試合レポート

【春季埼玉県大会】熊谷商が逆転サヨナラでシード校・聖望学園を破り初戦突破!

2024.04.28


勝利の報告に向かう熊谷商ナイン

【トーナメント表】春季埼玉県大会 結果一覧

<春季埼玉県高校野球大会:熊谷商4-3聖望学園>◇27日◇2回戦◇熊谷公園

試合直後、最速143キロ右腕、熊谷商中村 謙吾投手(3年)の目には光るものがあった。なぜ涙を流したのか。どういう涙だったのか。

ゴールデンウイーク初日ということもあり、多くの観客が訪れた熊谷公園球場(ハレスタ熊谷)でのCシード・聖望学園熊谷商の一戦。試合は「THIS IS 高校野球」。これぞという劇的な幕切れ、壮絶な結末を迎えることとなる。

先発は聖望学園が左腕・向深澤 要投手(3年)、一方の熊谷商は中村謙と両エースが登板し試合が始まる。

先制したのは熊谷商だった。

初回、聖望学園・向深澤の立ち上がりを攻め、1死から2番・菅井 瑛太(2年)が一塁への内野安打と悪送球で二塁へと進む。2死後、4番・竹内 一真(2年)が中越えの適時三塁打を放ち1点を先制する。

だが、聖望学園・向深澤は初回のアウトは全て三振で、決して悪い出来ではない。2回以降も走者を許しても悉く一塁牽制で走者を刺し熊谷商のチャンスの芽を事前に摘み取る。

毎回得点圏へ走者を進めながらあと一本が出ない展開が続いていた聖望学園は4回、この回先頭の向深澤が右中間へ二塁打を放ち、またもチャンスを作ると、続く清水 達彦内野手(3年)が中前適時打を放ち1対1の同点とする。

するとその後は徐々に聖望学園ペースとなる。

4回以降、毎回先頭打者を出した聖望学園は、5回以降はバントで送らずに強打を選択する。だが、ここは熊谷商・中村謙がうまく右打者にはスライダー、左打者にはチェンジアップを交え、後続を抑えピンチを凌ぐ展開が続く。一方の熊谷商打線も、序盤から聖望学園・向深澤の大きな変化球になかなか対応できず連打が出ない。

熊谷商・中村謙、聖望学園・向深澤両投手の好投もあり試合はタイブレークに進むかと思われた。だが、最終回に激しく試合が動く。

9回、聖望学園はこの回先頭の小槻 修也捕手(3年)がワンバウンドの球に対し三振に倒れるも、捕手が一塁へ悪送球を放ってしまう。1死後、1番・中條 和也内野手(3年)が左前安打を放つと2死後、打席にはチーム唯一、木製バットを扱う3番・齋藤 千風内野手(3年)が向かう。齋藤は期待に応え右越えの2点適時二塁打を放つ。

これで勝負あったかと思われた。だが、まだ9回裏に試合のハイライトが残っていた。

熊谷商はこの回先頭の中村 匠内野手(3年)が中前安打を放ち出塁すると、続く竹内も左前安打を放ち無死一、二塁とする。1死後6番・岡安 絢心捕手(3年)も四球を選び1死満塁とチャンスを広げると、続く大久保 柊摩(3年)が左越えの大飛球を放つ。走者一掃となるタイムリー三塁打を放ち、熊谷商が逆転サヨナラの4対3でシード校・聖望学園を破ってみせた。

まるで夏の大会のような熱い展開。試合終了の整列時、人目を憚らず涙した中村謙にその涙の理由を尋ねた。
「9回表に自分が打たれて逆転されて、”逆転の熊商”としてチームスローガン通りに大久保柊が打ってくれて、チームとしても個人的にも嬉しくて。球自体は走っていたんですが、9回打たれてしまったので70点。最低でもベスト8、狙うは関東。そのために直球のコントロールミスをなくすこと」。エースで主将で主軸を打つ中村謙。昨秋は地区予選で敗れ、今大会期するものがあったはず。サヨナラ打を放った大久保柊も「満塁だったので中途半端にならずに思い切り振ろうと。繋いで繋いで自分のところに回ってきたので返したいなと。打ったのは直球。ドンピシャです。謙吾が頑張って投げていたので何とか助けてあげたくて」と、それに呼応する。

最後に新井監督が「元々今日は3、4点ぐらいロースコアの試合にしないとと言っていた。序盤、変化球や牽制に苦しめられたが終盤やっと捉えてくれた。これまで中村謙におんぶに抱っこだったので大きな勝利」と総括した。「逆転の熊商」のスローガン通り、エース中村謙とともに今大会旋風を巻き起こすことができるか。

一方の聖望学園・浮中監督は「好投手ということで、練習からまず直球に的を絞ってカウント球を捉える狙いでいったんですが、悉く外されてしまって。11安打は出ているんですが、特に得点圏で打たされたというのが率直な印象。最終回は四球で満塁にしたのが痛かった。外野は同点覚悟で深めにしたが、その上を越されて、やるべきことはやった中での負けだけに悔しい。だが向深澤は攻守に頑張ってくれた。彼は責められない。打線は花咲徳栄に敗れた次の日から、全員木製バットに切り替えここまでやってきた。夏に向け更なる全体のレベルアップを選手に求めたい」と振り返った。

これで夏はノーシード。春は公立高校相手に3年連続県初戦敗退となる。いずれもシード校として春を迎えながらのこの結果。つまり秋は3年連続ベスト8以上に進出しながら、どうも春季大会は相性が悪い。とはいえあくまで春だ。これで強烈な「ノーシード爆弾」が誕生することになる。向深澤、中村アラシュ、小泉、齋藤など一昨年秋から公式戦に出場してきた選手が揃うも、甲子園へのチャンスは夏の1回のみとなる。このままでは終われないはずだ。

【トーナメント表】春季埼玉県大会 結果一覧

この記事の執筆者: 南 英博

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