試合レポート

春日部東vs越谷西

2012.07.18

師弟対決

1995年第77回大会、左腕・鈴木功を擁し県立越谷西高校を甲子園へ導いた春日部東・中野監督が今年の夏で勇退する。
埼玉では一県一校出場の年でその年以来県立高校は甲子園に出場していない(記念大会で二校出場時は滑川が出場)。埼玉ではそれだけ私学優位が続いている。

春日部東の3回戦の相手は中野監督越谷西時代の教え子である島田監督が率いる越谷西という因縁のカードだ。

先制したのは春日部東だった。
1回一死二塁で4番徳村良介(3年)のショートゴロの間に二塁走者小山雅史(3年)が一気に生還する好走塁をみせ幸先良く1点を挙げた。
だが、越谷西もすぐに反撃を開始する。春日部東の先発左腕・熊谷健太郎(3年)を攻め、一死二塁から7番半沢剛(3年)の右中間へのタイムリーを放ちすぐさま同点とすると4回表には一死満塁からまたしても半沢のセンター前2点タイムリーで3対1と逆転に成功する。

一方、春日部東は4回からマウンドに上がったサイドスローの山川拓也(3年)の緩い球にタイミングが合わずフライを打ち上げる。
「前の試合の相手の継投をみて中野先生だったら熊谷君で来る確信があった。うちは前の朝霞戦も左投手だったので左投手対策は万全だった」(越谷西・島田監督)

「前の試合を見て相手に勢いを感じていたので熊谷には前半に気をつけないと相手に勢いにやられるぞと言っていたんですが…」(春日部東・中野監督)
と言う両者の言葉どおり前半は越谷西の勢いが勝る展開となる。

春日部東にとっては嫌な流れであったが、百戦錬磨の春日部東・中野監督は落ち着いていた。
「相手もリードを守るのは大変なこと。自分達だけが苦しいわけじゃないから我慢して。長い夏の大会こういう試合は必ず1試合はある。覚悟を決めて思い切って怖がらずにやりなさい。それでダメならしょうがない」
と中野監督は選手に発破をかける。

さらに「熊谷は全体的に良くなくて(この日の投球を)引きずってプレーしていたので思い切って代えた」
という打者としても好打者の熊谷と4番徳村をベンチに引っ込め、5回から春までエースナンバーだったサイドスローの田中翔児(3年)をマウンドに送ると田中は好投し相手に行っていた流れを食い止める。


そして迎えた6回裏だった。
一死一,二塁から1番小貝雅史(3年)のライト前ポテンヒットを放つ。二塁刺殺を狙ったライト伊藤慎也(3年)の送球が逸れる間に1点を返しさらに一,三塁とするとすかさず2番西村(3年)がスクイズを決め3対3の同点とした。

これで落ち着きを取り戻した春日部東は9回裏一死一,三塁と二番手の山川を攻めると最後は途中出場の松尾和也(3年)が左中間へサヨナラタイムリーを放ち何とか苦しい試合を物にした。

越谷西にとって誤算だったのはエース中村恭介(2年)の早期降板であろう。
夏の大会の3週間前に肩を痛め、前の朝霞戦はぶっつけ本番で10回を完投した。中一日で試合に臨んだが中村はひじ痛が再発し投げられる状態ではなかったがマッサージを受けながら3回までは投げたが、結局限界でマウンドを降りた。代わった山川も良く投げたが最終回は握力も落ち、セットしようとしてボールを落としボークを取られてしまうあたりどうやら限界だったようだ。

一方の春日部東は決して褒められた内容ではなかったが、よくよく考えてみても春もこういう苦しい試合を高い守備力で守りきり一戦一戦乗り切った末のベスト4進出だった。
この日も8回表二死二塁でライト前ヒットを打たれるがライト小曽根海知(3年)のダイレクト送球で二塁走者を刺した。今後も1点を争う苦しい展開が予想されるが、元々中野監督に有終の美をと選手達のモチベーションも高いだけに持ち前の守備力でロースコアに持ち込めるようだと上位進出も考えられる。高校生は大会中に成長するだけに選手を乗せる中野マジックに期待したい。

「ここまで追い詰めて勝てなかったのは私の監督としての未熟さです」
という越谷西・島田監督に対し
「あの場面はこうだったなという場面もいくつかあるんで後で話をしたい。彼には今後もがんばってもらいたいんで」
と最後は教え子を気遣う余裕も見せた中野監督、越谷西のがんばりもあり白熱した師弟対決、最後は中野監督に軍配が上がった。

(文=南英博)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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