愛工大名電vs東邦
粘った愛工大名電、8回に追いつき東邦にサヨナラ勝ち
5イニングで9三振を奪った愛工大名電・寺嶋君
さすがに強豪ひしめく愛知県大会の準々決勝。ここまで来ると強豪校のライバル対決が相次ぐようになるが、その中でも甲子園での実績もある名古屋市内の私学4強同士の対決となった注目のカードである。
この日の先発は、愛工大名電は左腕ながらこの春は背番号5をつけている田村君。そして東邦も二塁手もこなす背番号19の三浦君だ。
東邦は、田村君の立ち上がりを攻めて、一死から早川君が四球で出ると続く鈴木唯斗君は左翼頭上を越えていく三塁打で先制。さらに、4番上田君も右犠飛を放って東邦が早々と2点を先取した。
3回にも東邦は、1番城(たち)君が左前打で出ると、すぐに二塁へ送り、二死二塁となったところで4番上田君が中前へはじき返して、二塁走者が帰って3点目を追加した。
愛工大名電の倉野光生監督は、「今日は、あまり調子は良くない」と判断して、4回からは田村君を一塁に下げて、マウンドには1番をつけた寺嶋君を送った。寺嶋君は、交代した回の投球では、しっかり3人で抑えて味方の反撃を待った。
そしてその裏、愛工大名電は先頭の伊藤基佑君が左中間三塁打すると、続く田村君はしっかりと右前へはじき返してまず1点を返す。さらに暴投で田村君は二塁へ進んで4番宮﨑君も右前打してなおも無死一三塁。
さらに死球もあって、無死満塁となり、愛工大名電としては一打同点、長打で逆転という場面にもなったが、ここから三浦君が踏ん張って三者連続三振で切り抜けた。この三浦君の粘りの投球というか、気迫は素晴らしかった。
しかし、愛工大名電は5回に9番大森君と利光君の連打で一三塁として、牽制悪送球で三塁走者が労せずして帰り1点差となった。
こういう展開になってくると、次の1点が大きくものを言いそうな流れになってくるのだが、東邦は7回一死から三浦君、池下君と下位打線の8~9番の連打でやっと寺嶋君攻略の糸口をつかむ。すると、ここで暴投が出て東邦は三塁走者が帰ってリードを広げた。
ところが、愛工大名電も粘る。8回に先頭の藤山君が左前打で出ると、バントなどで進んたが、連続四球もあって満塁。ここで、1番利光君が右前へはじき返し、送球もそれたということもあって2者が帰って、ついに同点とした。東邦としては悔やまれる連続四球と送球ミスということになってしまった。
8回に代打が出たということもあり、9回の愛工大名電は背番号12の野嵜君がマウンドに登った。
野嵜君は四球こそ出したものの、9回をしっかり押さえる。そしてその裏、愛工大名電は3番田村君は死球を選んで出塁。4番宮崎君は、ベンチから「打ちたいかバントで送りたいか、どうしたいんだ」という伝令を送られて、宮崎君自身は「打ちたい」を選択。そして、この回から登板した知崎君の渾身の1球を叩いて左中間へサヨナラの一打となった。
この場面、倉野監督としては、「思い切り引っ張るか右へおっつけるかで、センター返しを狙ってのゲッツーだけは避けたかった」という思いだったというが、打つことを選択した宮崎君は、思い切りよく振っていったことで結果を出した。
「迷いがあったら、結果が悪いんですよ。迷いなくやれるように持って行くのが、監督としての仕事ですから」と、倉野監督は言っていたが、まさに宮﨑君の踏ん切りのよく、思い切りのいいスイングは、その指示通りだったとも言えるものだった。
いい形で先制しながら逆転された東邦の山田祐輔監督は、「4回に寺嶋君が出てきたところで、流れを変えられてしまいました。寺嶋君から、5イニングで9三振ですか。追い込まれた中で、どうやっていくのかというところに迷いもあったようです。1点を取れるところをしっかり取っていかないといけないということを再認識させられる試合でもありました」と、厳しい場面でいかにメンタル的な要素を強く持って行かれるのかということも、夏へ向けての課題としていた。
(取材=手束 仁)