修徳vs都立城東
野村(修徳)
最後の代表決定戦は最も熱いゲームに!修徳が都大会出場を決める
2試合目は面白い顔ぶれとなった修徳対都立城東。都立の雄・都立城東が本大会をかけて修徳に挑む。
コアな東京都の高校野球ファンにとってはこれほどワクワクさせるカードはないだろう。これが最後の都大会代表を決める試合となった。
試合は接戦が展開される。1回裏、都立城東は一死から2,3塁のチャンスを作るものの、得点することができずに凡退。修徳は二度も得点圏にランナーを送りながらも凡退。都立城東も2回以外は毎回出塁しながらもチャンスで凡退。拙攻と見られるが、両エースの好投が好試合を展開していた。
修徳のエース・野村は右スリークォーターから投げ込む本格派。常時120キロ後半~130キロ中盤(マックス136キロ)のストレートに、キレのあるスライダー、カーブ、縦のスライダーのコンビネーションで投球を組み立てていく投手。ややインステップ気味のステップなためシュート回転してインコースに抜けることも多いが、変化球のキレが優れ、ピンチの粘りが長けた投手だ。
都立城東のエース・広沢は172センチ66キロと投手として小柄だが、全身がバネのように動く運動神経を持った本格派右腕。ワインドアップからゆったりと入り、足上げはトルネード気味。捻りを入れて、体を傾斜させてインステップで踏み込んで、上から振り下ろすフォーム。
まさに独特の投球フォームであり、捻りを入れて尚且つ膝の負担のかかるインステップ投法から低目に切れのあるストレートを投げ込む制球力の高さ。このフォームは股関節の柔軟性が優れなければできない動きであり、彼の柔らかさとバネの強さは突出したものがあるといえるだろう。何よりもカーブを武器に出来るのが大きな強みである。
広沢(都立城東)
試合は5回を終えて0対0。6回表を迎える。2番平野が死球で出塁。3番飯野は一塁ゴロ。投手・広沢がカバーに入ったらが、ボールをそらし、無死1,3塁のピンチを招く。初めて三塁に進み先制のチャンス。4番山下はショートへ深い当たり。これが内野安打となり修徳が先制する。しかし広沢は後続の打者を抑えこんでいき追加点を許さない。6回裏、城東は二死から高溝が高めに入った直球を捉えライト超えの同点ホームラン。都立城東が一発で試合を振り出しに戻す。
だが7回表。修徳は一死二塁から1番岩谷が甘く入ったカーブを思い切り引っ張り左中間を破る二塁打で勝ち越し。さらに8回の表にも一死二塁から行方が高めに入る直球を逃さずに左中間を破る二塁打で3対1と突き放した。修徳の阿保監督は後半勝負と見込んでいた。
「先発の広沢君は全身を使ってフルに活かす力投派。体力があるうちは力のあるストレートをコントロール欲投げることが出来ているものの、疲れればボールが浮くと思っていました」
阿保監督の見立て通り、広沢は6回頃からストレートが高めに浮いて、精度が甘くなっていた。
選手たちが見逃さず3点を取った。だが広沢は点を取られてからの粘りが素晴らしく、甘く入っていたストレートもここ一番でコーナーへぎりぎり。そしてカーブの切れ味も更に鋭さが増して簡単には打てない変化球となっていた。
打線は8回の裏、二死から8番田村の右前安打、9番広沢は空振り三振に終わったが、捕手が後逸。振り逃げで1,2塁のチャンスを作り、1番飯塚が痛烈な中前安打を放ち、二死満塁のチャンスを作る。2番楢崎が二塁内野安打で1点差に迫ると、ここまで4打数4安打の谷川に回る。谷川は力んでしまい内野フライに倒れ同点のチャンスを逃す。この回がポイントだった。9回の表を0点に抑え、サヨナラを狙った9回の裏も三者凡退に倒れゲームセット。修徳が接戦を制し、都大会出場を決めた。
盛り上がる修徳ベンチ
修徳にとっては苦しい試合であったが、勝てたことがベスト。何度もピンチを招きながらも要所で凌いだ野村の力投が光った。阿保監督によると前半良くて終盤になって掴まる投球が多かったようだ。この試合では試合序盤から走者を背負う投球であったが、要所で切れのあるスライダーが光り三振を奪うことが出来ていた。
今年の修徳は雰囲気がかなり良い。全員が得点するたびに大きく喜びを表し、ピンチになって抑えるとベンチ入り選手が大きく出迎える。ああいう後押しが野村たちを救ったのかもしれない。都立城東もベンチから控え選手が出場している選手を大きく出迎えて盛り上げている様子が見られ、両校の選手たちにとって後押しとなる存在がいるのは嬉しいことである。若干だけ修徳の粘りが上回った。
修徳・阿保監督は都大会までの課題として
・基本的なプレーを確実にこなすこと
・打撃面で変化球の対応力を磨いていくこと
の2点を挙げた。本大会開幕までの2週間で劇的に伸びることはない。背伸びをせずに基本に立ち返って最低限のプレーを確実にこなすことが大事であろう。基本的なプレーを確実にこなす意識の中で積み重ねていけば、ブレが少なく安定したチームに成長を果たしていくであろう。
また敗れた都立城東も力量のあるチームであった。各選手の体つきに貧弱さを感じない。しっかりと鍛え上げられており、打者のスイング、打球の速さが段違い。守備も鍛えられており、ショートとサードは深い守備位置から守っても、捕球してから送球までのスピードは速く、地肩の強さも中々であった。エース広沢も安定感と粘りがある好投手で、一冬超えてからの成長が楽しみなチームと映った。
(文=編集部:河嶋宗一)