試合レポート

愛知産大工vs豊川

2018.09.16

終盤で二転三転の試合、延長の末に愛産大工がサヨナラ勝ち

愛知産大工vs豊川 | 高校野球ドットコム
愛産大工・長江泰成君

 

 例によって秋の天候不順で、日程が当初の予定から崩れてきている愛知県の秋季県大会だが、1回戦を消化しきれないでいる一方で、このゾーンは予定通りに進行していて3回戦でベスト8決めの試合となった。

 夏の東愛知大会では本命視されながらも、準決勝で西尾東に屈した豊川。それだけに、この秋にかける思いは格別だろう。

 初回、豊川は先頭の漆原君が失策で出塁すると、バントで二塁へ進め、3番中神君の左前適時打であっさりと先制する。愛産大工の先発左腕の山方君としては、打ち取ったと思った先頭が出て、ちょっと「えっ?」という気持ちのところで打たれたという感じだった。それでも、その後は、丁寧にコースを投げ分けていきながら上手に打たせていた。

 しかし豊川は4回にも追加点を挙げる。

 この回、先頭の4番松山君が右線へ二塁打すると、続く立花君も一塁内野安打で一三塁。慎重に行きたい愛産大工バッテリーだったが、少し甘く内側に入った球を捉えた中野君の打球は右越二塁打となって松山君が帰る。なおも一死二三塁という場面で、杉浦君が三塁線に巧みに転がすセーフティスクイズで三走立花君も帰り3点目。

 愛産大工の鈴木将吾監督は5回からは山方君に代えて長江君を投入したが、豊川打線はしっかりと捉えてきた。5回も先頭の1番漆原君が中前打するときっちりバントで進めて、中神君が今度は中前へ適時打。さらに立花君の中飛で三塁まで進んで、立花君の中前打で帰り、この回も2点が追加された。豊川打線は、中軸がしっかりとスイングしてきており、少しでも甘いとしっかり捉えていくなという印象だった。

 こうして、豊川が前半でじわりじわりと引き離していっていた。

 また、立ち上がりからのリードで、追加点もあり余裕の出てきた菊間君は、無理をしない投球という、ストライクを先行させて打たせていっていた。

 ところが、中盤から試合展開はガラッと変わってきた。食い下がる愛産大工は中盤以降徐々に菊間君を捉えてきていたのだ。


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豊川・菊間悠斗君

 5回に岡田君が二塁打して一死二三塁から内野ゴロで1点を返すと、6回にも藤掛君と杉君の連打からチャンスメイクして、内野ゴロと5番佐守君の三塁線二塁打で2点。追い上げていく。さらに7回にも、いくらか疲れも見えてきた菊間君を攻めて二死一二塁から4番高木君が右前へ会心のタイムリー打を放った。さすがにここで豊川の今井陽一監督は、菊間君を諦めて2番手として迫頭君を送り出した。迫頭君は期待に応えて、代わり端は三振でピシャリと締めた。

 しかし、勢いづいた愛産大工は8回にも先頭の6番藤岡君が左前打すると、真鍋君も続き一三塁。岡田君のスクイズは野選となって1点差でなおも無死一二塁。暴投もあって二三塁となると、9番に入っていた長江君が気持ちで運んだ左前打でついに同点。なおも一三塁。一死後藤掛君がカウント2-2からスリーバントスクイズを決めてこれで愛産大工が逆転した。最大5点差も開いていたものをしぶとく追いついてひっくり返した粘りは見事だった。

 だが勝負はもつれていき豊川も粘る。9回は1番からの好打順だったが、一死後執頭君と中神君が連続安打で二三塁。松山君は敬遠気味の四球で満塁策をとった愛産大工だったが、5番立花君が気力の右前打で二者が帰って再逆転。しかし、これで決着とはならなかった。

 その裏、愛産大工は先頭の高木君が四球で出るとバントで進み、二死二塁から真鍋君が左越二塁打して再び同点となり、ついに試合は延長にもつれ込んだ。

 そして10回、愛産大工は一死から1番横井君が四球で出ると、暴投で二塁へ進む。さらに四球と杉君の右前打で満塁とすると、4番は前の回に代走で入ってそのまま守りに入っていた片山君だが、「お前で決めろ、練習通りでいいんだ」というベンチからの声に応えて右前へはじき返して、これがサヨナラ打となった。

 「よく粘りました、よく返しましたよ」と鈴木将吾監督は、「あんまり褒めるところはないんですけれども、よく頑張りました」と選手たちをまず称えた。とくに5回からリリーフした長江君に関しては、実は打撃投手を務めながらいつしかエースになっていったという努力家でもあり、そのひたむきさも評価していた。「前半の失点は嫌な形だったんですけれども、追いかけていったのがよかったんでしょうね」と、5回以降毎回得点していった粘りが功を奏した。

 実は、同じ中京出身の先輩手もある今井陽一監督には3連敗中だったという。「今井先輩に、やっと勝たせてもらえました」と、そのことも素直に喜んでいた。

 

(文=手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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