試合レポート

宇部鴻城vs市立呉

2016.11.06

宇部鴻城が攻守で躍動!嶋谷将平を筆頭に好野手が多数!

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優勝を決め喜ぶ宇部鴻城ナイン

  宇部市を代表する強豪校・宇部鴻城がこの日は攻守で圧倒した。

 1回表、二死三塁から4番嶋谷将平が甘く入ったスライダーを捉え左中間を破る適時二塁打で1点を先制。さらに二死一、三塁からダブルスチール。一塁走者が挟まれる間に嶋谷が生還し、2点を先制した。宇部鴻城の相手の隙を狙った走塁は、市立呉ナインの心理を突いた見事な攻撃だった。3回以降、次々と鋭い打球飛ばしていく。

 3回表には一死二塁から3番荒武悠大の適時二塁打で1点を追加すると、その後、併殺崩れや押し出しの間に1点を追加する。その後も、宇部鴻城打線の勢いは止まらず、14安打13得点の猛攻で、圧倒した。

 宇部鴻城だが、個々の選手たちの能力は高い。2年前のチームと比べると、野手陣の顔ぶれが充実としている。この日、5打数4安打の大当たりだった1番古谷慎吾。小柄だが、フォロースルーまで思い切り振る打撃スタイルが光る右打ちの巧打者。この選手の強みは逆方向へ打球が伸びること。右へ押っ付けるのではなく、右へ引っ張ることができる選手。どの打席を見てもしっかりとしたポイントを打てる選手で、ボールをコンタクトする能力が高い。また俊足で、思わず「速い!」と声をあげてしまうようなベースランニングには注目だ。

 そして5打数2安打1打点の活躍を見せた荒武悠大もパンチ力が優れた左の好打者。「強くボールをたたくことを意識しています」と語るように、捉えた打球は非常に鋭い。また8回途中からマウンドに登ったが、鋭い腕の振りから常時120キロ後半~135キロを計測。エースの早稲田玲生よりも明らかに速く、何より強く腕が振れるので、さらに球速が速くなっていきそうな予感がある。投打で楽しみな選手であった。

 早稲田は、8回途中でマウンドを降り、自分自身の出来に納得していない様子、尾崎公彦監督は「多くの選手が喜んでいる中、彼がぶすっとした表情をしていたのはそういうこと。あの様子を見て成長したなと感じました。まだまだ伸びる投手だと思っていますし、今後に期待しています」とコメント。早稲田、荒武の2枚看板が確立すれば楽しみだ。


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優勝旗を受け取る嶋谷主将(宇部鴻城)

 そして最後に16打数10安打7打点の大活躍で、見事に優勝に貢献した嶋谷将平をもう一度ピックアップしたい。ぜひ神宮大会の前に覚えておきたい逸材だからだ。

 尾崎監督も「嶋谷が4番でどしっと座ってくれたことが大きかった」と語るように、活発な宇部鴻城打線は嶋谷を抜きにして語れない。この日も市立呉バッテリーの配球の傾向を掴んで活躍を見せた。
「クリーンナップに対して変化球から入ることが多いので、スライダーが来ると読んでいました」
その言葉通り、第1打席は甘く入ったスライダーを捉えて、左中間をあっという間に抜ける適時二塁打を放った。その後も左前安打、中前安打、左中間を破る適時二塁打と大当たりであった。今大会の活躍について振り返ると、「自分は4番を打たせてもらっているので、まずどっしりと構えることを意識しています。小さく構えてしまうと相手投手に安心させてしまうので、威圧感を意識しました」

 そして10安打の秘訣として、打席前の準備の大切さをあげてくれた。「打撃はタイミングが大事だと思いますので、打席前ではどの投手に対しても、どうタイミングをとればいいのか、意識しています」
 これは多くの選手が実践していることだと思うが、嶋谷の場合、タイミングを合わせる技術が素晴らしい。余計な力みがないどっしりとした構え、トップからインパクトに入るまでの無駄のないスイング軌道と技術面が優れているだけではなく、打席前の準備する姿を見ると、打者として大事な姿勢が備わっている。技術、メンタルが成熟した打者で、これで本塁打を量産する技術、フィジカルが身に付いたら…と思う選手だ。

 そして守備も再三の好守備を見せた。1回裏には三遊間寄りのゴロを軽快にさばき、切り返しの速さを見せて二塁へ送球して、あっさりと併殺。4回表には、まず一死一塁の場面で、三遊間へ抜けそうなゴロを逆シングルで捕球し、こちらも鋭い切り返しで二塁へ送球しアウト。そして二死一塁では再び、嶋谷の元に打球が転がり、猛然と突っ込み、素早い持ち替えを見せて、ランニングスローでアウトにするなど、[stadium]宇部市野球場[/stadium]に来ていたファンを沸かせた。守備面で光ったのは持ち替えの速さだ。嶋谷はキャッチボールからすぐに握りかえて投げる意識でやっているという。
 その理由を聞くと、
「持ち替えの速さは守備で大事なのですが、「普段からそういうことをやっていると、いざというときにすぐに縫い目をかけて投げることができます。逆にゆっくりとやっているとうまく握れないことがあります。だからキャッチボールからそれをやれば、縫い目をかけやすくなり、良いボールが投げられるんです」
と理由をはっきりと答えてくれた。ここまで考えているからこそ、スピード感あふれる守備ができるのだろう。嶋谷のスローイングは安定しており、一塁の荒武は「いつもストライクで来るので、捕りやすいです」とナインからの評価も高い。

 今年は清宮幸太郎を筆頭に野手の逸材が目立つが、実は遊撃手の逸材が少ない。そういう意味で、嶋谷のパフォーマンスは全国トップクラスと推していい逸材だ。[stadium]神宮球場[/stadium]についての印象を聞くと、「山口にはない人工芝でプロが使っている球場で、やってみたい気持ちはあります。とにかく球場に慣れて、自分のプレーをしたいと思います」と人工芝であることを認識してこの大会に臨むだけでも違う。

 神宮大会は多くの高校野球ファン、また野球関係者が集まる大イベント。自分たちの実力を思う存分発揮することを期待したい。

(文・写真=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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