

将来の可能性

いろんな2年生のショートをみてきたが、ポテンシャルなら間違いなくＮＯ．1だ。打球の速さ、柔軟な打撃フォーム、身体能力の高さ、まさにプロのスカウトが好むような選手だろう。間違いなく高卒プロの素材で、大学を経由することなく、ぜひプロの門をたたいてほしい選手だ。 気になる部分がひとつだけある。それは深く考えないことだ。大学・社会人のレベルになってくると様々なタイプの投手と対戦する。高校時代に比べて厄介な投手から打っていかないといけないわけだ。そのため今のような野球観だと通用しないからもしれない。深く考えない。つまり頭の中で考えすぎて悪循環に陥るような選手ではないので、チャンスでは今のような思考が大事かもしれない。 実力を発揮するためにも打席に入る前に用意周到に準備をする工夫が必要ではないだろうか。自分のやるべきことをしっかりと理解した上に打席に入り、あとは彼らしい積極果敢な打撃をしていけば、高校レベルでは手が付けられない選手になるのではないだろうか。 実力はスカウトが認めている。あとは甲子園に出場するだけ。そこで自分のプレーを見せつけることができれば、今までと比べものにならないぐらい注目度を浴びる選手ではないだろうか。