試合レポート

神村学園vs国分中央

2020.07.29

3年生21人「ひたむきに」野球やり切る・神村学園

神村学園vs国分中央 | 高校野球ドットコム
優勝し、喜ぶ神村ナイン

 夏の鹿児島の頂点を決める一戦は梅雨明けした夏空の下で、神村学園国分中央が熱戦を繰り広げた。

 先制したのは神村学園。2回裏、二死一二塁で1番・田中大陸(3年)がセンターオーバー三塁打を放って2点を先取した。

 国分中央は直後の3回表、先頭の9番・棈松蒼生がセンター前タイムリーを放つ。二死となったが、3番・吉松颯太主将(3年)が右中間を破るタイムリー二塁打で1点を返した。今大会、地区大会から無失点を続けていた神村学園から初得点をもぎ取った。続く4番・庄村孝人(3年)もセンター前タイムリーを放ち、同点に追いついた。

 その裏、神村学園は先頭の3番・桑原秀侍(3年)がソロホームランを放って打線が活気づく。5番・小浜幹太(3年)から4連打を放つなど、計4点を加点して突き放した。

 5回には犠牲フライで7点目。8回にはケガで欠場していた古川朋樹主将(3年)が代打でタイムリーを放って8点目を挙げた。8回にも集中打を浴びせて4点をダメ押した。

 先発の田中瞬太朗(3年)は4回以降、国分中央打線に追加点を許さず。8、9回は小刻みな継投で3年生投手陣が躍動。最後はエース桑原が締めくくって、昨夏に続く「連覇」を勝ち取った。

 最後の打者を打ち取ると、マウンドのエース桑原らがベンチの古川主将に「早く来い!」とでも言うように手招きした。古川主将が背負われてマウンドに到着するのを待っていたかのように、神村学園ナインが歓喜を爆発させた。甲子園出場を決めた昨夏と同じ、あるいはそれ以上に力強い歓喜の輪ができた。

 「ちゃんと野球をやれ!」
 決勝戦、ベンチから小田大介監督の厳しい檄が何度も飛んだ。チームの大黒柱・古川主将が前日の練習中、打球を捕って着地した瞬間に右ひざが外れる大ケガで欠場を余儀なくされた。勝っても負けても3年生と野球ができるのはこの一戦が最後。甲子園の有無は関係ない。3年生21人全員でひたむきに、最後まで野球をやり切ることにこだわった。

 「古川のために」の想いが前半は力みにつながり、今大会初失点を喫した。「力み」を振り払ったのが3回裏の先頭打者、3番・桑原だった。「チームを勇気づけたかった」と思い切り振り抜き、バックスクリーン右への特大アーチ。「入るとは思わなかった。嬉しかった」と喜ぶ。プロのスカウトも注目する投打の主軸の一振りが、狙い通りチームを勇気づけ、終わってみれば17安打12得点の強打で国分中央を圧倒した。

 代替大会は通常の夏と同じように、学年関係なく力のあるメンバーで挑もうと小田監督は考えていた。だが3年生1人1人と面談する中、古川主将らが「3年生だけで挑みたい」という気持ちに心打たれた。ベンチ入り全員3年生で臨む代わり、ひたむきに一生懸命、これまでやってきた野球を貫くことが条件だった。

 地区大会から決勝戦まで、試合に出る選手はもちろん、ベンチの控えメンバーであっても、手を抜いたプレーや行動に妥協を許さなかった。
8回、ケガの古川主将は代打でタイムリーを打った。「最高の仲間に恵まれ、最高の気持ち」と語る。小田監督との約束通り、3年生だけで鹿児島大会を圧倒的な内容で制した。「高校での日本一は果たせなかったけど、これからの人生で日本一になれる可能性を感じさせた3年生だった」と小田監督は最大の賛辞を3年生21人に送っていた。

(文=政 純一郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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