試合レポート

慶應志木vs叡明

2015.07.18

9回二死から追いついた叡明、粘りを見せたが、延長13回に慶應志木が振り切る

 この春に、小松原から校名変更した叡明は、校舎も越谷レイクタウンへ移転して、かつては男子校だったのが共学校となり、全く新しいイメージで生まれ変わって迎えた夏である。初戦は越ヶ谷にサヨナラ勝ちで、2回戦はコールドゲームで快勝しての3回戦である。これを迎え撃つのが、「KEIO」のブランドと伝統を担うDシードの慶應志木である。

 慶應志木の先発・慶應志木 石井雄也君は埼玉県の南部地区では評判の好投手である。まとまったフォームで、130キロ台後半のストレートを投げ込んでくる。また、スライダーの制球もよく、左右の低めを巧みについてきている。そう簡単には打たれないだろうという雰囲気だった。

 また、叡明の大住君も右スリークオーターというよりも、むしろサイドハンド気味の腕の出方で、コントロールもよく、丁寧な投球だ。こうして、好投手二人の投げ合いで、試合は投手戦となった。

先制したのは慶應志木だった。5回に、先頭の7番金澤君が中前打で出ると、続く工藤晃生君と合田君が立て続けにバントで送り、あえて二死三塁を作る。ここで1番栗原君が期待に応えて中前打して、三走の金澤了哉君を帰した。

お互いに、次の1点がどちらにどういう形で入るのかということが注目されたが、両投手の投げ合いは、そのまま、ともに崩れることなく9回まで進んでいった。そして、1対0で慶應志木リードのまま9回裏、いわゆるしびれる守りとなったが、その緊張の中で慶應志木内野陣も硬くなってしまった。何でもないゴロをファンブルしてしまい、無死二塁。バントで一死三塁。石井君は、気迫の投球で二死までとったが、あと一人のところでボテボテの三塁ゴロで、これが内野安打となり同点打となった。

さすがに、石井君も気落ちしたのか、その後に連打を浴びたが、センター合田君が好送球で本塁タッチアウト。試合はそのまま延長となった。


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第97回全国高等学校野球選手権大会

 延長に入って、若干球威は落ちたかに思われたものの、両投手の好投は続いた。
 11回、慶應志木は5番石井君が自ら左翼スタンドへ本塁打。しかし、粘る叡明はその裏、先頭の杉浦君が左前打し、処理をもたつく間に二塁へ進んで無死二塁。バントで三塁へ進むと、4番永関君の右飛で再び同点とした。これで、延長はさらに続くこととなった。

 もしかしたら、引き分け再試合もありかなという思いにもなってきた13回、ついに慶應志木が決着をつけた。この回、一死後、4番工藤恭平君が四球で出ると、石井君が中前打してつなぎ、続く安部君も粘って四球を選んで満塁。さすがに、ここまで好投してきた大住君もやや動揺したのか、少し球も甘くなった。代打金子泰斗君が一二塁間を破って、再び突き放した。さらに、二死満塁から、9番合田君が右中間を破る二塁打で二者が帰った。栗原君も中前打して、なおも2点が入ってダメ押しとなった。

 その裏、気持ちの充実した石井君は、最後の力を振り絞って力投。粘る叡明打線を3人で抑えて、ついに熱戦にピリオドを打った。
 最後は敗れたものの、叡明は常に元気良くプレー。三塁手の川内君に代表されるように、野手の送球も鋭かった。好チームという印象を残してくれた。
 この日は、時折雨も落ちてくるという不安定な天候だったけれども、スタンドには多くの人たちが詰めかけていた。中学生も多くいたけれども、こうした緊張感のあるいい試合をすることで、高校野球への思いを育てていってくれればいいと思わせてくれる、その一助にもなるナイスゲームだった。

 敗れた叡明の戦いぶりにも拍手を送りたい。

 

(文=手束仁)


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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