木更津総合vs幕張総合
木更津総合、強打志向に転換!再逆転で8回コールド!
1番東(木更津総合)も豪快なスイングを見せる
昨夏優勝の木更津総合は、今年も有力候補として期待されるが、2016年のエース・早川隆久(現・早大)、2017年のエース・山下 輝(現・法政大)のような大エースがいるわけではない。さらに、昨秋ベンチ入りしていた峯村 誉範、根本太一の両速球派右腕がベンチ外という苦しい投手事情。だからこそ今年の木更津総合は「取られたら取り返せ」の打ち勝つ野球で逆転勝利を収めてきた。
幕張総合戦で先発したのが、強打強肩のスラッガー・野尻 幸輝(3年)だった。野尻は自慢の強肩を生かし、今年の春から投手も兼任。前回の成田戦でもリリーフを務めた。
野尻は右スリークォーターから常時135キロ~140キロを計測するなど速球の能力は本物。沈み込みが小さく、そのまま打者に正対して向かっていく投げ方は、俗にいう「野手投げ」だが、アベレージのスピードはベンチ入りしている木更津総合投手陣の中で最も速い。初回を三者凡退に抑え、裏の攻撃につなげる。木更津総合は1番東 智弥(3年)の二塁打でチャンスを作ると、2番神子 瑞己(3年)の犠打と相手野手の失策で1点を先制。その後、一死一、三塁から5番野尻が左前適時打を放ち、2点目を入れる。
2回裏には7番小池 柊稀(2年)の左中間を破る適時二塁打、8番田中の左前適時打で1点を追加。4回裏には相手の敵失の間に1点の入れ、4対0と試合を優位に進めたように見えた。
しかしここまで好投を見せていた野尻が5回表、無死満塁のピンチを招いてしまう。一死に打ち取ったものの、9番関口 龍之介(3年)の押し出し四球で1番鶴岡孝太(3年)が逆転満塁本塁打を放ち、幕張総合が試合をひっくり返す。主将の一発で、幕張総合のペースとし、木更津総合は劣勢に立たされた。
しかし6回裏、木更津総合は一死一、三塁のチャンスから9番白井 竜馬(3年)が遊撃手の失策を誘う鋭い当たりを放ち、同点に追いつく。さらに1番東が左翼線へ二塁打を放ち、二者生還し、2点を勝ち越し。その後、二死満塁から5番野尻の遊撃内野安打、6番太田 翔悟(3年)の遊撃内野安打で9点目。そしてバッテリーミスの間に、10対5と突き放しに成功する。
さらに7回裏には、1番東の犠飛を追加し、そして8回裏には6番太田の適時打で12対5と7点差をつけて、8回コールド勝ちで4季連続で準々決勝進出を決めた。
多少の失点でも集中打で逆転するところは、2012年に強打で夏の甲子園に出場したチームを思い出させる勝ち方だ。当時と比べるとどの打者もレベルが高い。驚きだったのは多くの選手のスイングのメカニズムが長距離志向となっていることだ。
振り遅れないよう、バットの位置を体の位置に置いて、構えに入り、小さくバックスイングに入った時、左肩(左打者ながら右肩)を上げてからアッパースイング気味のスイング軌道でボールの軌道に合わせ、豪快なフォロスルーにより、強烈な打球を飛ばしている。これまではレベルスイングを実践する選手が多かったが、打球に角度をつける選手が多くなったことで、長打が多くなり、打線の破壊力は昨年以上となっている。
取られたら取り返せの野球を見事に実践した木更津総合。準々決勝では今大会、強力打線で2試合でコールド勝ちを収めている志学館と対戦する。
(文・写真=河嶋宗一)