都立雪谷vs明大明治
都立雪谷菅家が完封!雪谷野球で準々決勝へ!
思い切りの良い投球で明大明治に完封勝利を収めた菅家優之介(都立雪谷)
都立雪谷に、この秋突如表れた異色な経歴をもつ投手、菅家優之介。その背中には「4」がついている。
「元々は代走のスペシャリストなんですよ。守備にはつかない選手でした。しかし、8月の練習試合前、その脚力とキャッチボールの球筋の良さを見て、その日に急遽投げさせてみたんです。変化球の握りは何となくでいいから投げてみろと。そうしたらその試合を完封してくれました」
都立雪谷・相原監督はこのように語った。その菅家がチームに今大会初の完封勝利をもたらし、準々決勝へ導いた。
試合は初回から動く。
1回裏、明大明治の攻撃。1番堤が挨拶代わりと言わんばかりの左中間を大きく破る三塁打を放った。
「正直、動揺しました。しかし、ここで点を与えると流れを持っていかれると思い、思い切り投げました」と、菅家は語ったこの場面。
思い切りの良い投球で、続く2番を中飛打に打ち取り、タッチアップを試みる明大明治1番堤も走塁死となった。その後の打者もしっかりと打ち取り、初回をなんとか0点に抑える。
菅家の好投に応えたい打線は、3回表、1番中尾が敵失で二塁まで進塁すると、続く2番木本が投手強襲で出塁。木本は盗塁を成功させ、チャンスは二死二、三塁となる。そして、4番神子の中前安打で1点を先制。続く5番菅家も左安打を放ち、さらに1点を追加。この回2点をあげ、都立雪谷が先制に成功する。
さらに6回表。先頭打者3番吉田が四球で出塁。ここで、明大明治清水痛恨のボークで走者は二塁へ。続く4番神子の内野ゴロの間に走者は三塁まで進み、状況は一死三塁。打席には、力投を続ける5番菅家。菅家は落ち着いて三塁方向へスクイズを決め、1点を追加。3対0。
打撃だけでなく好守でも魅せた神子(都立雪谷)
菅家は、しなやかな腕の振りから繰り出される伸びのあるストレートを打者のインコースに投げ込む投球で、明大明治打線を封じ込める。終わってみれば、奪った三振はたった1つ。しかしインコースを攻めたことで打球を詰まらせフライアウトを量産し、明大明治打線を4安打に抑えての完封勝利となった。
投手の好投に対し、打線は長打0本、単打8本による3得点であった。
試合後、都立雪谷相原監督はこう語る。
「打撃に関しては、長打を打てないから、繋ぐ野球をしています。ランナーに走ってもらうのはもちろん、エンドランやスクイズも積極的に活用しています。アウトを恐れず走っていく、そんな野球で相手を崩していくのがこの代の野球のスタイルになりますね」
言葉通りに長打は0での勝利となった。積極的に走ることで相手守備を翻弄した結果が、6回表の明大明治清水のボークを誘ったのかもしれない。
さらに相原監督は秋季大会と今後について、
「秋季大会は新しいチームにとって、一週間毎に公式戦があることはありがたい。毎試合課題が見つかって、限られた時間で集中して修正することができる。しかし、長期的には打撃が課題になってくるので、この冬は選手にしっかりとバットを振らせたい」と語っていた。
また、投手に関しては
「菅家は身長の割には体重が軽い選手。さらに、変化球もまだまだ。この冬で体を大きくして、しっかりと変化球を覚えればさらに成長するかも知れません。しかしうちには、エースナンバーをつけた森本もいます。彼も力のある球を投げるので二人を使い分けていきたいです。次はどちらを投げさせるかはまだ決めていません」と語っていた。
実力のあるエース・森本と発展途上の菅家。二人を抱える都立雪谷の投手事情が今後も楽しみである。
都立雪谷は準々決勝で、この夏甲子園出場の二松学舎大附とぶつかる。
菅家は「もし投げるのであれば、二松学舎大附の大江 竜聖君に投げ負けないような投球をしたい」と語っていた。
雪谷野球でどこまで勝ち進むことができるか。次の戦いが楽しみである。
(文=編集部)