福岡ソフトバンクホークス・工藤 公康監督 現役時代の言葉から考察する采配の真意(前編)
「身体の状態を見る」が生む大胆な采配
工藤公康氏
福岡ソフトバンクホークスの勢いが止まらない。パ・リーグは昨年に続く2位に終わったものの、クライマックスシリーズで東北楽天ゴールデンイーグルスとのファーストステージ2戦目から、3連覇を果たした埼玉西武ライオンズとの同シリーズセカンドステージ、そして3年連続の頂点を狙い、読売ジャイアンツと相まみえるSMBC日本シリーズ第1戦に至るまで7連勝を遂げた。
中でも今季5年目を迎える工藤 公康監督の采配は鬼気迫るものを感じる方も多いはずだ。チームの中心選手である松田 宣浩、内川 聖一をスタメンから外す荒療治もいとわない半面、日本シリーズ第1戦では1名を除き全野手を起用。大胆不敵な采配は敵将・選手たちを常に惑わせてきた。
ただ、そういった采配の裏には直感ではない部分があることは間違いない。実は工藤監督は2009年・横浜ベイスターズでの現役当時「高校野球ドットコム」のインタビューで自らの思考について言及。その中で幼少期からの体験としてこんなことを話している。
「僕は小学生の時は人に教わることが嫌いでした」
「自分で何とかしてやろうという気持ちでした」
「早くから自分で考えることが身についていたと思います」
「僕はほぼ野球を教えてもらった経験がありません」
言い換えれば工藤監督の理論は定説を受け入れたものではなく、自らの経験則をその時々に合わせて当てはめたもの。もちろんその裏付けとして「本来、野球をしたら人間の体は壊れるようになっている。人間の体は肩から上で物を投げるようになっていない」人間本来の動き方など、単に野球だけでない多彩な基礎知識が土台となってのことだ。
「身体の状態を常に考えている」。その視点からもう一度、采配を見ていくと……。「これまでの実績があるから」「データ的に打っているから、抑えているから」といった一般的な固定概念にとらわれない采配がおぼろげながら浮かんでくる。
そしてもう1つ、工藤監督は2009年同時、現在の采配にもつながる興味深いキーワードを発している。それは何か?後編では日本シリーズ第2戦までも振り返りつつ、さらなる采配の真意を探っていきたい。
過去のインタビュー記事はこちらから!
横浜ベイスターズ 工藤 公康選手(前編)
横浜ベイスターズ 工藤 公康選手(後編)
文=寺下 友徳