美来工科vs八重山農林
美来工科、決勝進出!八重山農林、ベスト4で散る
一振りで試合を決められる打者はそうはいないが、美来工科の玉城幸人は“持っている”男なのかも知れない。
1対0とリードをしてはいるものの、苦しい試合展開だったのは誰もが認めるところ。それだけ“同校初のベスト4へ進出した八重山農林の、各打者の鋭い振りが何度も塁上を賑わせ、美来工科がそれをなんとか切り抜けているという場面が続いていた。
しかし4回、美来工科は山川倫輝がライト前ヒットで出塁。一死後、平川輝がレフト前ヒットで続くと比屋根京介も右前単打で満塁を得た。ここで先に動いたのは八重山農林だ。この初のベスト4入りを支えてきた”継投“で早くも3人目の左腕、登野城吉紘がマウンドへ上がる。そして美来工科も主将新垣海斗(左打席)に変えて右の玉城幸人を送る。その初球だった。
高々と舞い上がった打球はレフトスタンドへ入るグランドスラム。歓喜に湧くベンチ脇のナインの抱き合う姿が、苦しい試合を物語っていた。
これで完全に試合権を手中にした美来工科は5回、二死から山川倫輝が三塁打を放つと山内慧も二塁打。3、4番の連続長打で1点を加える。6回には二死二塁から古謝僚人が四球を選ぶと、神山諒介がライトへコールドを決定づける2点タイムリー二塁打。
5回頭から登板したアンダーハンドの比嘉太陽が7回を3人で抑え勝利。新人中央大会優勝、秋季大会優勝、春季大会3位、そしてこの準決勝。19試合で18勝1敗(春季大会準決勝敗退のみ)の横綱が、最後の夏も指定席であるファイナル進出を果たした。
敗れた八重山農林だが、登野城吉紘をはじめ試合中の笑顔が印象的。ベスト16の壁を破っただけでなくベスト4までこれたことは間違いなく、彼らの成功体験のひとつとなっただろう。きっと「じぶん史上、最高の夏」になったに違いない。
(文=當山 雅通)
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