都立東大和vs東京
東京、4点差を8回に追いついたが、東大和が最後はサヨナラ犠飛
三井一樹(都立東大和)
雨で大幅に日程がズレこんでしまった今年の秋季東京都大会。この日も、予定していた第1試合は、雨が予報よりも長く降り続いてしまい、グラウンド整備も追いつかないということで中止となった。それでも、日程が押し迫ってきており、何とか1試合でも消化しておかなくては…、という思いもあって、係りの役員や、補助の生徒たちの尽力で、第2試合は何とか試合開始を13時45分にまでずれ込ませながらも、開始にこぎつけた。[stadium]上柚木公園[/stadium]球場が比較的水はけがいいいということも幸いした。
両校とも、長い待機を余儀なくされたが、その間のモチベーションの維持も大変であっただろうと察せられる。
ラグビーの強豪校として知られている東京。野球も多摩川河川敷グラウンドを共有して刺激を受けながら、47人の部員(1年生=23人、2年生=24人)が汗を流している。この秋はブロック1回戦では苦戦しながらも都立四商に逆転勝ちして勢いづいてここまで進出してきた。また、都立東大和も会場校としての責務を果たしながらブロックを勝ち上がり、都大会出も初戦は保谷と激しい展開の試合を何とか制して2回戦に進出してきている。ともに、勢いがあるチーム同士といっていいであろう。
初回、ともに二死から失策の走者が出たが、東京はその後四球を選んだものの得点にはならなかった。一方、東大和はそこで、4番岡君が左翼線に落とした三塁打を放って先制点を挙げた。東大和は2回にも、一死から7番森君が左中間を破る三塁打で出ると、続く三井君の内野ゴロの間に本塁に帰って2点目。東大和リードで試合は進んでいった。
5回にも東大和は、9番小林 悠哉君が三遊間を破ると、倉石君がしっかりと送って進め、さらに暴投で三進。内野ゴロの間に本塁を狙ったもののアウトとなるが、続く3番石塚君が左中間を割る三塁打で追加点を挙げ、岡君も中前打で三走を帰しこの回2点で4対0とする。
東大和の左腕三井君の真上から投げ下ろしてくるタテのボールを打たされていた東京打線は、6回まで内野ゴロ10本で3安打しか打てていなかった。試合は、東大和ペースで進んでいっていた。
ところが7回、先頭の石森君が遊撃内野安打で出塁すると、小西君も左前打で続く。さらに8番宗像君が中越二塁打して1点を返してなおも二三塁。代打濵田君の一打は失策を誘い三走が帰り、一三塁。一番塚本君は遊直で倒れたものの、2番手塚君は左犠飛を放って1点差とする。この回の攻撃前に、東京の松下浩志監督は、「自分たちの打撃がやれていないので、自分たちの野球を思い出そう」という指示を出したという。それが功を奏して選手たちは、即対応してていった結果だった。
勢いづいた東京は8回にも先頭の3番佐藤 晴斗君が左前へ落すと、続く加藤 歩気君が左越二塁打して、一塁走者が帰り、ついに同点とした。さらに、バント失策もあって、東京のチャンスは広がったものの、ここは東大和の2人目小川 大晴君が踏ん張った。
同点で迎えた9回、東京の攻撃は3者凡退で終わるがその裏、東大和は先頭の9番小林 勇登君が右前打すると、きっちり送って一死二塁。平林君は四球で塁を埋める。そして、石坂君の三球目の時に暴投で二三塁となると、バッテリーはあえて無理に勝負せず満塁とした。ここで4番岡君だったが、ボール3からストライクが2つ入ってフルカウント。勝負の1球を捉えた岡君の打球は左飛となり、三塁走者の小林悠哉君が転がり込むように本塁へ滑り込んでサヨナラとなった。
東大和は1回戦もそうだったが、リードして追いつかれながらも、最後は何とか振り切るという戦いで16強となる3回戦進出を掴み取った。福島靖監督は、「1点ずつ取ってつないで、という戦い方は出来たかとは思います。不安で不安でしょうがなかった二遊間も、良く守ってくれて、大きなミスはなかったのもよかった」と、1回戦同様守りきれたことを評価した。
実は、この日から学校はテスト期間に入っていたのだが、それを纐纈としてもらい、その後に追試が受けられるということになったという。そうした学校側の協力にも感謝していたが、「これで変な試合したら、申し訳ないですけれども、みんな真面目な子たちなので、自分のやるべきことをしっかりとやっていかれると思います」と、選手たちの日常を評価していた。
また、選手たちの心技の成長に関しては、夏休みに行っている恒例の大島合宿が大きかったという。船中泊も含めて、5泊6日というスケジュールで、人数の少ない大島の選手たちが一つひとつを徹底していくことに刺激を受けて、40人いる自分たちも一つひとつを自分の仕事としてやっていかなくてはいけないということを強く認識させられたという。そして、その精神的な成長が、こうして厳しい試合を競り勝っていかれるようにもなってきたのだと福島監督は評価していた。
8回に4点差を追いつきながらも、ついぞリードを奪いきれずサヨナラ負けを喫してしまった東京は、8回に同点とした後、なおも無死一三塁と逆転旗を迎えながら得点しきれなかったことを悔いた。「8回に、同点とした後にまだチャンスが続いていたのですが、そこを取り切りなかったのが敗因ですね。流れを呼び込めきれなかった」と、松下監督は悔いていた。それでも、「また、春までに作り直していきます」と、気持ちを切り替えていた。
(文=手束 仁)
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