試合レポート

大阪桐蔭vs智辯学園

2021.05.30

3戦目で雪辱 互いの良さが光った大阪桐蔭と智辯学園の頂上決戦

大阪桐蔭vs智辯学園 | 高校野球ドットコム
先発・川原嗣貴(大阪桐蔭)

 この熱戦に両チームとも9イニングで無失策という素晴らしい試合だった。智辯学園vs大阪桐蔭の3度目の対決。お互い良さが見えたベストゲームだった。

 大阪桐蔭の先発はこの春から急浮上した2年生右腕・川原嗣貴。188センチの長身から繰り出す直球は初回では、常時120キロ後半〜135キロ程度だったが、6回の場面で135キロ〜140キロを計測し、何度も138キロを計時。突出して速いボールはないものの、やはり角度があり、さらに体重が乗って、強く腕が触れた時の威力抜群のストレートは魅力的。近年の大阪桐蔭の投手でも、角度が高い投手なので、アベレージで5キロぐらい速くなれば、2022年を代表する投手になる可能性がある。

 2回表に7番谷口綜大の適時二塁打、6回表に5番に入った前川右京に左前適時打を打たれ、2点を失ったが、強力打線・智辯学園相手に6回まで2失点に抑えた投球は高く評価できるだろう。またこの春から好投をし続けている竹中勇登も、最速138キロのストレートと120キロ中盤のスライダーを織り交ぜ、無失点投球。

 一方、智辯学園小畠一心も素晴らしい投球だった。大阪桐蔭の主力打者の池田陵真は「今日はストレートが本当に来ていました」と語るように立ち上がりから常時138キロ〜143キロのストレート、130キロ前半のツーシーム系の変化球、120キロ前後のスライダー、110キロ台のカーブを織り交ぜ、要所では140キロ前半のストレートで押す。2回裏に野間翔一郎に適時三塁打を打たれたが、3回裏には三者連続三振を奪うなど、まさに力感のある投球は見応えがあった。そして6回裏には二死から2番藤原夏暉に三塁打を打たれたが、二死三塁の場面で3番池田陵真

「池田だからというわけではなく、点を取られたくない場面でしたので、力が入りました」

オールストレート。142キロ、142キロ、143キロ、142キロ、142キロで空振り三振を奪い、ピンチを切り抜けた。


大阪桐蔭vs智辯学園 | 高校野球ドットコム
サヨナラ本塁打を放った藤原夏暉(大阪桐蔭)

 ただ初回から140キロ連発の影響が出たのか、7回以降は135キロ、6キロが中心。7回裏に、松尾汐恩(2年)に左前適時打を浴び、同点を許してしまったが、それでも気迫がこもった投球で、大阪桐蔭打線を抑えた。下級生時はボールが高めに浮きやすく、単調になりやすいところが課題だったが、終盤では間合いを考えながら、1人1人の打者に向き合っていた。また守備陣も小畠をしっかりとカバー。一本立ちの気配が感じられた。

 2対2のまま迎えた10回裏、一死一塁の場面でスイッチヒッターの2番藤原。左打席に入った藤原はストレートを振り抜いた打球はライトフェンスを超えるサヨナラ本塁打となった。中学時代から俊足巧打の左打ちの内野手として活躍。1年夏に橋本コーチの勧めから右打席の練習も行った。

「スイングは右、左も同等ですが、右の方がより真剣に、力を入れて振ったと思います。最初はダメダメでしたが、少しずつものになってきました」と語るように、右、左でも滑らかなスイングを見せる。やはり左打ちのほうがインパクト時の押し込みが強く、鋭く打球を飛ばせている。ストレートに振り負けておらず、藤原の長所が最大限に発揮された。

 結果的には大阪桐蔭が勝利して試合を制したが、どちらも無失策で、投手も好投。3度目の対決はまさに名勝負として語り継ぐべき試合だった。

(取材=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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