試合レポート

前原vs興南

2011.03.29

前原vs興南 | 高校野球ドットコム

屋宜投手(前原)

絶対王者の綻び

興南は2008年の秋以来県大会では負けたことがなく、県で無敵ともいえる存在です。厳密に言うと昨春のチャレンジマッチや新人大会で小禄中部商に敗れているものの、春・夏・秋の各大会を制するなどまさに絶対王者と呼ばれるチームです。
昨秋は戦力が落ち、新チーム発足間もないことから厳しい戦いになるだろうと思われていましたが、磐石の勝ち上がりで県を制しました。今大会も興南を優勝候補の筆頭に挙げられており、打倒・興南となるのがどこのチームになるのか注目されていました。

第一シードのため2回戦からの登場でしたが、初戦の美里工を9-1の7回コールドと万全な勝利で勝ち上がり3回戦へと駒を進めました。その3回戦の相手は前原。秋もベスト8に入るなど力のあるチームで、エースの屋宜と中心に守備が堅く野手陣にも選手を揃える強豪です。
注目の一戦は平日ながら多くの観客が集りました。

前原の先攻で始まった試合。興南の先発は背番号11を背負った幸良諒。右腕ですが、島袋 洋奨投手を意識したようなトルネード投法が特徴の投手です。
初回の立ち上がりは2死から四球を出し、盗塁で得点圏に背負うも4番・平敷佑人を空振り三振に仕留め得点を許しません。

前原の先発はエースの屋宜。こちらは興南打線にいい当たりをされるものの味方の好守もあり3人で終わらせる上々の立ち上がりでした。

試合が動いたのは3回。8番・與那嶺真吾がセンター前ヒットで出ると、更に興南の守備が乱れ無死1・2塁のチャンスを作ります。送りバントで走者を進めたあと内野ゴロで2死としますが、3番・西野僚真がレフトへの技ありの流し打ちを見せ前原が先制点を挙げます。

直後、興南は振り逃げや内野安打、四球で2死ながら満塁のチャンスを掴むと打席には4番・外間正伍。追い込まれるも粘ってフルカウントとしますが、屋宜が外低めにずばっと決まる渾身の直球を投じ見逃し三振を奪い同点を許しません。
4・5回と興南は走者を2塁まで進めますが、屋宜は得点を許しません。


前原vs興南 | 高校野球ドットコム

平敷(前原)の右前安打

6回から興南は先発の幸良からエースの川満昂也へとスイッチ。しかし、川満が思わぬ誤算でした。先頭の2番・宮城雄飛をセンター前ヒットで出塁を許すと、送りバントの判断を誤りフィルダースチョイスで3回と同じように無死1・2塁のピンチとなります。前原は走者を進めると、前の2打席とも三振に打ち取られていた6番・砂川景史郎がレフト前へのヒットを打ち追加点を挙げます。

7回には先頭の7番・仲村尚太が三塁打を放ちチャンスを作ると、8番・前田響也の打球は弱い当たりながらちょうど三遊間の真ん中へ、これがサード渡具知祐樹のグラブを弾き前原にとっては大きな3点目を挙げます。更に1番・吉野がラッキーな2ベースを放ったところで、興南は川満から左腕の高良尚武へとスイッチ。

前原はエースを引き摺り下ろした形となったことで、一気に勢いに乗り更にヒットが続きこの回一挙に4点を挙げ試合を決定付けます。

8回にはこの回登板した高良一樹から2点を奪いコールド成立となる7点差を以上をつけます。

屋宜は8回に1点こそ失うものの、最後の打者となった渡具知をセンターフライに打ち取り試合終了。
見事な完投勝利を挙げました。

屋宜投手は初回以降は毎回走者を出す苦しい投球でしたが、興南打線にあと一本を許しませんでした。特に興南の中軸である大城と外間を完全に抑えるなど注意するべき打者に対しては完璧な投球でした。これが非常に大きかったです。

興南はなかなか点が奪えない展開に焦ったのかバント処理での2つのミスから点を奪われ苦しい展開となってしまいました。更に投手交代や選手交代が裏目に出てしまい、試合をコントロールすることが出来ませんでした。
負けるべくして負けた印象が強いです。

前原は耐えて耐えて相手のミスに突け込んで点を奪うという、本来の興南がやっていた野球をしていたように思います。7回の連打は見事でした。
もともと地力のある選手が集っているだけにこの勝利をきっかけにして自信を深め、一気に上位まで勝ち進んで欲しいです。

興南にとっては屈辱の敗戦となってしまいましたが、この敗戦をバネにして夏に臨んで欲しいです。どこまでチームを建て直せるかを注目したいと思います。

(文=PN 山原

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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