試合レポート

英明vs坂出商

2015.09.25

英明「黄金世代」が残した勝者のメンタリティ

坂出商先発・大塚 淳平(2年)

「3本ある旗を一本ずつ返しとる。この前も1本返したし」
駐車場から[stadium]レクザムスタジアム[/stadium]へ向かう道すがら、筆者と顔を合わせた英明香川 智彦監督がいきなりブラックジョークをかます。

 確かに旧チームの強さは際立っていた。秋の県大会優勝、四国大会優勝。春はセンバツこそ大曲工(秋田)に初戦で涙を呑んだが、5月の四国大会優勝。夏の痛い香川大会準決勝敗退があったとしても2014年秋~2015年夏・四国高校野球の歴史に「英明」の名はこれからも燦然と輝き続けることだろう。

 そんな「黄金世代」の後だけに、当時のスタメンから総入れ替えとなる現チームの状況は非常に厳しい。初戦の2回戦は再三塁上を賑わせながら、高松に2対1と辛勝。この坂出商戦でも坂出商先発・大塚 淳平(2年・投手・右投右打・170センチ60キロ・丸亀市立南中出身)の要所を締める粘り強い投球と、184センチ95キロの権藤 淳(1年・一塁手・右投右打・高松市立協和中出身)を4番に据え周囲を機動力あふれる選手で固める打線に苦心し、8回までは2対2と互角の展開に持ち込まれる。

 ただ彼らには、この日は一塁側スタンドから熱烈声援を送った3年生たちが示した勝者のメンタリティをすぐ横で感じていたアドバンテージがある。その差が如実に出たのは最終回であった。


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2015年秋季大会

英明先発・藤井 拓海(1年)

 9回表二死二・三塁、坂出商の打者は3回に同点打を放っている1番・中西 渉(2年・中堅手・右投右打・171センチ72キロ・善通寺市立西中出身)と英明にとって絶体絶命の場面。背番号こそ「7」だが、1年生にしてエース4番の重責を担う藤井 拓海(右投右打・181センチ83キロ・高松市立太田中出身)はここで開き直った。「まっすぐが自分の一番いいボール。絶対抑えてやると思って投げた」6球はオールストレート。最後は空振り三振に斬ってみせた。内に秘めた気迫を勝負どころで出す。これは旧チームエース左腕・田中 寛大(3年)も心がけていた英明エースの流儀である。

 勢いを得て臨んだ9回裏の攻撃。英明は一死から50メートル走6秒0台の俊足を誇る2番・赤尾 優磨(2年・左翼手・171センチ64キロ・右投左打・志貴ボーイズ<奈良>出身)が3秒85の一塁駆け抜けで二塁内野安打を奪うと、二死から二盗を決め、二死満塁への道筋を作る。そして、6番・吉岡 宏芙(1年・二塁手・170センチ60キロ・右投右打・高松市立香川第一中出身)の打球は一・二塁間を鋭く破る。捨て身でライトゴロを狙った一塁返球も一歩及ばずセーフ。この瞬間、彼らは4年連続秋県ベスト8を手にした。

 相手にプレッシャーをかけ続け、最後まで全力疾走を欠かさない。これも旧チームのメソッドである。

「えらい(苦しい)なあ。このチームは。野手がいかん。力がないのに元気がない。前チームは活気もあったので強かった」と試合後もぼやきが続いた香川監督。だが、裏を返せばそこを補えれば県内では稀有な勝者のメンタリティの素地をさらに活かせるはず。まずは2つ目の旗「秋季四国大会優勝旗」を返す場所へどのように到達するか。未成熟な英明の「これから」を楽しみに見ていきたい。

(文=寺下 友徳


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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