市立船橋vs興南
天国から女神が舞い降りた、市立船橋が5点差はね返してサヨナラ勝ち
市立船橋・片野 優羽捕手(3年)
トーナメント表
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<第104回全国高校野球選手権大会:市立船橋6-5興南(9回サヨナラ)>◇8日◇1回戦◇甲子園
「市船soul」とともに戦ったナインの祈りが天国に通じた。
千葉を制した市立船橋と、沖縄を制した興南。死力を尽くした両チームの戦いは、まさかの結末で、市立船橋が勝利した。5対5で迎えた9回1死満塁。代打・黒川 裕梧内野手(3年)が死球を受けてサヨナラ勝ち。25年ぶりの夏1勝は劇的勝利だった。
市立船橋が5点差を逆転してみせた。3回に5点を失ったが、逆に反撃へのスイッチが入った。4回に2点を返し5回にも1点を返した。2点ビハインドで迎えた8回、片野 優羽捕手(3年)が左翼席へ高々と舞い上がるソロアーチを放ってチームに勢いをつけると、途中からマウンドに上がっていた森本 哲星投手(3年)が左翼線への同点打を放って、最終回のドラマへとつなげた。
同点劇を生んだ8回、三塁側スタンドからは「市船soul」が流れていた。市立船橋の吹奏楽部元部員で20歳の若さで亡くなった浅野 大義さんが作った楽曲で、この曲を流すと得点が入ることも多く「神応援曲」と呼ばれている。「20歳のソウル」という映画にもなり、5月に全国で公開されていた。5点差を逆転し、押し出し死球でのサヨナラ勝ち。説明しようのない力が働いたような勝利だった。
歓喜に沸く市立船橋ナインとは対照的に、マウンドで泣き崩れていたのは興南・2番手の安座間 竜玖外野手(3年)だった。9回無死二塁で先発の生盛 亜勇太投手(3年)からマウンドを引き継いだ。それまで守っていた右翼から急遽リリーフした。四球の後、犠打と故意四球で満塁。代打・黒川を自慢のスライダーでカウント0-2と完全に追い込んだ。三振を狙った3球目に選んだ勝負のスライダーが、まさかのすっぽ抜けで死球。その瞬間、マウンドにしゃがみこんでしまった。安座間としては三振が欲しい場面。相手打者が完全にスライダーにタイミングが合ってなかったことで逆に力が入ってしまったのか。右翼に回っていた先発の生盛は全速力でマウンドで泣き崩れる安座間の元に駆け寄り、敗戦の責任を1人で背負うように涙したチームメートを慰めた。
市立船橋に微笑んだ勝利の女神は、一方で残酷なシーンも生んだ。甲子園で投げたわずか9球が、安座間の今後の糧となることを願う。
(記事=浦田 由紀夫)