試合レポート

橿原学院vs磯城野

2010.07.13

2010年07月12日 佐藤薬品スタジアム  

橿原学院vs磯城野

2010年夏の大会 第92回奈良大会 1回戦

一覧へ戻る


ボールに食らいつく矢野(磯城野)

磯城野の3年生が残したもの。

 このチームに‶何か″が生まれようとしているのが見て取れた。
格上を相手に回して2点を先制したからではない。二邪飛にも関わらず、走塁をやめず、一塁を全力で駆け抜けた1番・矢野。左翼から幾度となく、カバーリングに降りてきた左翼手・横井。彼らの姿に、そう思わずにはいられなかった。決して速くはない。だけれども、彼らの中に貫いていこうというものが見えたのだ。

「やっとそれらしい野球ができるようになってきた。隙を作らず、隙をつく。組織力で戦えるチームということです」。
そう語るのは、磯城野を率いて3回目の夏を迎える生島秀峰監督である。過去に、片桐(斑鳩と統合)や奈良商(現奈良朱雀)という普通の公立校を、県上位のチームにのし上げてきた実績のある指揮官は、敗れたとはいえ、この日見せたナインの姿に、少し手ごたえを感じている。

とはいえ、平成17年に北和女子高と田原本農が統合し、多くが女生徒で占める学校の指導は一筋縄ではいかなかった。何より、選手が集まらない。

なにせ、全校生徒270人のうち、男子生徒は70人程度しかいないのだ。その中から、野球部員を探し当てるとなると、ひと苦労いる。
「中学の一線級でバリバリやっていた選手と言うより、一軍半の選手が多い。中学時代は日の当らなかった選手たちに、『3年間で頑張って、試合に出れるようになろう』って誘ったメンバーで戦っているのが現状です」。

 

そんなチームに対し、生島監督が取り入れたのは、練習を厳しくするということではなかった。まずは、私生活面からの改善に力を入れたと、語る。「だらだらしたところがあったんで、まずは生活面から取り組みました。挨拶、服装、授業態度。人間力をなんとかつけたいと、そういうところからです」。

 

生島監督の指導は、その面においては一切の妥協はしなかった。現2年生は、割と経験者が多く力のある学年だが、生活面に問題がある選手には厳しく接したという。「野球が上手かったら、そんでええんかというのは作りたくなかった。力にある子が抜けるのは、戦力的には苦しいですよ。苦しいんですけどね、心を改めるまでは草むしりしかさせずに、干してきました」。

現3年生のメンバーは人間的によくできたチームになった。生島監督の指導を信じ、私生活面から律してきて、力をつけのだ。「練習試合で出られなくても、よく頑張ってくれた。今の野球部を作ったのは3年生たち。今日の試合は初戦で、試合時間も遅れた中やったけども、2点を先制していいスタート切れたのはやってきたことの成果が出た」と生島監督は言う。

試合は中盤にひっくり返され、結局はコールドで負けてしまったが、格上を相手にしての序盤の戦いぶりはこのチームが目指してきたことの成果であろう。
「2年3カ月でやったここまできた。ちょっとかかりすぎましたけどね。3年生は人間的にしっかりして、2年生が技術的にできていたチームだった。3年生が抜けるのは痛いけど、今、大泣きしているのは2年生なんで、この時間が大事ですよね。技術のあるこの子らが、精神的に鍛えられれば…」。

今大会で磯城野が示した‶何か″は、来年も残る12人のベンチ入りメンバーたちが‶形″に変えてくれるだろう。

(文=氏原 英明


[:addclips]

[:report_ad]

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.05.15

獨協大の新入生に専大松戸の強打の捕手、常総学院のサード、市立船橋のトップバッターが加入! 早くもリーグ戦で活躍中!

2024.05.15

【島根】出雲商-三刀屋、大田-益田東など初戦から好カード<地区大会組み合わせ>

2024.05.16

【秋田】夏のシードをかけた3回戦がスタート、16日は大館鳳鳴などが挑む<春季大会>

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.14

大阪体育大の新入生に兵庫大会8強の145キロ右腕、金光大阪の1番センター、近大附の4番打者など関西地区の主力が入部!

2024.05.13

大阪桐蔭、山梨学院、慶應義塾…強豪校・名門校の昨年度卒業生はどの進路を歩んだのか?【卒業生進路一覧】

2024.05.12

学法石川の好捕手・大栄利哉が交流戦で復帰! 実力は攻守ともに世代トップクラス!身長200センチ右腕を攻略し、完封勝利!

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?