試合レポート

山村学園vs埼玉栄

2018.05.01

秋に続きプロ注目の米倉を粉砕した山村学園が3季連続準決勝進出!

山村学園vs埼玉栄 | 高校野球ドットコム
山村学園の得点シーン

 山村学園和田朋也(2年)vs埼玉栄米倉貫太(3年)、昨秋の再戦である。プロ注目の米倉が投げるということでスカウトも当然のように[stadium]上尾市民球場[/stadium]に現れたが、彼らの目に米倉の投球がどう映ったか疑問だ。もちろんフォームに欠点は少なく、この日も悪いながらもMAX141kmを投げた。だが、あえて厳しい言い方をさせてもらうと、今後上のレベルで戦う為に大事なものが欠落している気がしてならない。

 試合序盤は互角の展開であった。

 まず1回表、山村学園は米倉の立ち上がりを攻め、先頭の木内輝(3年)がレフト前ヒットを放ち出塁すると、続く横田がきっちりと送り一死二塁とする。ここで3番・野邨祐樹(3年)はレフトへヒット性の打球を放つが、レフトライナーに倒れる。ここでなぜかライナーバックをしなかった二走・木内が戻れず併殺で無得点に終わる。

 対する埼玉栄もその裏、先頭の山川が散水直後でぬかるんでいるピッチャー後方へ高いゴロを放つと、和田は足を取られバランスを崩し内野安打となる。さらに続く海崎雄太(3年)の所で埼玉栄ベンチはバスターを掛けると、これが見事に成功しサードベース上に当たるヒットとなり無死一、二塁とチャンスが広がる。ここで3番・和田(2年)はショートゴロであったが、打球が弱くそれぞれ走者を進め一死二、三塁で4番・鈴木貴大(3年)と絶好の先制機を迎える。だが、鈴木はサードライナーに倒れ三走・山川も還れず併殺と共に同じような形で先制機を逸する。

 

 そして迎えた3回表、あるアクシデントが起こる。この回先頭の和田がセカンドへの内野安打で出塁するが、続く大塚が送れず一死、1番・木内も送れず追い込まれる。埼玉栄バッテリーは当然エンドランの警戒もあり、一塁牽制をする。その時だった。一走・和田が頭から帰塁する際に右肩を突き亜脱臼してしまう。和田は当然治療に入り、一塁には臨時代走が送られる。

 ここからだった。木内はライト前ヒットを放ち一死一、二塁とすると、続く横田はセーフティー気味の犠打で走者を進め二死二、三塁とし、迎える打者は3番・野邨だ。野邨は昨秋米倉から2三振を喫している。この場面気合の入っていた野邨はまず声や仕草で執拗に威圧する。すると、次の瞬間力が入ったのか、それとも抜けたのか米倉の直球がワイルドピッチとなり労せず山村学園に1点が入る。すると、米倉はこれで動揺したのか、野邨に左中間を破る2点タイムリー三塁打を浴びると、続く長谷川にもセンター前タイムリーを浴びる。さらに5番・深田竜二(3年)にもサードへの内野安打を浴びるが、一走・長谷川が三塁憤死し事なきを得る。


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山村学園 和田朋哉選手

 一方、心配された和田の状態だが、応急処置をした状態でマウンドへ向かう。走る時に右腕をほとんど振れない状態ながら「最初力んでいて、肩が外れて、あれでかえって力みがなくなった」
と試合後言ってのけた和田は、その裏の埼玉栄打線を三者凡退に打ち取る。

 これで試合の流れを掴んだ山村学園は、5回表、一死から2番・横田がきっちりと送り二死二塁とすると、またしても野邨がセンター前へタイムリーを放ち4点差とする。

 4点のビハインドを背負った埼玉栄の反撃は5回裏であった。二死から8番・庄司がセンター前ヒットを放つと、続く鶴見駿(3年)が死球でつなぎ二死一、二塁とする。さらに1番・山川もセカンドへの内野安打を放ちチャンスを広げ二死満塁で巧打者海崎を迎える。だが、頼みの海崎が三振に倒れ無得点に終わると、その後は打線がやや淡泊になる。

 一方の山村学園は6回表、一死から櫻澤のセンター前ヒットを放つと二死後、8番・和田がライト越えタイムリー二塁打を放ち5対0とする。山村学園は8回表にも、この回先頭の深田がショートへの内野安打で出塁すると、続く櫻澤のレフトフライをレフトが落球し無死一、二塁とする。7番・小林がきっちりと送り一死二、三塁とすると、またしても和田がライト前2点タイムリーを放ち7点差をつける。

 和田はその裏もきっちりと抑え、結局強打の埼玉栄打線を8回被安打6無失点に抑える。山村学園が米倉から13安打を放つなど埼玉栄をコールドで退け3季連続となる準決勝進出を決めた。


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埼玉栄 米倉貫太選手

 まず、山村学園だが、この日の序盤、犠打失敗が続き、得てして米倉を助けてしまう展開になりかけた。それを救ったのがエース・和田とこの日3安打3打点の主将・野邨であった。特に和田はまだ2年生ながら、1年生の夏、秋、2年春とチームをベスト4へ導き続ける経験値がそうさせるのか、既にチームの大黒柱になりつつありその存在感たるや凄まじいものがある。直球はMAXでも137kmほど、それでも制球力と投球術で打者を翻弄している。

 昨秋からの登板過多が気になるが、この日の亜脱臼後の投打の活躍といい本当にタフな投手だ。打線もプロ注目の米倉を全く問題とせず13安打を放ちあっさりと攻略してみせた。次の浦和学院戦へもし和田が投げられるようであれば面白い展開になるかもしれない。

 一方の埼玉栄、まず打線だが、確かにクリーンアップは迫力がある。この日もあわやという打球を飛ばしてはいた。ここに正捕手渡部壮大(3年)が復帰すればさらに圧力は増すであろう。だが、昨秋に続き和田の術中に嵌ってしまった。特に6回以降の淡泊さはいただけない。夏に向けもう少し状況に応じたバッティングが課題か。

 そして何よりこの日の米倉は残念な出来であった。正確に言うと1年の夏から見続けてきて、こういう彼の姿を見たのは今回が初めてではない。非常に真面目と伝え聞くが、その性格も災いしているかもしれない。もう少し、闘争心を表に出すような部分が欲しい。素材としては申し分ないだけに若生監督もそういう部分が歯痒い思いでいっぱいであろう。とはいえ、もう3年の春が終わった。残るチャンスはあと一回だけだ。この日の1学年下の和田の所作を見て感じるものがあるはずだ。彼が夏までに変われるか、いや変わった姿が見たい。

(取材・写真=南 英博

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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