試合レポート

東海大菅生vs國學院久我山

2021.08.03

3ランに好救援! 若林監督「今日は千田劇場」、東海大菅生4年ぶり4回目の優勝

 センバツベスト8の東海大菅生は西の横綱だ。対する國學院久我山は、秋は12点リードしながら逆転負けをした屈辱をバネにチームを再整備して、夏は優勝を狙えるチームに仕上げてきた。

 東海大菅生は左腕の本田峻也國學院久我山は小柄ながら強気の投球が光る高橋風太というエースが先発のマウンドに立った。

 決勝戦の緊張からか、本田の立ち上がりがおかしい。福原聖矢捕手の構えるミットとは違う方向にボールが行き、安定感がない。そこを國學院久我山が突く。

 1回表國學院久我山は1番・内山凜が中前安打で出塁。ワイルドピッチで二塁、2番・齋藤誠賢の犠打で三塁に進む。3番・田村優樹の初球、福原の三塁への牽制がとんでもない暴投になり、國學院久我山が1点を先制した。

 さらに4番・原田大翔の二塁打に、エースながら打撃もいい5番・高橋の中前安打で1点を追加した。「本田があんなになるとは思っていなかった」と東海大菅生の若林弘泰監督が語る本田の乱調であった。

 それでもその裏の東海大菅生は、2番・福原が三失で二塁まで進み、3番・堀町沖永の中前安打で俊足を飛ばして一気に生還し、追い上げる。しかし3回表に、死球で出塁した2番・齊藤が今大会の國學院久我山の持ち味であるバントなどで三塁に進み、5番・高橋の中前安打で1点を追加した。

 ただこの日は高橋自身が、「ストレートが走っていなかったので、変化球に頼ってしまいました」と言う状態。これを「外の見極め」を若林監督から指示されていた東海大菅生は、変化球に狙いを定め、猛攻に転じる。

 3回裏東海大菅生は、中前安打の福原が盗塁で二塁に進み、3番・堀町の左中間に放った打球で、中堅手と左翼手がぶつかる形になって打球は転々と転がり、堀町は一気に生還。2点ランニングホームランになった。

 4回表國學院久我山は、この回先頭の7番・上田太陽が四球で出塁し、8番・藤原健祐は当然のようにバント。打球はそれほど上がったわけではないが、瞬発力のある捕手の福原が飛びついて好捕。國學院久我山の持ち味を封じた。


 その裏東海大菅生は、國學院久我山の高橋の変化球を狙い打つ。一死後8番・金谷 竜汰、9番・本田の連打で一、三塁とし、打席には1番・千田光一郎。センバツで本塁打を放つなど、長打力のある1番打者である千田は、「ここで打てば勝ち越しで試合も乗れる」と考えて打席に立った千田は、初球を叩くと、打球はレフトスタンドに突き刺さる3ランになった。「スライダーが真ん中に行ったところを打たれました」と高橋は言う。

 この一発で試合の流れは定まった。東海大菅生は、5回裏に5番・岩井大和の二塁打などで1点を追加。8回裏には、6回から登板している内山から左前安打、二盗の福原を、3番・堀町の左前安打でかえし、ダメ押し点を入れた。

 東海大菅生の本田は、徐々に調子を取り戻し、7回から登板した櫻井海理が安定した投球で2イニングを抑え、9回のマウンドは気持ちの強さを買われ、秋季都大会の準決勝以降、抑えを任されている千田が登板。「マウンドに行く時は楽しみで、緊張はしなかったです」と千田。7番から始まる國學院久我山をしっかり3人で抑え、4年ぶり4回目の優勝を決めた。

 今大会気持ちのこもった投球で大会を盛り上げた國學院久我山のエース・高橋は、「優勝しかみていなかったので悔しいです」と語る。それでも秋以降のチームの成長は見事であった。國學院久我山の尾崎直輝監督は、「動じなくなりました。彼らと野球をするのは、楽しみでした」と語る。

 実は尾崎監督と若林監督は、互いに連絡を取り合う間で、コロナ禍で練習試合が困難な中で、東海大菅生と練習試合をしている。「若林監督が手を差し伸べてくれました」と語る。そういう間だけに、「菅生さんには勝ちたい」という思いがある。

 若林監督は尾崎監督について、「いい野球をしています」と、31歳と若い尾崎監督を評価しているだけに、「そう簡単に(甲子園に)行かせてはならない。壁になりたい」と語る。今後、若い尾崎監督が、年長の監督たちにどのような戦いを挑んでいくか。

 日大三の小倉全由監督、早稲田実の和泉実監督ら、ベテランの指揮官が第一線で活動している時に、次代を担う指導者が出現したことは、東京の野球の発展のためにも望ましいことだ。

 甲子園行きを決めた東海大菅生は、センバツの準々決勝で力を発揮できず敗れた悔しさがある。それに昨夏の独自大会では、西東京大会、東西決戦に優勝しながら、大会が中止であったため、甲子園に行けなかった。「先輩たちの分も戦いたいと思います」と榮塁唯主将は力強く語った。

 なおセンバツでも好投、春季大会もエース格として活躍した鈴木泰成は今大会で登板はなく、甲子園のメンバーからも外す方針だという。肘に違和感があって、MRIの診断で、このままでは疲労骨折になるが、今休めば大事にはならい、ということだったという。

 力のある投手は何人いても困らないが、東海大菅生投手陣は、この大会は櫻井の安定ぶりが光るなど、投手陣の駒は揃っている。鈴木泰成には、秋以降の好投を期待したい。

(取材=大島 裕史

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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