試合レポート

いなべ総合vs大垣日大

2013.05.25

いなべ総合vs大垣日大 | 高校野球ドットコム

加藤勝平(いなべ総合)

終盤に流れを呼び込んだ、いなべ総合鮮やかな逆転劇

初回の好機を併殺で逃し、その裏に3点を失ってしまったいなべ総合。序盤から中盤までは、ずっとそのよくない流れを引きずったまま、走者が出ても攻めきれないという形が続いていた。

 ところが、6回に主将で4番の加藤勝平君が中越二塁打で1点を返してから、試合の流れが変わってきた。
 特に大きかったのが7回、先頭の5番森翔也君が右前打で出ると、バントで二塁へ進む。続く岡謙斗君の打球は投手を強襲したがフォローした遊撃手がさばいて2死二塁。ここで、代打は1年生の市川晃大君だ。その市川君が期待に応えて、右中間に二塁打して1点差とした。

いなべ総合尾崎英也監督も、「あれは大きかったですね。1年生ですけれども、バットコントロールが非常にいいもんですから、大会前に急きょ登録変更で入れ替えた選手です。1年生のあの一打が、覚醒になって次へつながりました」と言うように、大きな起爆剤となった。

そして8回、いなべ総合は先頭の2番伊藤拓也君の好打は左翼手古谷大至君に好捕されて、まだ流れが来ていないのかと思われたが、続く山川雅史君が左前打。ここで、いなべ総合打線に捉えられてきたと感じた大垣日大阪口慶三監督は、先発和久田優志君と一塁手で先発出場していた金田凱君とを入れ替えた。ところが、金田君に対して、勢いづいたいなべ総合加藤君、君が連打して同点とした。

こうなったら、いなべ総合の勢いが勝る。

3人目の1年生石川雄大君に対しても、水谷祐斗君の右犠飛と、さらに君の右前打でこの回3点を奪って、一気に逆転した。


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岡謙斗(いなべ総合)

 このあたりの流れのつかみ方、勢いの呼び込み方は、まさに尾崎マジックと言ってもいいものかもしれない。実は、前日の練習で尾崎監督は選手たちにちょっと、気持ちが緩んでいると感じるところがあったので、異例のお仕置きをしたということを明かした。それは、練習を一切しないで切り上げて、何も言わないで着替えさせて教室で待機させるという荒療治だった。詳細も告げられないまま、選手たちは教室でただ待機しているだけだったという。それが約2時間、それが効いたのか、その後気持ちが引き締まって練習が再開できたという。

 そうした気持ちの引き締めが、この日の試合、終盤になって発揮されたのである。

立ち上がりに3点を失いながらも、投げ込んでいくうちに自分の投球を作っていった君も、「あれで気持ちが引き締まりました。2時間くらい待機していたのですけれども、その間に今日の試合のことや野球のことなどをみんなと話しました」と、選手たちの間で自然に意識が上がっていく効果があったようだ。

岡謙斗君は最速で138キロ、驚くようなスピードがあるというものではないが、本人も、「スピードよりも球の切れで勝負したいと思っています。だから、持ち味はストレートです」と言うように、立ち上がりこそ少し甘かったものの、投げ込んでいくうちに自分の投球を作っていったのは見事だった。

初回に3番金田凱君の二塁打や、6番立野力也君のタイムリーなどで3点を先制した大垣日大阪口監督のイメージ以上の滑り出しだったのだが、結局初回のみでとどまってしまった。試合の流れとしては、1点差とされた7回にセーフティスクイズで三塁走者が走れずそのまま好機を潰したことになったのも痛かった。

百戦錬磨の阪口監督も、今一つ試合の流れがよくなかったことを振り返っていた。それでも、「夏までに、また気持ちを入れ直して、子どもたちと頑張ります」と、気持ちを引き締めていた。

(文=手束仁

(写真=編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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