試合レポート

履正社vs有田中央

2016.05.29

空振りの取れるストレートを目指して

履正社vs有田中央 | 高校野球ドットコム

投手・寺島成輝(履正社)

 大阪のチャンピオンに挑む有田中央、井原監督は「左が多いと聞いていたので。それと相手によらず自分のピッチング出来る子なので」と先発マウンドに背番号11の仲 竜輝(2年)を送った。仲は緩い変化球でかわすピッチングが持ち味の技巧派左腕、しかし上位打線に左打者が4人続く履正社は初回からきっちり捉えてきた。

 1番・福田 観大(3年)が強引にならずしっかり叩いてライト前。先頭打者が出塁すると履正社らしく2番・北野 秀(3年)がきっちりバントで送り、3番・四川 雄翔(3年)、4番・安田 尚憲(2年)も鋭い当たりの連打で先制に成功。一死一、三塁からは井町 大生(3年)がセーフティスクイズを決め追加点を挙げる。得意とする堅実な攻めで試合の主導権を握った。

 すると3回にも一死一、二塁から井町のセンターオーバーの2点適時二塁打でリードを広げ、4回の守備では一死一塁からセカンド後方へのフライをライト・山本 侑度(3年)がスライディングキャッチ。二塁ベース近くまで出ていた一塁走者も刺した。その裏、先頭打者として打席に入った山本の安打からさらに3点を追加。5回の守備では二死一、二塁から先発・寺島 成輝(3年)が安打を許すが、センター・福田が好返球でホームを狙った走者を刺し生還は許さない。7点リードの5回裏には福田の適時打で2点を加え一死二、三塁からキャプテン・四川がセンターに犠牲フライを放ち10対0のコールド勝ちを決めた。

 上位下位、打順に関係なくしっかり振ってのコールド勝ち。夏へ向けて打線の状態は上向いているが、岡田監督はエースのピッチングに注文をつけた。
「イマイチ。府大会の準決勝の方が良かった」
寺島はストレートに磨きをかけるためこの試合では変化球をほとんど投げていない。「まっすぐあっての変化球やから。空振り取れるまっすぐを放らないと。粘られるということはコースとキレかな」と岡田監督。

 この日投じた80球の内、実に30%に当たる24球がファールで空振りはわずか9球。初回、有田中央の2番・田中 千也(3年)に対しては5球ファールで粘られた末、四球で歩かせてしまっている。寺島が理想とするのは左打者のアウトコース低め、右打者のインコースに捕手のミットが微動だにせず収まるような下半身からの連動で最後指にかかるストレート。本人はこの日の投球を「調子は悪くなかった。けっこうファールで粘られたんで走ってないかな、とも思ったんですけど、空振りを取れる時は取れたので」と振り返る。
プレーボール直後に対戦した有田中央の1番・岩橋 諒(3年)は2ボール2ストライクの平行カウントからストレートで見逃し三振。インコースにズバット決まる1球に右打者の岩橋は手が出なかった。試合を通じて何球か理想とするストレートが決まったこともあったという。試合後のコメントや口ぶりから察するに監督とエースの受け止め方には少し開きがある。おそらく点数をつけるとすれば物足りなさを感じているはずの岡田監督は60点、最低限は出来たというニュアンスを含ませた寺島は70~75点になるのではないか。

 大阪桐蔭と並ぶ2強と言われている履正社だが甲子園出場は2014年の選抜が最後、その年の4月に入学した現3年生達はまだ聖地の土を踏めていない。夏の大阪大会で岡田監督も寺島本人も100点満点をつけられるピッチングが出来た時、2010年以来となる灼熱の甲子園に手が届く。大型左腕がラストサマーに挑む。

(文=小中翔太

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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