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【現役ドラフト】DeNA移籍佐々木 千隼は“復活”できるのか? プロ入り直後に語っていた「意識改革」

2023.12.10


8日、第2回の現役ドラフトが行われた。その中でロッテからDeNAに移籍となった佐々木 千隼投手(都立日野-桜美林大)。
ドラフトでは外れ1位で5球団が競合の末、ロッテへ。大きな期待を受けていたが、活躍したのは2021年の1年のみ。54試合に登板、8勝1敗26ホールド1セーブ、防御率1.26の好成績を残したが、その後はケガもあって登板機会を減らしていた。今季は2試合の登板に終わっている。

佐々木は新天地でドラフト目玉候補と呼ばれた輝きを取り戻せるのか。ドラフト指名直後のインタビューにはそのヒントが詰まっている。
(インタビュー初掲2016年10月27日)

************
――都立日野高校では3年夏の準々決勝で強豪・日大三を3失点に抑える好投を見せるも惜敗。2年冬には東京選抜の一員に野手として選ばれてアメリカ遠征を経験するなど、当時から注目される存在ではありましたが、すでにプロを意識していたのでしょうか。
佐々木:いえ、いえ、全然です。高校のときは甲子園に行きたい、強豪校に勝ちたいと思ってやっていましたけど、プロなんて少しも考えていませんでした。都立日野高校は練習場所は校庭で、ほかの部と共用ですし、時間も学校がある日は4時前くらいから始まって、全体練習は7時過ぎくらいまで。そこから自主練習をしたりしますけど、遅くても9時くらい。
嶋田 雅之監督は他の高校がやっていることだったり、いろいろな練習を取り入れてくれていましたけど、そこまで自分を追い込んでやっていたという記憶もありません。大学でも野球が続けられたらいいなって。本当にそれくらいでした。
――それでも投打のポテンシャルの高さは多くの人が評価していました。
佐々木:バッティング(高校通算33本)は好きでしたけど、12年秋に参加した東京都選抜は、秋の大会の試合で打ったホームランをたまたま見てもらっただけだと思います。いざ、ほかの選ばれた選手と一緒にやってみたらすごいやつばかりでしたからね。自分はまだまだなって痛感しました。特に今、広島で活躍している鈴木誠也(二松学舎大付)は投げるのも打つのも別格で、こういうやつがプロに行くんだろうなと思いました。
でも、そういう選手を見て意識が変わった部分はありました。こんな上のレベルの選手がいるんだなって。自分も都立日野では先頭に立ってやるくらいじゃないといけないのかなと。ランニングもあまり速くないんですけど、一生懸命走って1番で帰ってこようとか、少し変われたかもしれません。
――そこを境にピッチャーとしても力をつけていくわけですか。
佐々木:というより、そもそもピッチャーを本格的にやり出したのは3年の春頃からなんです。それまでも練習試合とかでは投げていましたけど、結果を残せていませんでしたし、そこまでピッチャーにこだわりがあったわけでもありませんでしたからね。でも、本格的にピッチャーになったといっても知識も乏しかったですし、何か特別な練習をしたとか、トレーニングをしたというのはありません。
自主練のときにダッシュ系のランニングを繰り返したり、ただがむしゃらに頑張っているだけでした。あとは体重が増えづらかったので練習前や終わった後などに母親が作ってくれたお弁当を食べたりはしていましたけど、それも食トレというほどのものではなくて、食べれば体が大きくなるかなくらいの意識でした。都立日野は上下関係もそんなに厳しくないですし、高校時代は楽しくやっていたという感じでしたね。
ここまでの話を聞くと、全国ならば、どこにでもいるような高校球児で、ここからプロ入りする選手になっていくだろうというイメージはまだ沸いてこない。佐々木が野球選手として、投手としての意識が劇的に変わるのは桜美林大に進学してからになる。

