試合レポート

春日部共栄vs熊谷商

2012.07.27

満塁本塁打もフイに。熊谷商力尽きる

 誰もが目を疑った。

「私も32回目の夏だが記憶にない」
と思わず経験豊富な春日部共栄・本多監督もびっくりの展開になった。いきなり熊谷商が満塁本塁打で4点を先制したからだ。

本庄第一市立川越春日部東と強豪を撃破し今大会のダークホースである古豪熊谷商業対優勝候補春日部共栄との一戦、熊商がエース川崎勇太(3年)、春日部共栄は左腕の西澤大(2年)が先発したこの試合は序盤から試合が動く。

初回いきなり熊商にビックチャンスが生まれる。先頭の吉田勉(3年)がショートゴロエラーで出塁すると、続く飯塚達也(3年)はサード前へ送りバントをする。だがこの打球を今度はサード小林永樹が悪送球し打者走者の飯塚の頭に直撃する。3番松本拓巳(3年)はきっちりと送ると、続く太田丈二(3年)は四球を選び一死満塁で今大会絶好調の5番小野政輝(3年)を迎える。

「今大会は絶対に勝てるという雰囲気があった。今日もあったんですが」
と言う小野は期待に応え低めのスライダーを無心で振り切ると打球はレフトスタンドへ飛び込む。熊商はこのワンチャンスを物にし、今大会の勢いそのままにいきなり4点のリードをする。


 だが、春日部共栄もただでは終わらない。元々浦実戦後も熊商を警戒していた。

「4点返そうと思うな。1点1点だぞ。(バッテリーには)丁寧に行きなさいと」
と本多監督の指示を受け、その裏一死から先ほどエラーをした藤谷貴弘(3年)、小林(永)の連続長短打で1点を返すとさらに一死三塁から主砲鎌田雅大(3年)の犠飛で4対2とし2点差で1回裏の反撃を終える。

その後は両投手が立ち直り試合は膠着する。特に川崎はボールをひたすら低めに集め両コーナーへの投球が光った。

だが、6回裏、共栄は一死から村山雄磨(3年)がセンター前へポトリと落ちるヒットを打つと村山は空いている2塁を一瞬の判断で奪い二塁打とする。二死後9番萩原貴広(3年)がライト前へポトリと落ちるタイムリーを放ち1点差とする。

ジワジワと迫ってきた春日部共栄打線は7回裏もこの回先頭の藤谷が四球を選ぶと小林(永)が送り、4番鎌田を迎える。鎌田は期待に応えレフト前タイムリーを放ちついに4対4の同点とする。押せ押せとなった春日部共栄打線はすぐさま鎌田が盗塁を決めると5番・板倉直樹(3年)もヒットでつなぐなど一死満塁と川崎を攻め立てるが、7番村山の打球はファーストライナーとなりさらに1塁走者田村将太郎(3年)が飛び出していたこともあり併殺となる。

一方の熊商打線は2回以降立ち直った西澤の前に抑え込まれ迎えた最終回試合はクライマックスを迎える。


 9回裏この回先頭の小林(永)がストレートの四球で出塁すると春日部共栄ベンチは鎌田に送りバントの指示を出す。だが、鎌田はバントを2度失敗し追い込まれる。ここでベンチはランエンドヒットに切り替えると鎌田は期待に応えレフト線へ二塁打を放つ。続く板倉は歩かされ無死満塁で6番田村を迎える。だが、田村はショートゴロ併殺に倒れ一瞬で二死となる。チャンスは潰えたかと思われたが二死二,三塁で村山が右中間へサヨナラタイムリーを放ち春日部共栄が熊商を振り切りベスト4へ駒を進めた。

「最後はイケイケになってしまった」
と川崎は試合後悔やんだが、この場面一塁ベースが空いていただけに2人で勝負するバッテリーの冷静さが欲しかった。すでに3回の伝令を使い切っていたことも大きかった。

熊商は春日部共栄相手にあと1点を奪えればと追い詰める所まで見事な試合運びをみせたが最後は川崎が力尽きた。
「春の大会後に主将を外されて今までやってきたことを今大会出してやるって頑張ってきたんですが。5回あたりから疲労が出てしまった」
と川崎は試合後自分を責めたが、これまでの躍進を牽引したのは彼だ。それは賞賛に値する。

「川崎のような投手が2,3人いれば…。ここが県立高校の限界なのかもしれない」
と江原監督の言葉は重かったが、また一から甲子園を目指してもらいたい。

 一方の春日部共栄は苦しかったが4点のビハインドを跳ね返すあたりはさすがだ。しかも
「さすがに浦実戦後にヤバいと思ってバッティングセンターに行ってフォームを変えて打ち込んできた。今までトップが入りすぎていたんでバットを寝かせることで今までのトップの位置に修正できた」
と言うこれまで当たりが止まっていた板倉が2本打ったことは大きい。元々上位を打っていた村山も7番でクラッチヒッターとしてこの日4安打と役割を十分に果たしている。次は同じく逆転サヨナラで勢いに乗っている聖望学園が相手だ。おそらく好投手川畑が相手であろう。共栄は桶川戦といいこの日の川崎といい同じような投手と対戦してきただけに十分対応できるであろう。板倉、村山などの左打者が鍵を握る。好ゲームを期待したい。
 

(文=編集部)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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