青山学院vs大森学園
タイブレークの熱戦、青山学院辛抱の勝利
根気強く丁寧な投球を見せた大塚理貴（青山学院）
2年前の夏はベスト8に進出し、その時1年生ながら投手陣の柱であった半田隆人を擁する大森学園と、1次予選から勝ち上がり、1回戦で東京実業を破るなど、勢いに乗る青山学院の対戦。
前評判では大森学園の方が高く、それを反映するように、安打数は大森学園が16本、青山学院が6本と、10本の差をつけリードしたが。タイブレークにもつれ込んだ試合を制したのは、青山学院の方だった。
青山学院の1番打者は投手の大塚理貴。
「ピッチャーとしても、バッターとしても引っ張って行ってもらいたい。それでへばるようなら、それまでの選手なのです」と、青山学院の安藤寧則監督は言う。
1回表青山学院は、その大塚理が中前安打で出塁。2番永嶋吾郎の犠打、4番相良啓太の中前安打で二塁、三塁と進み、5番藤井渉の中前安打で大塚理が生還した。適時打の藤井はジャカルタ日本人学校の出身だ。
その裏大森学園は、左前安打で出塁した2番鈴木悠樹が、3番平井雄大の三ゴロの間に二塁に進み、4番武井陸の右前安打で生還し、あっさり同点に追いついた。
青山学院の大塚理は、ものすごく力のある球を投げるわけではないので、この時点では、大森学園がいつでも攻略できそうな雰囲気であった。
それでも、3回裏に3者連続安打でつかんだ一死満塁で併殺に倒れ、チャンスを潰すなど、塁上を賑わせながら得点を挙げられないうちに、根気強く、丁寧に投げる大塚理のペースになっていった。
6回表青山学院は、左前安打で出塁したこの回先頭の相良が、犠打で二塁に進み、6番石野田颯馬の左前安打で本塁を狙った際、相手の中継ミスもあり、生還。さらに六車謙英の一塁手を強襲する二塁打で、もう1点を追加した。
二塁打を放った佐藤伸平（大森学園）
青山学院が1点リードしているものの、大森学園の反撃の機運も出始めた8回裏、この回先頭の佐藤の右翼手の頭を越えそうな大きな当たりを、青山学院の右翼手六車が、背走してジャンピングキャッチするというスーパープレーを見せた。
青山学院の安藤監督は、「ライトは怪我をしていて、足が相当痛いのですよ。骨には異常がないので出しましたが、あのプレーは涙が出そうになりました」と言う。
こうしたプレーが刺激になったのか、二塁手の相良や遊撃手の石野田らも相次いで好プレーをして、ピンチを切り抜ける。
9回裏に大森学園は、武井の右前安打、半田の左前安打で一死一、三塁とし、藤﨑椋汰の二ゴロの間に武井が還って、9回に追いついた。
土壇場追いつかれた青山学院であるが、安藤監督は、「そんなにうまくいかない。選手は頑張ってくれている」と、意に介さない。
延長タイブレークでは、9番打者から攻撃を始めた青山学院は、2番永嶋の犠飛で1点を物にした。その裏、大塚理が二塁走者を牽制で刺すというプレーもあって、大森学園を無得点に抑え、青山学院が勝利した。
青山学院の安藤監督は、自分たちの打線を、ブルーサンダーならぬブルーヒンダ（貧打）だと、自嘲気味に語った。それでもチームはたくましく成長した。その成長の下支えになっているのが、秋は1次予選の初戦（試合レポート）で敗れた悔しさだという。
各校の監督は春季大会の目標として、夏のシード校になれるベスト16以上に入ることを挙げる。しかし青山学院の安藤監督は、やや複雑な表情を浮かべる。春季大会でシード校になれなかったチームは、夏は打倒シード校を目標に掲げる。
「うちは跳ね返すだけの力はありません。夏は甘くないですからね」と安藤監督。
過去には確かに、シード校になったがために、自分たちの野球ができずに敗れた学校もある。その一方で、シード校になることで、自信になり、それに見合った力をつけたチームもある。いずれにしても、個性的なこのチームの今後の動向は、楽しみである。
一方大森学園の半田投手は、2年前よりはるかに体ががっちりして、球に力もあるようになった。ただ16安打で3点、15残塁では、勝利の女神はなかなか微笑まない。投手力がしっかりしているだけに、夏に向けて、いかに得点を取るかがカギとなる。
（文＝大島裕史）