一部に昇格して、まったく通用しなかったことが転機となった
――3年の夏は140㎞/hに迫る速球を投げ、3回戦で名門・早稲田実業、4回戦で第1シードの日大鶴ヶ丘を下すなど脚光を浴びましたが、進学先は当時は首都大学連盟の2部だった桜美林大学。どういった経緯で決めたんですか。
佐々木:1番熱心に誘っていただいて必要としてくれることが嬉しかったのと、練習に参加したときの雰囲気や自主性を大事にしているところが、ちょっと都立日野に似ていると感じて決めました。でも、1年のときは何も考えずに野球をやっていて無駄に過ごしてしまったかなと思いますね。
――その頃はまだピッチャーだけではなく、外野をやったりもしていたんですよね。
佐々木:そうですね。ピッチャーに専念するのは1部に昇格した2年の春からだったんですが、1部の大学には1年間まったく通用しませんでした。そこで、せっかく大学トップレベルの選手がいる1部でやらせてもらっているのにもったいないなと思ったんです。そこから野球への考え方、取り組み方を変えました。これまでの歩みの中で1番大きな転機だったと思います。
当時、特別コーチをしてくださっていた桑田真澄さんに配球のことを教えていただいたり、フォームの悩みの相談に乗ってもらうだけでなく、実際にマウンドから投げて見せてもらったりもしました。コントロールがすごくて本当に驚きましたし、刺激にもなりました。
冬場はウエイトトレーニングに費やす時間をかなり増やして、体を大きくすることに着手しました。パワー、スピードをつけてからでないと勝負できないと感じたんです。メニューとしてはベンチプレスやスクワットといった一般的なものに加えて、ピッチングの動きに合わせたダンベルを使ったトレーニングだったり、機能的なメニューを自分なりに考えて工夫して行ったりしました。体重は10キロほど増え、球速も冬前が142、143キロだったのですが、春に149キロくらい出るようになりました。でも、ただ速いだけで質がついてきていませんでした。

意識改革+元プロ2人の出会いが佐々木を大きく変えた
――そこはどのように改善していったのですか。
佐々木:15年2月から特別コーチに就任された野村 弘樹さんに体の使い方や体重移動、リリースポイントをどう前に持っていくか、踏み出した左足をいかに安定させるかなど、全般的に教えていただいて修正に取り組みました。自分の知らないことばかりで、今年の春のキャンプでもいろいろと課題と向き合いましたが、投げ方が変わった実感がすごくあります。
春のリーグ戦はいい状態で臨めて、真っ直ぐで簡単にファールを取れたり、空振りを奪えるようになることが増えました。高校のときはフォームを意識したことすらなかったですけど、今は何が悪いかというのがわかるようになりました。
――ストレートや変化球を投げる際に特に気をつけているのはどんなことでしょう。
佐々木:ストレートはリリースのときに指先に力が集約するようにということは強く意識しています。そのためには体重移動のタイミングもそうですし、左肩や左膝が開かないようにとか、いろいろ気をつけています。変化球は球種によっていろいろと違うのですが、どの位置、どの角度でリリースするのがいいかという話は野村さんにもよくしていただいて、自分がもっともいいなというポイントを見つけて、それを大事にしています。
でも、これは人それぞれ体も違いますし、理想は様々だと思うので、こうした方がいいというのは言いづらいですね。自分にとって1番いいリリースのしかたを見つける作業が大事だと思います。
――ドラフトイヤーとなった今年は巨人の菅野智之らが持つ年間7完封のリーグ記録にも並ぶなど、スカウトの評価も高まっています。この1年は順調と言っていいですか。
佐々木:順調かどうかはわからないですけど、課題もまた出てきましたし、フォームも完全に固まっているわけではないです。ただ、やることは多いのですが、逆に言えば球速ももっと上がると思いますし、まだまだ成長できると思っています。プロの舞台は仕事場になるわけですが、すごく成長できる場所だとも考えています。技術面も、体力面もまだまだなので、自分がどう成長できるか自分自身でも楽しみにしています。
――プロではどんなピッチャーになることを思い描いていますか。
佐々木:先発でもリリーフでも投げろと言われたところで投げたいと思っていますし、そのときはマウンドで1番大切にしているバッターに向かって行く気持ち、闘争心を持ってチームの勝利に貢献できるピッチャーになりたいです。
10月20日のドラフト会議で、5球団競合後、千葉ロッテ1位指名が決まった佐々木千隼。大学4年間で桑田真澄、野村弘樹というプロでも実績を残した名投手の出会いが佐々木の才能を引き出したが、ここまでの投手になったのは佐々木の姿勢の変化と努力があったからこそ。都立校の選手であっても、自分の課題、立ち位置が理解できた時、やることが明確になってくる。その時、誰もが驚く進化の始まりとなるだろう。今後も佐々木のような都立出身のプロ注目選手が現れることを心待ちにしたい。

(文=鷲崎 文彦)

この記事の執筆者: 鎌田 光津希

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