<2025年全国高校野球選手権愛知大会:豊丘13-3大府東>◇28日◇1回戦◇豊橋市民球場

 今年も、夏の選手権の季節がやってきた。参加校数の多い愛知大会は他地区に先駆けるような形で、6月最終週の週末から始まった。

 豊丘は昨秋の一次ブロック予選リーグでは0勝4敗と今季は未勝利から始まったチームだった。それが、春季大会では一次リーグで桜丘を下すなどして3勝1敗でブロック1位として決勝リーグに挑めるくらいに成長していた。その初戦では豊川に力負けはしてしまったものの、県大会は東三河地区の4強として挑んだ。そして、初戦で敗れはしたものの、この大会で準優勝することになる東邦と7対8の大接戦を演じたことで注目される存在となった。

 山本剛之監督は 「正直、自信にはなりました。選手たちもそう感じていたでしょう。ただ、秋は未勝利でしたけれども、力がなくての未勝利ではないと思っていました。まだ、選手たちが慣れていない、経験がないから流れを作れていないだけなのだと思っていた」ということもあって、秋季大会以降は「いかにして自分たちへ流れをもたらしていくのか」ということを中心に練習を重ねていったという。その成果として、春の好成績につながっていったのだ。

 この日の試合では、序盤はいくらか暴走気味のプレーなどもあったが、「夏の初戦でもあるし、ちょっと焦りもあったのかもしれませんね」と、山本監督は見ていた。それでも、まさに、中盤からは流れを作り切れて、この日は下位打線がよく打って得点していった。

 山本 誠剛投手(2年)は、必ずしも調子はよくはなかったというところだったが、「とにかくストライクを先行させるということを意識して投げた」ということで、徐々に調子を上げていって、8回を3失点で抑えた。

 そして、中盤で流れを作れたチームは9回には大量5点のビッグイニングを作った。

 大府東は、この春は知多地区予選では阿久比日本福祉大付に敗れて県大会進出を果たせなかった。知多地区の大府東としては、いわばアウェイともいえる豊橋市民球場へ乗り込んでの初戦である。豊丘にどのような戦いを挑むのだろうかというところだ。

 大府東は、現在マネージャーも含めて31人の部員がいる。チームとしては十分に機能する人数だ。しかし、つい2~3年前までは4チームでの連合チームで大会参加をしていた状況もあった。さらには、コロナ禍もあって、最悪の状態でもあった。そんな時代も含めて今年で10年目となる藤村 亮二監督は、折れずにチームを指導し続けてきた。「中学の時に野球はやっていたのですが、レギュラーではなかったとか、未経験の子もいるチームです。だけど、そういう子たちも一生懸命努力してきました。こうして、2年3年と連続して単独で大会に出場できたということも大きいです」と、素直に今の状況を喜んでいる。

 この試合でも打順にして1番から3番までが1年生だったり、2年生や3年生には投手経験のある選手が誰もいなかったりするチームだった。それでも、「野手でやれそうな選手を投手として練習させていくことで、何とか形になってきた」という中での戦いだったが、序盤はリードを奪うなどの大健闘だった。

 試合としては、中盤から終盤には、さすがに力尽きたという形で、最後は9回に5失点とビッグイニングも与えてしまっていたが、藤村監督は、「今日、こうした戦いができたことで秋からの新チームにも手応えは感じている」という。打っても3番の松岡 快音捕手(1年)は、3回にはリードを奪うタイムリーも放った。こうした一つひとつが、次へとつながっていくのだということも、大府東としては、しっかりと感じ取ったのではないだろうか。