試合レポート

日大豊山vs立正大立正

2015.07.10

日大豊山のエース・吉村の力投にバックが応える!9回に同点、延長10回に勝ち越し、激戦を制する!

 初戦で負けるわけにはいかない。
そんな日大豊山の意地が感じられる一戦であった。日大豊山の初戦の相手は、立正大立正。多くの新入部員が入ったことで、戦力の底上げを果たした。また助監督に日大三の2001年優勝メンバーの内田和也氏がおり、勢いのあるチームとなっている。

 立正大立正の先発・村上智哉(3年)は高レベルな右サイドであった。インステップ気味の踏み込みから投げ込む投じる速球は120キロ後半~130キロ前半(最速132キロ)を計測。コーナーワークで勝負する投手で、横滑りするスライダーはブレーキが効いていて、多くの右打者が空振りをしていた。右打者にとってはかなり厄介な投手なのである。

 
 しかし日大豊山のエース・吉村貢司郎(3年)も好投を見せる。吉村は今年の東京都では最も本格派右腕らしい投手。真っ向から振り下ろす直球は、常時130キロ後半~140キロ前半を計測。春では何球程度だったが、この日は最速144キロを2球計測するなど、常時140キロ台の速球を投げるまでにスピードアップ。

 今年の東京都の高校生で、コンスタントに140キロ台を出す投手は、田村孝之介日大三)、小玉和樹佼成学園)しかいない。野手を兼任する田村よりもずっと本物の投手で、小玉以上の縦の角度がある。何より投球フォームが良く、ワインドアップから始動して、バランス良く足を上げて、下半身主導の体重移動から左腕のグラブを斜めに伸ばして開きを抑え、内回りの旋回をしていきながら、しっかりと胸を張り、打者寄りでリリースすることができるバランスが取れたフォーム。将来性は今年の東京都ではトップクラスの素質を秘めた逸材である。

 が、4回裏、立正大立正の3番山崎懸(3年)が高めに入った変化球を捉えられ、右中間を破る二塁打。その後、4番吉成隆大(2年)の犠打で一死三塁となって、5番阿部勝直(3年)のスクイズで先制を許す。

 しかしなんとしてもエースを援護したい日大豊山は、5回表、二死二塁から2番小林陽一郎(3年)が右中間を破る三塁打を放ち、同点に追いつく。
 
 5回まで1対1で折り返し、6回裏、吉村は二死までこぎつけたが、4番吉成が四球で出塁。吉成はすかさず盗塁を決め、二死二塁とした後、5番吉田が外角速球を打ち返し、右前適時打。立正大立正が勝ち越しに成功する。


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 後がない日大豊山は9回表、8番高木が死球で出塁。その後、バッテリーミスで二死二塁で、打席にまわったのはここまで2安打の小林。このままでは夏は終わらないという心境で入った小林が捉えた打球はセカンドのグラブをかすめながらも右前へ転がり、同点適時打。吉村は9回裏、三者凡退。ここまで12奪三振と圧巻の投球を見せていた。

 そして10回表、3番髙橋 優介(3年)のレフト線へ三塁打を放ち、そして4番稲垣航聖(3年)が四球で歩き、5番相川直輝(3年)の中犠飛で1点を勝ち越し。6番吉村の犠打で一死二塁となって、7番秋庭 蓮(2年)の三塁線の内野安打。二塁走者の稲垣は迷わず本塁へ突っ込み、バックホームするも、間に合わず、日大豊山が4対2と点差を広げ、貴重な追加点を挙げた。

 その裏、吉村貢司郎は、10回になっても139キロを計測するなど、2三振を奪い、2失点14奪三振完投勝利を挙げた。
 吉村はこの春、強力打線を誇る都立日野に打ち込まれコールド負けを味わった。あの試合では走者を出してからが粘り強かった。不用意にストレートでストライクを取りにいくことはなく、120キロ前後のスライダーで曲りが大きいもの、小さいもの、120キロ台のフォークを織り交ぜながら、横と縦の変化を使う意識が見られた。スピード以外の部分もレベルアップを遂げてきたのだ。春の負けが吉村を変えているのは間違いない。

 また打線も、9回に同点に追いついたように粘り強さが出てきた。特に変わったのは2番小林。182センチ78キロと恵まれた体格をした強打者。第2打席でスライダーで空振り三振に倒れたが、その後は右方向に意識を置いて、右中間を破る三塁打、ライト線へ二塁打、右前安打と本塁打が出ればサイクル安打という大当たりで、打撃の幅が春と比べると着実に広がった。小林のような打撃ができる選手が一人でも多くなれば、さらに強固なチームになっていくだろう。

 苦しい試合を乗り切った日大豊山。この試合が彼らにとってステップアップする機会になることを大いに期待したい。

(文=河嶋宗一


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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