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勝利への最短ルートは割り切ること!自分たちのできる野球をする 開成(東京)野球部訪問【後編】

2019.03.17

 前編では開成がバッティングに特化する理由や、選手たちに監督が伝える技術論に迫った。後編では試合への考え方や春への意気込みを伺った。

 ミスして当たり前だからこそバッティング!独特のスイング軌道で革命を起こす! 開成(東京)野球部訪問【前編】

100%を追い求めすぎてはいけない

勝利への最短ルートは割り切ること!自分たちのできる野球をする 開成(東京)野球部訪問【後編】 | 高校野球ドットコム
スローイングの態勢に入る選手

 青木秀憲監督の話を伺っていると、野球の常識から離れた大胆な発想だと感じる。では、どうしてここまで大胆なことができるのか。

 「下手な人間、不利な人間があれもこれもとやろうとすると絶対ダメなんです。博打を打たないといけないんです。
 例えばピッチャーは試合が始まると打たれたくないとか、このバッターを抑えたいとか。また、点を取られたくないとか、欲求に負けて無駄な力を出したりとか今の実力では出来もしないコントロールをつけようとしてしまいます。
 それが結果的にできればいいのですが、大半の選手は上手くはいかないので、そうするとやっぱりそういった出来もしないことを無理してやってしまうと、かえって不利な状況に追い込まれてしまうんです。その結果、5点も10点も取られる結果になってしまうんです。」

 真面目な選手であればあるほど100%を求めてしまうので、割り切らないと持っている力も発揮できない。自分のできる範囲をやっておけばなんとかなる場合が多いと青木監督は考えている。
 青木監督は、思い切って割り切ったプレーをしないと勝ちに繋がらないということを選手に伝えることで、自分が培った技術を試合で発揮できるようにしているのだ。

 一か八かのプレーをすることに、「やっぱりなかなか勇気が必要ですが、案外どうにでもなれというような感じでボールに向かって早く近づくと、練習試合でも結果が出たことがあった。」と丸澤勇介選手が振り返ると、
 「最初聞いたときはびっくりして出来るか不安でしたが、練習がウチは少ないので、大胆なことをしないと普通のチームと同じような事をやっていてもインパクトもないですし結果も残せない。
 少しでも違うことをやらないといけないというので勇気がいりますが、そうした方が勝てる可能性が高いので博打を打つほうがいいかなと思って割り切っています」と佐藤和真主将は話す。

[page_break:やってきたことをやれば結果はついてくる]

やってきたことをやれば結果はついてくる

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話を聞く選手たち

 開成は昨秋、第6ブロック1回戦で攻玉社に敗れてしまい、春は再びブロック予選からスタートする。
 「試合経験がなく、試合の時に自分たちの実力以上のことを求めて頑張りすぎてしまって、本来の力が発揮できなかった。
 つまり投げるにしても打つにしても、ちょっと気負いすぎてしまって本来の動作がちゃんとできていなかった。」と青木監督は振り返る。

 しかし一方で、「新チームは主力だった3年生が抜けて不安でしたが、夏休み中は練習も試合も頻度が増えるので集中的に彼らを技術的に鍛えるチャンスではあったので、思った以上に上達した選手が多かったです。なので大会でも思った以上に戦えました。
 そんな状態で秋を終えたので、春、そして夏は当然勝つつもりです。」と手ごたえを十分感じていた。

 高校通算3本塁打、ミズノ社の「スイングトレーサー」で計測したスイングスピードは時速144キロ。またインパクト時の手首の回転が1秒間で1.72回転を計測し、青木監督も注目する田丸慶次選手は、
 「不安がないと言ったら嘘になりますが、それでも調子は上がってきているので多分大丈夫だろうと思っています。
 春は本大会に行って、甲子園常連校とかそういうチームに勝てるようにしていきたいと思います」と意気込みを話してくれた。

 佐藤主将も、「順位というよりは自分たちの野球をやって勝ち進むことが目標です」と語った。

 この想いは青木監督も同じだ。
 「どこまで勝ち上がりたいという目標は特にないですが、このチームに関して言えば鍛えたことがある程度発揮できればそれだけで満足です。それができると春であれば本大会出場ぐらいまでは自然にできるんではなかろうかと。
 彼らはそれなりに技術を高めようとして練習をしてきたので、その技術が試合の中で発揮できるかということをまず目標にしたいと。それができれば自ずと結果はついてくる。」と語った。

 大胆な発想を持って自分たちの野球ができれば、開成は再び東東京で躍動できるに違いない。

(文・編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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