試合レポート

滋賀学園vs石部・信楽

2016.07.11

連合チーム対優勝候補

 11人対80人。連合チームで挑んだ石部・信楽と優勝候補筆頭の滋賀学園との間には人数的にも戦力的にも埋め難い差があった。

 初回、滋賀学園のエース・神村月光(2年)は立ち上がりにほぼストレートのみで2者連続三振を奪う。投球練習では高めに浮く球が目立っていたが打者が立つと低めにビシバシ決まった。

 石部・信楽にとって球威あるストレートを芯で捉えるのは難しいかと思われたが、3番・山添凌輔(3年)が2ストライクからそのストレートを浅めに守っていたライト左へ弾き返す。

 山添は出塁すると投手でありながら大きなリードを取り、神村からの3度の牽制を全て手から滑り込んで帰塁する。しかし、4番・小林遥哉(3年)に4球投げ込んだ後、セットポジションに入る前にわずかながら大きなリードを取ると神村はその一歩を見逃さず牽制で刺す。

 初安打は打たれたものの、神村が立ち上がりを実質3人で片付けるとその裏、1番・山口竜輝(3年)が放った何でもないショートゴロが滋賀学園の猛攻開始の合図だった。

 山口は俊足を生かして内野安打で出塁すると、2番・井川翔(3年)の初球にすかさず盗塁を決める。井川がレフトにフライを打ち上げると打球判断を誤り適時二塁打となって1点を先制。

 馬越大地(3年)が三塁線を破る適時二塁打で続き、この後さらに小浜崚史(2年)の適時二塁打などで3点を加えいきなり打者一巡の攻撃で5点を奪った。自らも適時打を放った神村は2回も2つの三振を奪い無失点。8球でアウトを3つ取りベンチに戻ると打線は直後に初回を超える攻撃を見せる。


 先頭・井川のショート強襲の二塁打から加点し、無死一、二塁からのワイルドピッチで一気に本塁を狙った松岡立城(3年)がタッチアウト、一死一塁からのエンドラン成功で三塁を狙った一走・後藤克基(2年)が石部・信楽のセンター・小林の好返球で刺される場面はあったものの誰も凡退しない。

 2回裏の攻撃が終わったのは二死となってから11人目の西村大樹(3年)がサードゴロでアウトになった時。9番打者の西村だが2回終了時点ですでに3回打席に立っていた。この回は打者二巡に近い17人による攻撃で一挙12得点。

 試合の大勢がすでに決まっていても四球で一塁に歩く際はバットを投げずに静かに地面に置く、ワイルドピッチがあった時は打者がキャッチーマスクを拾いユニフォームで拭いてから渡すなどの姿勢は変わらなかった。

長い攻撃を挟んでマウンドに立った神村は3回先頭の石田仁(2年)に四球を与えてしまうが次打者を三振、一死一塁からのバントも好フィールディングで二塁で刺し、打順がトップに返っても1番・岡崎虎琉(3年)をセカンドゴロに仕留めお役御免。

 3回を投げて1安打1四球無失点、打者10人に対して5奪三振という投球内容でマウンドを先輩に託した。

 4回は左腕の吉井陸登(3年)が長いリーチを生かしたカーブ、スライダー系の変化球を武器に三者凡退、5回も奥東草太(3年)が危なげなく3人で打ち取りコールドゲームが成立。どんなチームでも浮き足立ちがちな独特の雰囲気がある夏の初戦を突破した。

 選抜では思い切りのいい徳留魁人(3年)を切り込み隊長に、黒子役の井川が2番でつなぎ、クリーンアップは勝負強い後藤、一発のある馬越、長打力が持ち味の松岡という並び話だったが、この日はチーム一の俊足を誇る山口に打線の火付け役を任せ、クリーンアップは馬越、松岡、後藤と並べた。

 調子に応じて組み替えざるを得ないのではなく、組み替えられるのは大きな強みだ。他にも代打で起用された武井琉之(2年)は初球を叩いて安打を放ち、4回から守備に就いた沖縄出身の小柄なセカンド・渡嘉敷清悟(2年)も安打を記録。

 神村を軸とする投手陣も夏のマウンドを経験しそれぞれが十分に持ち味を発揮。この夏はノーシードからの挑戦で同じブロックには春優勝の光泉がいるが2季連続の甲子園へ向けて好スタートを切った。

(文=小中 翔太

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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